61 / 93
60話 手遅れ
しおりを挟む
兵士は、今自分が人質に取っているのが魔王だと知らないまま、強気な姿勢で喚き散らかしていた。
「おい! さっさと俺の指示通りに動け! じゃないとこの女を殺すぞ!」
「殺すって……」
「なんだ? 殺すのはあんまりだって言うのか? そんなこと知ったこっちゃねぇ! 俺はな、敵の命なんかどうでもいいんだよ!」
怒声を上げながら、さらにグーレに近づくと、片腕をグーレの首にまきながら顔を真横まで近づけた。
「さあ、お前の命なんかこの剣で一瞬で消せるんだぞ? お? 怖くなってきたか? そうでないと俺がつまらないか――」
「……せ」
「あぁ?」
グーレが何かを呟き、それを聞き取れなかった兵士は耳を口に近づけた直後、グーレの首に絡みついていた腕は、血を噴き出しながら地面に落下した。
「ギギャァァァァァァァァァァァ!!!」
まあ……当然こうなるよな。
一撃で殺されなかったのは不運だったな。
「離せと言っている」
敵兵士だけでなく、さっきまで一緒に行動していた俺たちでさえも、体中が凍りつくような瞳で悶え苦しむ兵士を見下ろすと、苦しみの涙をこぼす顔を、容赦なく蹴り飛ばした。
当然、その蹴りの勢いに体がついていくことはなく、頭を失った体はもうピクリとも動くことはなく倒れ込んでしまった。
「私をここまでイラつかせるとは……お前たち才能があるな……。そうだな。褒美として、魔王である私が殺してやろう。ククク……」
魔王、たったそれだけの言葉で、人質を取ったくせに逆に呆気なく殺され、そんな兵士に言葉も出ない程の驚き抱いた兵士達は、一気に絶望の顔色へと変わった。
「魔王……だと……」
「そんな……あり得ないだろ……!」
「そうだ! 魔王なんてあり得ない! ここはどの魔王にも支配されていない地域だか――」
「つまりお前は、私が嘘をついていると言いたいんだな?」
腕を腰の後ろで組みながら、グーレは1人の兵士に接近すると、軽く腹に蹴りを入れた。
だが、グーレにとっての軽い蹴りは、鎧に身を包む兵士の腹を抉り、一瞬で死に至らしめた。
「こ、この化け物がぁぁぁぁ!!!」
「私は化け物ではなく、魔王だ。死んでも覚えておけ」
そして細い指先から糸が出て来ると、それは脳を貫いてもう二度と覚めぬ夢へと送り込んだ。
「私たちが来る必要ありましたの?」
「答えはただ一つだ。無い」
まあ、確かにそう思ってしまうのも無理はない。
というか、そう思うことが普通だろう。
だが、これで戦いが終わるわけでは無い。
ファイアーウルフ達を救出してからが本番だ。
そのあとは、魔王と知ったことで発狂を始める者や、命乞いをする者が現れたが、グーレはそんなことは一切構わずに命を奪っていった。
「魔王だからなんだ! 俺はひるまな――」
「魔王を前にしてその強気な態度を褒めてやる。だが、お前は弱すぎる」
と、稀にこう抗おうとする者もいるが、結局何の意味もない。
どうせ、グーレは殺し甲斐のあるやつが出てきたとしか思っていないだろう。
そして時間がほんの数分だけ流れたことには、洞窟内にいた敵の命は全て消え去った。
「おい! さっさと俺の指示通りに動け! じゃないとこの女を殺すぞ!」
「殺すって……」
「なんだ? 殺すのはあんまりだって言うのか? そんなこと知ったこっちゃねぇ! 俺はな、敵の命なんかどうでもいいんだよ!」
怒声を上げながら、さらにグーレに近づくと、片腕をグーレの首にまきながら顔を真横まで近づけた。
「さあ、お前の命なんかこの剣で一瞬で消せるんだぞ? お? 怖くなってきたか? そうでないと俺がつまらないか――」
「……せ」
「あぁ?」
グーレが何かを呟き、それを聞き取れなかった兵士は耳を口に近づけた直後、グーレの首に絡みついていた腕は、血を噴き出しながら地面に落下した。
「ギギャァァァァァァァァァァァ!!!」
まあ……当然こうなるよな。
一撃で殺されなかったのは不運だったな。
「離せと言っている」
敵兵士だけでなく、さっきまで一緒に行動していた俺たちでさえも、体中が凍りつくような瞳で悶え苦しむ兵士を見下ろすと、苦しみの涙をこぼす顔を、容赦なく蹴り飛ばした。
当然、その蹴りの勢いに体がついていくことはなく、頭を失った体はもうピクリとも動くことはなく倒れ込んでしまった。
「私をここまでイラつかせるとは……お前たち才能があるな……。そうだな。褒美として、魔王である私が殺してやろう。ククク……」
魔王、たったそれだけの言葉で、人質を取ったくせに逆に呆気なく殺され、そんな兵士に言葉も出ない程の驚き抱いた兵士達は、一気に絶望の顔色へと変わった。
「魔王……だと……」
「そんな……あり得ないだろ……!」
