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第十章
「怒り」のアーカイブは地獄にある!
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俺の人生は何かに翻弄されている。
何かだ。見えない何かだ。
運命、それを司る神、消え去った過去、待ち受けてる未来、死…
いつもいつも、後一歩で欲しいものを掴み損ねる。
プロセスは輝きに満ちたていても、結果は、暗闇に埋没し、見る気もなくなる。
ここで間違ってくれるな!
俺は決して、不幸を望んだ生き方は欲していなかったことを!
今は違うが…
良い大学に入り、好きなあの娘と結婚して、子供に恵まれ普通の家庭、仕事も頑張り、それなりの評価を得、普通夢見る生き方を望んでいたんだ!
しかし、見えない何かにいつも邪魔される。
30代のリストラ業務も同じだ。
俺はその仕事に邁進したが、狡い奴は、調子良く、俺にリスクだけを押し付け出した。
あの「怒り」が蘇って行ったよ!俺の心が焚き付ける、あの「怒り」が!
俺は幹部養成研修で表彰を受けて、九州支社の人事部に抜擢された。
主な仕事は人員整理だ。バブル崩壊後の会社の経営赤字は尋常ではない数字が表出されていた。
ここから5年間、九州支社の社員にとって地獄のリストラ計画が遂行されることになる。
その折衝担当が俺だ!
研修明けの35歳の若造である俺が主たる担当だ!
社員の人生を左右するリストラ勧告を俺が宣告して行くのだ。
俺の仕事は、リストラ勧告だけではなかった。
九州支社の子会社の吸収合併を津波のように問答無用に推し進めて行かなければならなかった。
更にだ!
人員整理された各県の支社の要望、吸収合併された子会社の要望、リストラ勧告された社員の最後の要望をひたすら聞かなければならなかった。
当然、そんな要望などまかり通ることはない。訴訟回避の形だけのパフォーマンスだ。
この折衝会議では、いつも怒号が飛び合った。
「いままでの会社に対する貢献を無視するつもりか!」
「社員の労働条件をこれ以上悪化させると、メンタルが蔓延するぞ!」
「俺たちに死ねと言うのか!」
「お前らだけ、美味しい汁を吸うのか!」
「お前は死神だ!」
こんな感じた…
俺は自身の感情を殺し、会社の作成したマニュアル答弁を繰り返した。正に壊れたレコードのように。
「やむを得ない措置です。」
「ご理解願います。会社全体の存続の為の措置なのです。」
「ご要望は承っておきます。お約束は致しかねませんが…」
こんな具合に来る日も来る日も、各県を周り、折衝を行い、小会議を行い、折り合いを付け、最終的に九州支社での機関会議で決着を付ける。
5年間、この流れに沿って、俺は仕事のみで生きた。
家族?
子供の顔は寝姿しか見たことはなかったよ。
パニック障害は?
悪化するに決まっているだろ!
言いたいことも言えず、ただただ、壊れたレコードのように、鉄仮面を被り、リストラ等を宣告するんだぜ!
ストレスはマグマのように噴き上がり、それを噴出することはできないため、俺の心のアーカイブ室に蓄積されて行ったよ。
この頃から、また、あの耳鳴りが酷くなった。
心が俺を挑発して来る。
「お前は本当に会社の犬だな~、それもかなり従順な犬だ。」
「お前の「怒り」はアーカイブ室に蓄積しておくが、いつ映写機を回したらいいんだい?」
「おい、冷静に良く周りを見てみろよ。狡賢いコヨーテどもは穴倉に姿を消しているじゃないか!お前だけだぞ。矢面に立ってる馬鹿はな。」と
そう。俺の心が言う通りだ。
このリストラ計画を策定していた頃の上司・先輩社員は、リストラが佳境に入ると、雲隠れのように姿を眩まし、いつのまにか、東京本社で昇進を果たしていた。
クソッタレ野郎ども!
偉そうに計画だけ立て、実行には加らず、一つの傷を負うこともなく、栄転かよ!
リストラ社員の憎しみは俺に集中させておいて、腐れ野郎は悠々と都でエリート暮らしだ!
ならば此方にも考えがある。
本当の死神になってやる!
俺はそう思い、リストラ策を強行に促進した。
社員や子会社との折衝も悪魔の如きだ。
会社の作成したマニュアル答弁なんぞ、クソ喰らえだ!
「いいから、お前はクビだ!つべこべ言うな!退職金を出さないとは言ってない、お前の日頃の努力が、この結果だ!身の丈を知れ!」
「貴社は吸収され消滅するんだよ。契約書は既に交わされてる。この温情会議で物を言えるだけ幸せと思って頂きたい。」とね。
俺の血相はまるで、仁王の如く、弱者を睨み通した。
俺の心がまた茶々を入れ出した。
「おいおい、「怒り」の相手が違うだろ~、お前の相手は会社であり、逃って行った卑怯者に向けるべきだ!」と
俺は俺の心に言った。
「そんなこと分かっている。「怒り」を増幅させているのさ。来るべき時に、誰も止められないような怪物になるため、相手問わず、怒り狂っているのさ」と
俺の心は安心して、俺にご褒美をくれた。
鬱病というご褒美を…
俺から睡眠を奪い去り、心臓の動悸を大太鼓のように打ち付け、酒と煙草と抗うつ剤を食料とし、「怒り」のエネルギーを俺の希望通り増幅させてくれた。
正に生きた屍、夜叉の如く、俺の本性は瞬く間に変身して行った。
待っていろ!
逃げやがった卑怯者ども。
お前らを俺は必ず捕らえ、地獄を見せてやる!
