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第1部
3 切り出された婚約破棄
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「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
そんな風にアラン様が切り出したのは、わたし達の婚約が決まって、三年が経とうかという頃だった。
定例の月一度のお茶会の最中のこと。その日の茶会は、わたしの住まう、ウォールンデン家分家屋敷で催されていた。
分家屋敷は叔父様が当主を務めるウォールデン家本家邸宅の隣りにある。
アラン様の住まうカドガン伯爵邸からは、馬車で数十分。
それなりに旧家である、コールリッジ=カドガン家のタウンハウスがあるのは、王城に近い上級貴族邸宅街。
一方、大商家であるウォールデン家の家々は、上級貴族邸宅街に比べて王城から離れた、下級貴族や富裕層、高級店の立ち並ぶ区域にある。
「どうして? アラン様はわたしが嫌いなの?」
それなりに仲良くやっていると思っていたわたしは、アラン様の突然の意思表示に驚いた。
ぱちくりと瞬いてアラン様を見ると、アラン様は形のいい秀麗な眉を寄せ、きゅっとお口を引き結んだ。とても真剣な面持ち。
だから、ああこれは覆せないな、とすぐに悟った。
「そうじゃない。俺は、あいつらの思う通りになることを許せない」
「あいつらって……カドガン伯爵とわたしのお母様のこと?」
「そうだ。母上は俺達の婚約が決まってから、床に伏している日が多くなった」
「そうだったの……」
お茶会でわたしがアラン様のお屋敷に伺うと、いつも優しく微笑んで出迎えてくださる。けれど、どこか儚げなご様子だったことには、気が付いていた。
「……本当は、母上にはあの男と離縁して、心穏やかにお過ごしいただきたい。だけど、母上がそれを望んでいないから」
アラン様のお母様のご生家であるオルグレン=アスコット家は、オルグレン=アボット家の傍系で、オルグレン家当主のアボット侯爵は王家の血を引く。
遡れば降嫁した公女様がいらして、その公女様は当時の国王陛下の姪だ。
だからオルグレン=アスコット家は王家の血を引く由緒正しい名家ではあるけれど、現状とても貧しい。
アスコット子爵領はカドガン伯爵領と川を挟んで隣合い、昔は双方ともに大層富んだ地であったらしい。
けれどアラン様の曾御祖父様の代で、それまでにない長雨で川の氾濫が起こったそうだ。
そしてアスコット子爵領側の堤防がそれに耐え切れず、崩れ落ちた。
アスコット子爵領はコールリッジ家がカドガン伯爵領を治め始めるより旧くからあり、築かれた堤防もまた旧かった。
強度の違いだったのだろう。運もあったのかもしれない。
溢れ返った川は勢いよく水流を増し、アスコット子爵領を蹂躙した。
そして飢饉が起こる。
アスコット子爵は民のために手を尽くした。
元通りとはいかずとも、飢饉を脱し、なんとか土地に住まう民が栄養失調の悪化に伴う病気、飢餓、餓死から免れるようになった。
他の土地へ逃れようとする人口の流亡も収まるようになった。
けれども、未だその傷痕は深い。
そしてそんな危機に瀕したアスコット子爵だったけれど、オルグレン家当主のアボット侯爵は寄子であるアスコット子爵を見放した。
そこへ手を貸し、支えたのが隣の領地を治めるカドガン伯爵だったのだ。
つまり、アスコット子爵にとってコールリッジ家は厚恩を抱く相手であり、アラン様のお母様は恩に報いるべくカドガン伯爵に嫁いだのだ。
コールリッジ=カドガン家にとって、オルグレン=アスコット家に流れる王家の血筋は魅力的だった。
