続・君につづく道

第12部 泡沫の夢

3

まさか。

ただ、体の相性が良かっただけ。

気持ちいい関係だっただけ。

でも、あいつは一度も目を開けてしてくれなかった。キスも、あまりしない。私からすることが多かった。誘うのも、私から。

そんな坂井さんが、ひたむきに愛する人。

それが、まさか13も年下の女の子。

あり得ないでしょ。30過ぎてる男が。そんな女に振り回される？そんなの、哀れだ。かわいそうだ。

私がそばにいてあげられるなら、その悲しみも、私の悲しみも…いつか薄らいでいくんじゃないのかな。

そう思ったんだ。


芳沢唯子はゆっくりと立ち上がり、露天風呂を出て大浴場に入ると、脱衣所に向かって歩いて行った。


それにしても。

あの子の体、綺麗だった。細くて、胸もまぁまぁある。首筋から胸元にかけて、うっすらと赤い跡がある。あれは、キスマークだ。

坂井さん、マーキングしてんな。

明らかに。ほんと、大人気ない。

それだけ、好きなんだ。何が、そんなに夢中にさせるんだろう。

愛想もなくて可愛げもないあの女の子の、何がそんなにアラサー男子の心を鷲掴みにするんだ