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42話 覚醒

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 「あ……ぁ……」

 俺の目の前で、赤い液体や肉片が飛び散っていく。

 どうしてだろうか。どうして俺は、今目の前で起きてる惨劇を防ぐことが出来なかったのだろうか。

 アイツを生かすことなんか考えずに、さっきの攻撃で仕留めていたら、こんなことにはならなかったのではないか。

 俺は考えれば考えるほど、身体の中が黒く、ドロっとした液体なようなものに侵食されていく感じがした。

 「これで……私はさらに強くなったぞ!!!」

 あいつは……あいつは……

 クローラは両手を高々と空に突き上げ、声を上げた。鎖は喰らうのを止め、主人の指示を待っている生物のように、大人しく待機している。

 鎖からは血がポタポタと垂れ落ち、血が垂れる先には、赤く染まった腕が一本だけ落ちていた。

 血に染まる腕を見た途端、黒く、どろっとした液体に、小さな火が投げ入れられ、そして俺に中で燃え広がっていった。

 「この鎖があれば、お前の腕などに壊されることはもうない!」

 クローラは俺に向かって唾を飛ばしながら興奮気味に喋ってきた。だが俺にとったらあいつが唾を飛ばそうが興奮していようが、俺を見下そうがそんなことどうでもいい。

 だけど……あいつは……お前は……

 「生きていたらいけないんだよ」

 俺は、魔獣の腕から人間の腕に戻した後、右手を前に出し、手のひらを上に向ける。すると、それに反応するかのように風が荒く吹き荒れだした。

 「貴様……何をする気――」

 クローラは俺に向かって目を見開き、一歩近づいた途端、右の肩から先が宙を舞って地面に落ちた。

 「ぎぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 音を立てながら血が噴き出るのと同時に、クローラは喉が枯れそうなほどの声を上げながら地面を転がり回った。

 俺は前に出した腕を下に下ろすと、転がりまわるクローラにゆっくりと近づいた。

 「き、貴様ぁ!なにをした!」

 クローラは俺を睨みつけながら怒鳴った。だが下から睨みつけられた所で、怖さも何も感じない。

 「おい!私の質問に答えろ!」

 だが俺は、クローラの質問に答えることなく、腕がなくなり血が溢れ出る部分を触った。

 「ぐぎゃあああぁぁぁぁぁ!貴様、なにを――」

 効いたな。なら、苦しめよ。

 クローラは急に怒鳴るのを止めると、胸に手をあて苦しみ出した。

 「どうだ?毒っていうのは苦しいか?さぞ気分はいいだろうな」
 「毒……だと……」

 顔の血管はありえないほど浮き出し、胃に入っていたのであろう物を吐き出した。

 「がはっ……ぁぁ……」
 「苦しそうだな」
 「絶対に……殺してやる……」

 残念だな。殺されるのはお前の方だ。

 
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