そんな使命を背負わされたアラン様のお母様が、カドガン伯爵と離縁して、ご実家であるオルグレン=アスコット家へお戻りになることは出来なかった。
当時のアスコット子爵だったアラン様のお祖父様がまずお許しにならなかっただろうし、アラン様のお母様も、そのようなことをご自分にお認めにならなかった。
オルグレン=アスコット家はコールリッジ=カドガン家への恩誼を仇で返すわけにはいかないのだ。
アスコット子爵がアラン様の叔父様に代替わりした今ならば、オルグレン=アスコット家はアラン様のお母様を受け入れるだろう。
現アスコット子爵は、ご自身の姉であるアラン様のお母様への、カドガン伯爵の仕打ちに、長年臍を噛んでいたのだから。
けれど、アスコット子爵がそれを許したとて、オルグレン=アスコット家は未だ貧しく、コールリッジ=カドガン家の援助なしでは立ちいかない。
オルグレン家一族は、オルグレン=アスコット家を既に見放していた。
アスコット子爵領の民のこと。それからアスコット子爵の夫人やその子供のこと。
アラン様のお母様は憂いただろう。
それがためにアラン様のお母様は、カドガン伯爵と離縁して、オルグレン家へ逃げ帰るわけにはいかなかった。
「だから俺が爵位を継ぎ、あの男を領地に追いやって、母上を安心させてさしあげたい。そのとき俺があの二人に押し付けられた婚姻を受け入れていたら、母上は心休まらないだろう」
それはそうだと思う。
わたしがアラン様の元に嫁げば、アラン様のお母様はわたしの顔を嫌でも見なくてはならない。
わたしはお母様と容姿がとてもよく似ている。
幼い頃から真珠姫と呼ばれていたらしい、それはそれはお美しいお母様。
その真珠姫の脳みそは、大鋸屑しか詰まっていないのだけど。
「つまり、アラン様が伯爵位を継ぐまでは大人しく言うことを聞いているように振舞って、婚約を継続。そしてアラン様が正式にカドガン伯爵になった暁に、晴れて婚約解消する、と。そういうことかしら?」
先日お父様に買っていただいたばかりの淡い桃色の扇子で口を覆い、挑戦的な眼差しを投げてアラン様に問う。
アラン様は俯いて、膝の上で拳を握った。
そんな風にアラン様が切り出したのは、わたし達の婚約が決まって、三年が経とうかという頃だった。
定例の月一度のお茶会の最中のこと。その日の茶会は、わたしの住まう、ウォールンデン家分家屋敷で催されていた。
分家屋敷は叔父様が当主を務めるウォールデン家本家邸宅の隣りにある。
アラン様の住まうカドガン伯爵邸からは、馬車で数十分。
それなりに旧家である、コールリッジ=カドガン家のタウンハウスがあるのは、王城に近い上級貴族邸宅街。
一方、大商家であるウォールデン家の家々は、上級貴族邸宅街に比べて王城から離れた、下級貴族や富裕層、高級店の立ち並ぶ区域にある。
「どうして? アラン様はわたしが嫌いなの?」
それなりに仲良くやっていると思っていたわたしは、アラン様の突然の意思表示に驚いた。
ぱちくりと瞬いてアラン様を見ると、アラン様は形のいい秀麗な眉を寄せ、きゅっとお口を引き結んだ。とても真剣な面持ち。
だから、ああこれは覆せないな、とすぐに悟った。
「そうじゃない。俺は、あいつらの思う通りになることを許せない」
「あいつらって……カドガン伯爵とわたしのお母様のこと?」
「そうだ。母上は俺達の婚約が決まってから、床に伏している日が多くなった」
「そうだったの……」
お茶会でわたしがアラン様のお屋敷に伺うと、いつも優しく微笑んで出迎えてくださる。けれど、どこか儚げなご様子だったことには、気が付いていた。
「……本当は、母上にはあの男と離縁して、心穏やかにお過ごしいただきたい。だけど、母上がそれを望んでいないから」
アラン様のお母様のご生家であるオルグレン=アスコット家は、オルグレン=アボット家の傍系で、オルグレン家当主のアボット侯爵は王家の血を引く。
