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13話 厄介な少女
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おいおい、嘘だろ……。
何だこの氷は。
声からして、襲われていた少女が使ったことに間違いないが、この氷の量に流れ出てくる速さ。
普通じゃない。
とにかく、その少女がいるところに行かないと。
「見えぬ力よ、全てを砕き破壊しろ。風砕フルウェア」
俺の身長の二倍はある氷に手を当てて、そう唱える。
すると、少しずつ氷にヒビが入っていき砕け散った。
だが、全ての氷を砕けたわけではない。
細い道が全て氷で埋められてしまっているから、何度も風砕を使わないといけない。
消費魔力量はそこまで多くないため特に問題はないが、出来るだけ温存したい。
今から向かう場所にいる人物が、危険人物の可能性も否定できないからな。
何度も何度も繰り返し、少しだけ広くなった道に出ると、そこには倒れた男達を見下ろす一人の少女がいた。
その少女は、長い紫の髪を花の髪飾りで後ろで止めて、紺色のワンピースを着ている。
この場にいることに大きな違和感を抱いてしまう。
その少女には傷が一切なく、そのかわりに男達が血まみれになっていた。
どうやら本当に、この少女は只者ではないようだ。
「あなたも……この男達の仲間ですか?」
俺がいることに気付いた少女は、睨むわけでも怯えるわけでもなく、ただ平然とした顔で質問してきた。
「俺はその男達の仲間じゃない」
「でも、仮面をつけて剣を握って、私の氷も砕いてきた。……危険そうだから、あなたも殺します」
「ちょっと待てよ。確かに仮面とか付けて怪しいかもしれないけど――」
「操られる者、暴れて支配するが良い。闇の人形」
さっきから魔法を連発しやがって。
想像以上に厄介な人物に出会ってしまったな。
そんなことを考えている間に、少女の前に全身闇で覆われた騎士が出現した。
あれだけの氷を生成することができる魔力量を持っているということは、この創られた騎士もそこそこ強いはずだ。
それでも、ミラノ達よりは強くないだろう。
つまり、俺にとってこの騎士は、なんの脅威でもないということだ。
「そんな……」
俺に向かって振り下ろされた剣を難なく躱すと、騎士の腹に向けて風魔法を放った。
体の中心に開けられた穴を再生することができずに、そのまま闇の騎士は崩れて消滅していった。
風魔法で破壊することはできたが、並の冒険者だったら破壊することは不可能だったかもしれない。
この国にこんな少女がいたとは、本当にびっくりだ。
「あなた……何者ですか……?」
少女は警戒した目を俺に向けながら、腕を前に上げた。
さらに魔法を使うつもりらしい。
だけど、これ以上戦っても何の意味もない。
「それはこっちのセリフだ。どう考えても冒険者ではないのに、その魔力量や魔法の使い方。ただの少女ってわけではないよな?」
俺は握っていた剣を腰に差して、手を上げた。
戦う意思がないことを証明するためだ。
少女は俺の行動を見て顔を顰めたが、俺の意思が伝わったのか腕を下げて肩の力を抜いた。
それを確認して、俺も上げていた手を下に下げた。
「あなたが何者か教えてくれたら、私のことを話します」
そう来るか。
でもそうだよな。
全く知らない相手に、自分のことを教えようとは思わないからな。
「わかった。教える」
俺は目の部分に付けている仮面に手をかけ、そして外した。
俺の顔を見ると、次第に少女の目は見開かれていった。
「聖剣使い……」
「そうだ。俺はこの国を追放された、聖剣使いだ」
俺がした行動が、吉と出るか凶と出るか……。
さぁ、どうなる。
俺は誰かを呼ばれたりされるかと思い、身構えたがそれは全く無意味だった。
なぜなら。
「お前敵だなぁ! 私が殺してやる!」
雪のように白い髪を靡かせ、口に果物を咥えながら、ミラノが上空から現れたのだから。
何だこの氷は。
声からして、襲われていた少女が使ったことに間違いないが、この氷の量に流れ出てくる速さ。
普通じゃない。
とにかく、その少女がいるところに行かないと。
「見えぬ力よ、全てを砕き破壊しろ。風砕フルウェア」
俺の身長の二倍はある氷に手を当てて、そう唱える。
すると、少しずつ氷にヒビが入っていき砕け散った。
だが、全ての氷を砕けたわけではない。
細い道が全て氷で埋められてしまっているから、何度も風砕を使わないといけない。
消費魔力量はそこまで多くないため特に問題はないが、出来るだけ温存したい。
今から向かう場所にいる人物が、危険人物の可能性も否定できないからな。
何度も何度も繰り返し、少しだけ広くなった道に出ると、そこには倒れた男達を見下ろす一人の少女がいた。
その少女は、長い紫の髪を花の髪飾りで後ろで止めて、紺色のワンピースを着ている。
この場にいることに大きな違和感を抱いてしまう。
その少女には傷が一切なく、そのかわりに男達が血まみれになっていた。
どうやら本当に、この少女は只者ではないようだ。
「あなたも……この男達の仲間ですか?」
俺がいることに気付いた少女は、睨むわけでも怯えるわけでもなく、ただ平然とした顔で質問してきた。
「俺はその男達の仲間じゃない」
「でも、仮面をつけて剣を握って、私の氷も砕いてきた。……危険そうだから、あなたも殺します」
「ちょっと待てよ。確かに仮面とか付けて怪しいかもしれないけど――」
「操られる者、暴れて支配するが良い。闇の人形」
さっきから魔法を連発しやがって。
想像以上に厄介な人物に出会ってしまったな。
そんなことを考えている間に、少女の前に全身闇で覆われた騎士が出現した。
あれだけの氷を生成することができる魔力量を持っているということは、この創られた騎士もそこそこ強いはずだ。
それでも、ミラノ達よりは強くないだろう。
つまり、俺にとってこの騎士は、なんの脅威でもないということだ。
「そんな……」
俺に向かって振り下ろされた剣を難なく躱すと、騎士の腹に向けて風魔法を放った。
体の中心に開けられた穴を再生することができずに、そのまま闇の騎士は崩れて消滅していった。
風魔法で破壊することはできたが、並の冒険者だったら破壊することは不可能だったかもしれない。
この国にこんな少女がいたとは、本当にびっくりだ。
「あなた……何者ですか……?」
少女は警戒した目を俺に向けながら、腕を前に上げた。
さらに魔法を使うつもりらしい。
だけど、これ以上戦っても何の意味もない。
「それはこっちのセリフだ。どう考えても冒険者ではないのに、その魔力量や魔法の使い方。ただの少女ってわけではないよな?」
俺は握っていた剣を腰に差して、手を上げた。
戦う意思がないことを証明するためだ。
少女は俺の行動を見て顔を顰めたが、俺の意思が伝わったのか腕を下げて肩の力を抜いた。
それを確認して、俺も上げていた手を下に下げた。
「あなたが何者か教えてくれたら、私のことを話します」
そう来るか。
でもそうだよな。
全く知らない相手に、自分のことを教えようとは思わないからな。
「わかった。教える」
俺は目の部分に付けている仮面に手をかけ、そして外した。
俺の顔を見ると、次第に少女の目は見開かれていった。
「聖剣使い……」
「そうだ。俺はこの国を追放された、聖剣使いだ」
俺がした行動が、吉と出るか凶と出るか……。
さぁ、どうなる。
俺は誰かを呼ばれたりされるかと思い、身構えたがそれは全く無意味だった。
なぜなら。
「お前敵だなぁ! 私が殺してやる!」
雪のように白い髪を靡かせ、口に果物を咥えながら、ミラノが上空から現れたのだから。
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