上 下
34 / 93

33話 魔獣の力

しおりを挟む
 怒りで支配された影響で、俺はほとんど何も考えることができなくなった。

 「リウス……」

 「エンファ、こいつらを先導して獣人の国まで案内してやってくれ。ミミィのこと頼んだぞ」

 俺は、隣に立つエンファの顔を見ないままミミィ達のことを頼んだ。

 「でもお前はどうするんだよ……」

 「俺は……」

 歯が砕けてしまいそうなほどの力で奥歯を噛み、目の前いるナーシャを睨んだ。

 「こいつを殺してから行く」

 「ハハッ、余を殺すつもりでいるんだ。無理だよ、君みたいな弱い人間には。だから諦めて大人しく余に殺されろ」

 俺の身体はどんどん怒り呑まれていき、そして完全に呑まれた。

 「死ねよ」

 俺が小さな声で呟くと、身体中に凄まじいほどの力が流れた。

 そして俺は唐突にあることが思い浮かんだ。

 今なら……どんな魔獣の力でも使える……。

 俺は怒りで支配される頭の中で、様々な魔獣の姿を思い浮かべた。

 すると俺の体は今までからは考えられないほどのスピードで変化していった。

 「なんだ……お前……その姿は……」
 
 ナーシャは俺が人間とは全く異なる姿に変化したことに驚きを隠せないようだった。

 俺は、両腕が雷光虎の腕に変化し、背中からは死神鳥の翼、腰からは岩砕龍ロックドラゴンの太い尻尾が生えた状態に変化した。

 「早くいかねぇとお前らも巻き込んじまうぞ」

 俺の後ろでただ呆然と立っていたエンファに声をかけ、ここから去るように促した。

 「リウス……死ぬなよ」

 俺の背後からそう告げると、急いで魔獣に飛び乗り大声で周りのファイアーウルフ達に声をかけた。

 「俺が獣人の国まで案内する!だから俺の後をついて来てくれ!」

 ありがとう、エンファ。これで何も気にせず戦える。

 「リウス……!死なないでね!ミミィ、待ってるから!」

 俺がこんな姿になっても怖がらずに好いてくれるなんて嬉しいな。てっきり怖がって似げてしまうと思っていたんだがな……。

 俺は後ろを振り返り、ミミィに向けて腕を伸ばし親指を立てた。

 「大丈夫。俺は死なない。俺もまだしたいこと沢山あるからさ」

 俺はミミィに返事をして、ナーシャの方へ目線をやった。

 (おいリウス。一人で大丈夫か?)

 その声は、フェロックか?でもなんで……ああ、そうか。もしかしたら俺はマジックストーンの力を完全にではないが、使いこなせるようになったのかも知れないな。

 (ああ。一人で問題ない。ミミィ達のこと頼んだぞ)

 (勿論だ)

 「出発するぞ!!!」

 エンファの掛け声とともに、エンファの仲間達をはじめ、ファイアーウルフたちは全速力で走っていった。

 「ちっ!逃すか!」

 ナーシャは俺から目線を外すと、離れて行くエンファ達を追いかけようと足を踏み込んだ。

 「させねぇよ」

 俺は素早く地面を踏み込み、一瞬にしてナーシャの目の前に移動した。
 
 「速い……!」

 魔獣の力を宿せば宿すほど自身の力は増していく。そして今俺は3種類の魔獣の力を宿している。つまり今の俺の力は……

 「お前よりは絶対に強いぞ」

 そして、大量の電気を帯びる太い腕をナーシャのみぞおちに打ち込んだ。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】魔眼持ちの伯爵令嬢〜2度目のチャンスは好きにやる〜

ロシキ
ファンタジー
魔眼、それは人が魔法を使うために絶的に必要であるが、1万人の人間が居て1人か2人が得られれば良い方という貴重な物 そんな魔眼の最上級の強さの物を持った令嬢は、家族に魔眼を奪い取られ、挙句の果てに処刑台で処刑された 筈だった ※どこまで書ける分からないので、ひとまず長編予定ですが、区切りの良いところで終わる可能性あり ローニャの年齢を5歳から12 歳に引き上げます。 突然の変更になり、申し訳ありません。 ※1章(王国編)(1話〜47話) ※2章(対魔獣戦闘編)(48話〜82話) ※3章前編(『エンドシート学園』編)(83話〜111話)    ※3章後編(『終わり』編)(112話〜145話) ※番外編『王国学園』編(1話〜)

【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。  ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。  その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。  無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。  手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。  屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。 【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】  だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...