遡れば降嫁した公女様がいらして、その公女様は当時の国王陛下の姪だ。
だからオルグレン=アスコット家は王家の血を引く由緒正しい名家ではあるけれど、現状とても貧しい。
アスコット子爵領はカドガン伯爵領と川を挟んで隣合い、昔は双方ともに大層富んだ地であったらしい。
けれどアラン様の曾御祖父様の代で、それまでにない長雨で川の氾濫が起こったそうだ。
そしてアスコット子爵領側の堤防がそれに耐え切れず、崩れ落ちた。
アスコット子爵領はコールリッジ家がカドガン伯爵領を治め始めるより旧くからあり、築かれた堤防もまた旧かった。
強度の違いだったのだろう。運もあったのかもしれない。
溢れ返った川は勢いよく水流を増し、アスコット子爵領を蹂躙した。
そして飢饉が起こる。
アスコット子爵は民のために手を尽くした。
元通りとはいかずとも、飢饉を脱し、なんとか土地に住まう民が栄養失調の悪化に伴う病気、飢餓、餓死から免れるようになった。
他の土地へ逃れようとする人口の流亡も収まるようになった。
けれども、未だその傷痕は深い。
そしてそんな危機に瀕したアスコット子爵だったけれど、オルグレン家当主のアボット侯爵は寄子であるアスコット子爵を見放した。
そこへ手を貸し、支えたのが隣の領地を治めるカドガン伯爵だったのだ。
つまり、アスコット子爵にとってコールリッジ家は厚恩を抱く相手であり、アラン様のお母様は恩に報いるべくカドガン伯爵に嫁いだのだ。
コールリッジ=カドガン家にとって、オルグレン=アスコット家に流れる王家の血筋は魅力的だった。
そんな使命を背負わされたアラン様のお母様が、カドガン伯爵と離縁して、ご実家であるオルグレン=アスコット家へお戻りになることは出来なかった。
当時のアスコット子爵だったアラン様のお祖父様がまずお許しにならなかっただろうし、アラン様のお母様も、そのようなことをご自分にお認めにならなかった。
オルグレン=アスコット家はコールリッジ=カドガン家への恩誼を仇で返すわけにはいかないのだ。
アスコット子爵がアラン様の叔父様に代替わりした今ならば、オルグレン=アスコット家はアラン様のお母様を受け入れるだろう。
現アスコット子爵は、ご自身の姉であるアラン様のお母様への、カドガン伯爵の仕打ちに、長年臍を噛んでいたのだから。
けれど、アスコット子爵がそれを許したとて、オルグレン=アスコット家は未だ貧しく、コールリッジ=カドガン家の援助なしでは立ちいかない。
オルグレン家一族は、オルグレン=アスコット家を既に見放していた。
アスコット子爵領の民のこと。それからアスコット子爵の夫人やその子供のこと。
アラン様のお母様は憂いただろう。
それがためにアラン様のお母様は、カドガン伯爵と離縁して、オルグレン家へ逃げ帰るわけにはいかなかった。
「だから俺が爵位を継ぎ、あの男を領地に追いやって、母上を安心させてさしあげたい。そのとき俺があの二人に押し付けられた婚姻を受け入れていたら、母上は心休まらないだろう」
それはそうだと思う。
わたしがアラン様の元に嫁げば、アラン様のお母様はわたしの顔を嫌でも見なくてはならない。
わたしはお母様と容姿がとてもよく似ている。
幼い頃から真珠姫と呼ばれていたらしい、それはそれはお美しいお母様。
その真珠姫の脳みそは、大鋸屑しか詰まっていないのだけど。
「つまり、アラン様が伯爵位を継ぐまでは大人しく言うことを聞いているように振舞って、婚約を継続。そしてアラン様が正式にカドガン伯爵になった暁に、晴れて婚約解消する、と。そういうことかしら?」
先日お父様に買っていただいたばかりの淡い桃色の扇子で口を覆い、挑戦的な眼差しを投げてアラン様に問う。
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