「そうだ! 魔王なんてあり得ない! ここはどの魔王にも支配されていない地域だか――」
「つまりお前は、私が嘘をついていると言いたいんだな?」
腕を腰の後ろで組みながら、グーレは1人の兵士に接近すると、軽く腹に蹴りを入れた。
だが、グーレにとっての軽い蹴りは、鎧に身を包む兵士の腹を抉り、一瞬で死に至らしめた。
「こ、この化け物がぁぁぁぁ!!!」
「私は化け物ではなく、魔王だ。死んでも覚えておけ」
そして細い指先から糸が出て来ると、それは脳を貫いてもう二度と覚めぬ夢へと送り込んだ。
「私たちが来る必要ありましたの?」
「答えはただ一つだ。無い」
まあ、確かにそう思ってしまうのも無理はない。
というか、そう思うことが普通だろう。
だが、これで戦いが終わるわけでは無い。
ファイアーウルフ達を救出してからが本番だ。
そのあとは、魔王と知ったことで発狂を始める者や、命乞いをする者が現れたが、グーレはそんなことは一切構わずに命を奪っていった。
「魔王だからなんだ! 俺はひるまな――」
「魔王を前にしてその強気な態度を褒めてやる。だが、お前は弱すぎる」
と、稀にこう抗おうとする者もいるが、結局何の意味もない。
どうせ、グーレは殺し甲斐のあるやつが出てきたとしか思っていないだろう。
そして時間がほんの数分だけ流れたことには、洞窟内にいた敵の命は全て消え去った。
0
お気に入りに追加
1,090
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む
天宮暁
ファンタジー
人生なんてクソゲーだ。
それが、16年生きてきた私の結論。
でもまさか、こんな結末を迎えるなんて……。
しかし、非業の死を遂げた私をあわれんで、神様が異世界に転生させてあげようと言ってきた。
けど私、もう人生なんて結構なんですけど!
ところが、異世界への転生はキャンセル不能。私はむりやりチートを持たされ、異世界に放り出されることになってしまう。
手に入れたチートは「難易度変更」。世界の難易度を強制的に変える力を使い、冒険者となった私はダンジョンに潜る。
今度こそ幸せな人生を送れるといいんだけど……。
スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!
KeyBow
ファンタジー
日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】
変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。
【アホが見ーる馬のけーつ♪
スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】
はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。
出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!
行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。
悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!
一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
ある月の晩に 何百年ぶりかの天体の不思議。写真にも残そうと・・あれ?ココはどこ?何が起こった?
ポチ
ファンタジー
ある月の晩に、私は愛犬と共に異世界へ飛ばされてしまった
それは、何百年かに一度起こる天体の現象だった。その日はテレビでも、あの歴史上の人物も眺めたのでしょうか・・・
なんて、取り上げられた事象だった
ソレハ、私も眺めねば!何て事を言いつつ愛犬とぼんやりと眺めてスマホで写真を撮っていた・・・
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
こどくなシード 異世界転移者の帰還道
藤原 司
ファンタジー
目つきが悪く、口も悪いため高校では周りから誤解を受けやすい優月 輪(ゆうづき りん)。
いつもの学校からの帰り、リンは突如出現した穴に吸い込まれてしまう。
訳もわからないまま、吸い込まれた先の異世界で自分と同じ顔の聖剣の英雄と間違えられてしまい──?
目的は聖剣に魔王討伐。
苦難や葛藤、そして様々な経験をしながら、リンは元の世界への帰還を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる