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後日談4
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私は信じられなかった。
「誰かに相談することは出来なかったの?」
「ええ。私の周りには友人と呼べる子供はいなかったし、屋敷の使用人もおじい様を恐れていて何も言えないわ。息苦しい毎日の中で、時々ご両親に連れられてスタンリーとフレデリックが遊びに来てくれたの。その時間だけが私が私らしく過ごせる時間だった」
スタンリーとフレデリックのお父様とクリスティアナのお父様が従兄弟同士でとても仲が良かったそうだ。両親を亡くしたクリスティアナを心配して、スタンリーとフレデリックを遊び相手にと頻繁に連れて来ていたそうだ。
「親戚は皆私の婿にしたいと子息を連れてくる。その子供達も私の機嫌を取ろうと必死で悲しかった。でも、ケラー伯爵はそんな意図はなくスタンリーとフレデリックは私と対等に遊んでくれていた。ある日私の授業が終わる前に二人が部屋に来て私が家庭教師に叩かれている所を見てしまったの。私は答えを間違えた自分が悪いと思っていたから恥ずかしくて俯いていた。そしたらフレデリックが薬を侍女に頼んで腕の手当てをしてくれた」
「フレデリック様は子供の頃から優しかったのね」
「そうよ。今でも優しいのだけど気づいたら軟派な男になっていたわね。それでスタンリーはおじいさまの手を引っ張って部屋に連れて来て、おじい様に向かって怒鳴りつけたのよ。彼だっておじい様を怖く思っていたはずなのに顔を真っ赤にして「どうしてこんな酷いことを家庭教師に許しているのですか? ティアナが可哀そうだ」って」
クリスティアナはその時を思い出し顔を綻ばせた。
「スタンリー様が怒鳴る? いつも温厚な笑顔を浮かべていて幼い頃とは言え想像がつかないわ」
クリスティアナは何度も首を縦に振りうんうんと頷く。
「私もスタンリーが怒っている姿を見たのはあとにも先にもあの時だけよ。私のために怒ってくれた。あの日から彼は私の王子様で大好きな人になったの。おじい様は謝ってくださったわ。それと家庭教師の体罰は知らなかったらしくて、その教師にお怒りになってすぐに首にしたの。私はホッとして泣いてしまったら、おじい様は私を抱き締めて背を撫でてくれた。すまなかったって……。それでおじい様は不器用なだけで優しいって分かったの。私を愛してくれているって信じることが出来た。それに愛してなかったら私が望んだスタンリーとの婚約を許してはくれなかったと思う」
確かに親戚とはいえ家格から考えたら伯爵子息との婚約より、もっといい条件の婿がねはいただろう。クリスティアナの幸せを一番に考えて彼女の希望を叶えてくれたに違いない。
「ティアナが優しくて素敵な女性なのは公爵様やスタンリー様、フレデリック様が側で慈しんでくださったからなのね」
クリスティアナは嬉しそうに私の手を取った。
「私は本当にセリーナが大好きよ。あなたは学園にいたときから私を一個人として接してくれた。周りは高位貴族だから我儘だと解釈してちょっとした言動で上げ足を取ろうとするの。私は親切にしたつもりでも公爵令嬢だから見下しているんだろうって言われたわ。でもセリーナは普通にありがとうって言ってくれた。心を許せる友人がいなかった私の学園生活でセリーナはかけがえのない存在だったのよ。改めてお礼を言うわ。それなのにあなたに頼ってあなたの時間を奪って婚約者と……」
私は彼女を高慢だと感じたことはない。自分から話しかけられない臆病な私に笑顔で先に声をかけてくれた。私こそクリスティアナの存在に支えられていた。
「あの人のことはティアナに責任はないわ。私たちの問題だったのだから本当にもう気にしないで。それよりも学園にいたときからあなたが私を友人だと思ってくれていたことが嬉しい」
「あの頃は今ほど打ち解けていなかったものね? 今考えればもったいなかったな。学園にいる時もセリーナと親友でいたかった」
「ありがとう。ティアナ。私も同じ気持ちよ。あなたと友達になれてよかった」