今、俺の居る地獄を!
何かだ。見えない何かだ。
運命、それを司る神、消え去った過去、待ち受けてる未来、死…
いつもいつも、後一歩で欲しいものを掴み損ねる。
プロセスは輝きに満ちたていても、結果は、暗闇に埋没し、見る気もなくなる。
ここで間違ってくれるな!
俺は決して、不幸を望んだ生き方は欲していなかったことを!
今は違うが…
良い大学に入り、好きなあの娘と結婚して、子供に恵まれ普通の家庭、仕事も頑張り、それなりの評価を得、普通夢見る生き方を望んでいたんだ!
しかし、見えない何かにいつも邪魔される。
30代のリストラ業務も同じだ。
俺はその仕事に邁進したが、狡い奴は、調子良く、俺にリスクだけを押し付け出した。
あの「怒り」が蘇って行ったよ!俺の心が焚き付ける、あの「怒り」が!
俺は幹部養成研修で表彰を受けて、九州支社の人事部に抜擢された。
主な仕事は人員整理だ。バブル崩壊後の会社の経営赤字は尋常ではない数字が表出されていた。
ここから5年間、九州支社の社員にとって地獄のリストラ計画が遂行されることになる。
その折衝担当が俺だ!
研修明けの35歳の若造である俺が主たる担当だ!
社員の人生を左右するリストラ勧告を俺が宣告して行くのだ。
俺の仕事は、リストラ勧告だけではなかった。
九州支社の子会社の吸収合併を津波のように問答無用に推し進めて行かなければならなかった。
更にだ!
人員整理された各県の支社の要望、吸収合併された子会社の要望、リストラ勧告された社員の最後の要望をひたすら聞かなければならなかった。
当然、そんな要望などまかり通ることはない。訴訟回避の形だけのパフォーマンスだ。
この折衝会議では、いつも怒号が飛び合った。
「いままでの会社に対する貢献を無視するつもりか!」
「社員の労働条件をこれ以上悪化させると、メンタルが蔓延するぞ!」
「俺たちに死ねと言うのか!」
「お前らだけ、美味しい汁を吸うのか!」
「お前は死神だ!」
こんな感じた…
俺は自身の感情を殺し、会社の作成したマニュアル答弁を繰り返した。正に壊れたレコードのように。
「やむを得ない措置です。」
「ご理解願います。会社全体の存続の為の措置なのです。」
「ご要望は承っておきます。お約束は致しかねませんが…」
こんな具合に来る日も来る日も、各県を周り、折衝を行い、小会議を行い、折り合いを付け、最終的に九州支社での機関会議で決着を付ける。
5年間、この流れに沿って、俺は仕事のみで生きた。
家族?
子供の顔は寝姿しか見たことはなかったよ。
パニック障害は?
悪化するに決まっているだろ!
言いたいことも言えず、ただただ、壊れたレコードのように、鉄仮面を被り、リストラ等を宣告するんだぜ!
ストレスはマグマのように噴き上がり、それを噴出することはできないため、俺の心のアーカイブ室に蓄積されて行ったよ。
この頃から、また、あの耳鳴りが酷くなった。
心が俺を挑発して来る。
「お前は本当に会社の犬だな~、それもかなり従順な犬だ。」
「お前の「怒り」はアーカイブ室に蓄積しておくが、いつ映写機を回したらいいんだい?」
「おい、冷静に良く周りを見てみろよ。狡賢いコヨーテどもは穴倉に姿を消しているじゃないか!お前だけだぞ。矢面に立ってる馬鹿はな。」と
そう。俺の心が言う通りだ。
このリストラ計画を策定していた頃の上司・先輩社員は、リストラが佳境に入ると、雲隠れのように姿を眩まし、いつのまにか、東京本社で昇進を果たしていた。
クソッタレ野郎ども!
偉そうに計画だけ立て、実行には加らず、一つの傷を負うこともなく、栄転かよ!
リストラ社員の憎しみは俺に集中させておいて、腐れ野郎は悠々と都でエリート暮らしだ!
ならば此方にも考えがある。
本当の死神になってやる!
俺はそう思い、リストラ策を強行に促進した。
社員や子会社との折衝も悪魔の如きだ。
会社の作成したマニュアル答弁なんぞ、クソ喰らえだ!
「いいから、お前はクビだ!つべこべ言うな!退職金を出さないとは言ってない、お前の日頃の努力が、この結果だ!身の丈を知れ!」
「貴社は吸収され消滅するんだよ。契約書は既に交わされてる。この温情会議で物を言えるだけ幸せと思って頂きたい。」とね。
俺の血相はまるで、仁王の如く、弱者を睨み通した。
俺の心がまた茶々を入れ出した。
「おいおい、「怒り」の相手が違うだろ~、お前の相手は会社であり、逃って行った卑怯者に向けるべきだ!」と
俺は俺の心に言った。
「そんなこと分かっている。「怒り」を増幅させているのさ。来るべき時に、誰も止められないような怪物になるため、相手問わず、怒り狂っているのさ」と
俺の心は安心して、俺にご褒美をくれた。
鬱病というご褒美を…
俺から睡眠を奪い去り、心臓の動悸を大太鼓のように打ち付け、酒と煙草と抗うつ剤を食料とし、「怒り」のエネルギーを俺の希望通り増幅させてくれた。
正に生きた屍、夜叉の如く、俺の本性は瞬く間に変身して行った。
待っていろ!
逃げやがった卑怯者ども。
お前らを俺は必ず捕らえ、地獄を見せてやる!
今、俺の居る地獄を!
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