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本編

第四話 約束を果たす墓荒らし

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「俺は約束を果たしにきたんだ。だのになんだ? てめぇはおっ死んじまったってのか? ふざけんな! てめぇが言い出したんじゃねぇか!」


 そこまで怒鳴り散らすと、シャロンは怒りに任せて、帽子を投げ捨てた。
 胸元で握りしめていたそれは、質素な墓石に当って、地を転がる。
 帽子は、カサカサと乾いた落ち葉をまとい、そして見事に型崩れしていた。

 それから覚束ない足取りで墓石まで進み出ると、シャロンは崩れ落ちる。
 シャロンの腰あたりまでしかない、小さな墓石に縋った。



-------



 エドワードが毒杯を煽る前に、シャロンに書き残した手紙。
 第二王子ユーフラテスの子飼いの手によって、今朝シャロンに届けられた。
 そして手紙とともに、伝えられたこと。


「大変遺憾ながら、第三王子殿下は崩御なさいました。こちらをレディにと」


 シャロンは顔色も変えず、手紙を受け取った。
 使者が立ち去らないので、この場で開封しろということだと察し、ペーパーナイフを勢いよく突き立てた。
 荒々しい音。それから再び、静寂。

 ちらりと使者の様子を伺うも、なんの変化もない。
 シャロンは握りしめていた柄を持ち替え、ペーパーナイフを滑らせて、封を切った。
 切り裂いた封筒から、手紙を抜き取って広げる。
 シャロンが手紙をめくるたび、かさり、と乾いた音がする。



 エドワードの埋葬が許されたのは、第二王子ユーフラテスの力添えによるのだという。

 王太子アルフレッドに対し、兇徒を仕掛け、襲わせた罪によって、エドワードは裁かれ、処されるはずだった。
 だが事態が公になれば、それは王家の恥となる。
 エドワードは急な病に倒れたよう装うことで、毒杯の名誉を賜った。
 ならば王族の一人が埋葬されないなど不自然極まりない、と第二王子ユーフラテスが国王と王太子アルフレッドに執り成したのだと。

 葬儀が密やかに執り行われたのは、エドワードの母である側妃が、息子を喪った深い悲しみと嘆きによって、病に伏したから、ということにすると。
 大仰な式典が催されれば、その様子に母たる側妃が耐えられないと国王陛下に訴え。子を思って嘆く母の様子を、哀れに思われた国王陛下が慈悲を与え。そのような経緯で、王族崩御の際における、正式な式典を行わない特例について、国王陛下が許可なされた、という流言を流し。
 側妃は既に幽閉されており、そう時を置かずして、エドワードと同じ運命を辿ることだろう、という推測。

 続く予見においては、遅くとも、この日の夕方までには、王都に邸宅を構える各家々に、エドワードの訃報が届くだろうということが綴られ、手紙は終わる。

 懺悔も、悔恨も、悲哀も、寂寥も、憎悪も、諦念も。
 エドワードの感情の痕跡は、見当たらなかった。もちろん、甘ったるい愛の言葉も。
 犯した罪、その罰。
 それらが淡々と順序立てられ、経緯と結果、後の予測に分けて、説明されているだけ。



 シャロンはすべてに目を通すと、目の前の使者へと視線を向けた。
 凡庸な栗色の髪。紅茶に似た飴色の瞳。感情を排した、人形じみた顔の造作。たくましく鍛え上げられた体は、姿勢を正し、微動だにしない。
 彼の周りでだけ、時が止まっているかのようだ。

 シャロンは、にわかには信じられなかった。

 確かに第三王子エドワードと王太子アルフレッドの間には、確執があり、それは年々大きくなる一方だった。
 だが、もし仕掛けるとしたら、それは第三王子エドワードではなく、王太子アルフレッドだとシャロンは考えていた。

 アルフレッドは王太子でありながら、この国の高位貴族の後ろ盾をほとんど持たない。

 事態は複雑だが、理由は単純だ。
 アルフレッドの母である正妃が、隣国の王女であったから。
 それは、この国の純血主義者達には、依然として受け入れられないことだから。
 ただそれだけだ。

 勿論、そこには更に多くの複雑な背景が存在する。

 かつての王が、それまでの慣習を破り自国の女を娶らず、他国の血を混ぜたがために、この国から魔法がほぼ失われたことだとか。
 かの王が、他国の王女を妃として迎え入れ、国内から妃を娶らなかった理由だとか。
 その理由については長らく、王家とキャンベル辺境伯だけが知る、秘事であったことだとか。
 王家としてはどうしても隠し通したかった、その秘事を、第二王子ユーフラテスの婚約者である、キャンベル辺境伯令嬢が、いつかのお茶会で豪快にぶちまけたことだとか。
 エドワード曰く、令嬢のだとかで。

 魔法の失われた理由、かつての愚王の選択の根拠。
 令嬢が明かしたのはそれだ。
 そしてそれが、ただの逆恨みだったとくれば。
 惚れた女と結婚させてもらえず、その上さらに、惚れた女が高位貴族によって害された。その逆恨み。
 決して自国の令嬢となど、結ばれてなるものか、という。

 くだらなすぎて、シャロンですら呆れ返った。

 だが、かねてより純血主義で、また魔法が失われたことをこれまでより嘆いてきて、その原因を作った王家に不信感を抱いていた高位貴族達は、呆れるだけでは済まされない。
 当然、大反発した。

 そうとなれば、隣国の王女の血を直接受け継ぐ第一王子、第二王子などより、自国の貴族を母と持つ第三王子エドワードこそが、純血主義の大貴族達にとって、せめてもの許容範囲だ。

 これほどまでの王家と大貴族との対立があって、王太子アルフレッドと第三王子エドワードの対立が深まらないはずもない。

 そこまではいい。
 よくはないが、シャロンにも理解できる。
 不可解なのは、第二王子ユーフラテスの動きだ。
 おおよそにおいては第一王子の補佐と回る第二王子ユーフラテスが、なぜ第三王子エドワードに機転を利かせるのか。

 シャロンには、第二王子ユーフラテスは王太子アルフレッドの間諜であるとしか思えなかった。
 エドワードがどれほど庇おうとも。

 だから、第二王子ユーフラテスの手の者が、エドワードの手紙を運んできたとき、これは罠かもしれないと思った。
 思ったが、だがそうとはいえ、エドワードとしばらく連絡が取れずにいたのは事実だったし、手紙の文字は紛れもなくエドワードその人の筆跡だった。
 たとえ筆跡模写によるのだとして、エドワードが危機的状況にあるかもしれないのに、動かずにはいられなかった。

 それだから。
 だからシャロンは、誘導されるがままに、エドワードの墓石まで来た。
 今こそ、エドワードを救い出すときだと。
 王族墓地の一画。
 代々の王族、そのうちの目立たぬ人物らの眠る場所。
 参るには、王族の許可が必要だ。
 シャロンは、墓石に刻まれた文字を幾度も幾度も、指でなぞる。


「エド……ワード……」

「残念です」


 なんの感情もこめられていない遺憾の言葉。
 その無機質な男の声を無視して、シャロンはジャケットを脱ぎ、袖を捲りあげた。
 まずは土の上を覆う落ち葉をざっと払いのける。湿った土の香りが、一気に立ち上った。
 その様子に、後ろで控えていた男が慌てたようにシャロンの肩を掴む。
 ぐいと後ろに引かれ、シャロンは尻もちをついた。


「なにすんだよ!」


 抜き身の憎悪をぶつけると、相手は一瞬怯んだ。
 シャロンの声が裏返ったことで、シャロンが女性であることを思い出したのかもしれない。
 ハッとしたようにシャロンの肩から手を離し、胸に手を当て、頭を下げた。


「大変失礼いたしました、レディ。ですが、あなた様のなさろうとしていること。それは死者への冒涜です」

「ハッ! この下に、本当に遺体が埋まってんのならな!」


 嘲りそのままに言い捨てると、シャロンは墓石に向かい直り、片膝をついた。


「おい、エド。てめぇ、まさか俺にあれだけ念押ししておいて、いざとなったら助けはいらねぇだなんて、そんなフザけたことは言わねぇよな?」


 不敵に笑うシャロンに痛ましそうな目線を送ると、それきり使いの男は邪魔立てすることはなかった。
 王族墓地には今、シャロンと使いの男以外、誰もいない。

 土の下に納められていた棺は、予想よりずっと浅いところにあった。
 掘り起こすのに、作業のほとんどをシャロンは素手で行ったにも関わらず、手は特に傷ついていない。
 埋めたばかりだからか、土も柔らかかった。

 黒い土は黒い大理石の棺の上とあっては、茶色く見えるもので、エドワードが眠るとされる棺が現れたとき、棺は焦げ茶色のパウダーをまぶされているようだった。カカオ豆を砕いて散らしたかのように。
 エドワードはホットチョコレートが好きだった。


「王子でよかったと思うことなんて、ほとんどないけど、チョコレートを味わえることには、確かに生まれに感謝したくなるね」


 貴重で高級な嗜好品。それがチョコレート。
 そのパウダーに似た土が、エドワードの棺を飾っている。
 シャロンは舌打ちした。
 まだ開けずにいる棺の下で、「これでホットチョコレートがたくさん飲める」とエドワードが笑っている気がしたからだ。
 バカバカしい、とシャロンは棺に手をかけた。

 後ろで沈黙を貫く男の手助けを乞うなんて、まっぴらごめん。
 そう思いはしても、鍛えているとはいえ、シャロン一人で棺を開けるのは不可能だった。

 蓋と重なる凹凸部分について、なんとか二人で蓋を持ち上げる。
 それからズズズ、と鈍い音を立てて引きずった。

 シャロンの爪も指も、全てが土で真っ黒になり、冷たい風が真っ赤に紅潮した頬を刺し、額や首筋、胸に背中など、体中を垂れる汗が冷やされ、シャロンは身震いする。
 いや、身震いした真の理由は、それじゃない。


「うそ……だろ……」


 微笑むように眠るエドワード。
 その呑気な寝顔がシャロンの目に飛び込んでる。
 いかにも平和そうで、腹立たしい。
 救い出せ、と言っておきながら、勝手に旅立った。シャロンがもはや、手の出しようもない世界へと。


「てっめぇ……! ふざけんなよ! てめぇが言ったんじゃねぇか! 俺に! 助けに来いって! 約束しろって! 囚われの姫だかなんだか知らねぇが、救い出せって、てめぇが俺に言ったんだろ!
「てめぇはいつもそうだ! へらへらへらへら、調子のいいことばかり言いやがって! エメラルドのネックレスが優美な雰囲気によく似合うだとか、黒いドレス姿が神秘的で綺麗だとか! そんなふうに俺のことを褒めたくせに! 俺が男装してみりゃ、今度は他の女とは違うだの、逞しくてかっこいいだの! これからは王子役と姫役を交代しようだの! てめぇはいつも、言ってることがめちゃくちゃなんだよ!」


 そこからはもう、ただだた、シャロンはエドワードを罵倒し続けた。


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