クリスティアナの言葉で苦い学園生活の思い出も、終わった過去として昇華しつつあった。
「誰かに相談することは出来なかったの?」
「ええ。私の周りには友人と呼べる子供はいなかったし、屋敷の使用人もおじい様を恐れていて何も言えないわ。息苦しい毎日の中で、時々ご両親に連れられてスタンリーとフレデリックが遊びに来てくれたの。その時間だけが私が私らしく過ごせる時間だった」
スタンリーとフレデリックのお父様とクリスティアナのお父様が従兄弟同士でとても仲が良かったそうだ。両親を亡くしたクリスティアナを心配して、スタンリーとフレデリックを遊び相手にと頻繁に連れて来ていたそうだ。
「親戚は皆私の婿にしたいと子息を連れてくる。その子供達も私の機嫌を取ろうと必死で悲しかった。でも、ケラー伯爵はそんな意図はなくスタンリーとフレデリックは私と対等に遊んでくれていた。ある日私の授業が終わる前に二人が部屋に来て私が家庭教師に叩かれている所を見てしまったの。私は答えを間違えた自分が悪いと思っていたから恥ずかしくて俯いていた。そしたらフレデリックが薬を侍女に頼んで腕の手当てをしてくれた」
「フレデリック様は子供の頃から優しかったのね」
「そうよ。今でも優しいのだけど気づいたら軟派な男になっていたわね。それでスタンリーはおじいさまの手を引っ張って部屋に連れて来て、おじい様に向かって怒鳴りつけたのよ。彼だっておじい様を怖く思っていたはずなのに顔を真っ赤にして「どうしてこんな酷いことを家庭教師に許しているのですか? ティアナが可哀そうだ」って」
クリスティアナはその時を思い出し顔を綻ばせた。
「スタンリー様が怒鳴る? いつも温厚な笑顔を浮かべていて幼い頃とは言え想像がつかないわ」
クリスティアナは何度も首を縦に振りうんうんと頷く。
「私もスタンリーが怒っている姿を見たのはあとにも先にもあの時だけよ。私のために怒ってくれた。あの日から彼は私の王子様で大好きな人になったの。おじい様は謝ってくださったわ。それと家庭教師の体罰は知らなかったらしくて、その教師にお怒りになってすぐに首にしたの。私はホッとして泣いてしまったら、おじい様は私を抱き締めて背を撫でてくれた。すまなかったって……。それでおじい様は不器用なだけで優しいって分かったの。私を愛してくれているって信じることが出来た。それに愛してなかったら私が望んだスタンリーとの婚約を許してはくれなかったと思う」
確かに親戚とはいえ家格から考えたら伯爵子息との婚約より、もっといい条件の婿がねはいただろう。クリスティアナの幸せを一番に考えて彼女の希望を叶えてくれたに違いない。
「ティアナが優しくて素敵な女性なのは公爵様やスタンリー様、フレデリック様が側で慈しんでくださったからなのね」
クリスティアナは嬉しそうに私の手を取った。
「私は本当にセリーナが大好きよ。あなたは学園にいたときから私を一個人として接してくれた。周りは高位貴族だから我儘だと解釈してちょっとした言動で上げ足を取ろうとするの。私は親切にしたつもりでも公爵令嬢だから見下しているんだろうって言われたわ。でもセリーナは普通にありがとうって言ってくれた。心を許せる友人がいなかった私の学園生活でセリーナはかけがえのない存在だったのよ。改めてお礼を言うわ。それなのにあなたに頼ってあなたの時間を奪って婚約者と……」
私は彼女を高慢だと感じたことはない。自分から話しかけられない臆病な私に笑顔で先に声をかけてくれた。私こそクリスティアナの存在に支えられていた。
「あの人のことはティアナに責任はないわ。私たちの問題だったのだから本当にもう気にしないで。それよりも学園にいたときからあなたが私を友人だと思ってくれていたことが嬉しい」
「あの頃は今ほど打ち解けていなかったものね? 今考えればもったいなかったな。学園にいる時もセリーナと親友でいたかった」
「ありがとう。ティアナ。私も同じ気持ちよ。あなたと友達になれてよかった」
クリスティアナの言葉で苦い学園生活の思い出も、終わった過去として昇華しつつあった。
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