上 下
36 / 54

36話 最悪かつ最凶

しおりを挟む
 悪魔、という言葉にグラ達はさっきまでの表情とは打って変わり、それを見れば危機的状況に陥っているという事だけは分かる。

 「なあ、悪魔ってそれほど大したことなくないか?」
 「わたくしも何度か悪魔を殺したことありますが、問題なく倒せましたよ」

 俺と同様、グラ達の言動に疑問を持ちシェラレイはそう口を開いた。
 
 俺も悪魔の討伐には向かったことはあるが、全く大したことはなかった。
 並の冒険者が1人だけなら危険かもしれないが、3人いれば誰も犠牲を出さずに討伐出来るレベルだ。
 それなのに、どうしてグラ達はこんなに焦っているんだ?

 「この人間界に来ていたのは全て下級悪魔だ。だが、上級悪魔は違う。上級悪魔は神の中でも上位に立つルーレルと同等、もしくはそれ以上の力を持つ」
 「それならまだマシだよ。でも、はもしかしたら……」
 「ああ……あいつが復活していたがったら、グラでも抑え切れるかどうか……」

 え……、嘘だろ……?
 グラが抑え切れるかどうか……そんなのどうしろっていうんだよ……。
 あの反射の力が使えれるようになれば、そいつと戦えるかもしれないが、まだ発動条件も分からない上に特訓をする余裕もない。
 つまり俺は、グラと同等の力を持つヤツを相手にできないということだ。

 「それにしてもどうしてだ。上位悪魔は全て封印していたはずだ。もしかして……下級悪魔だけで攻めて来ようとしているのか……?」
 「それはないよ」

 グラの疑問をヘルラレンはそう否定すると、話を聞いていたジューザラスは怪訝な表情を浮かべた。

 「なんでそう言い切れんだよ」
 「だって普通に考えてよ。下級悪魔なんて冒険者にでも殺されるんだよ? それが分かっていて攻めてくるなんて、ただの馬鹿でしかないよ」
 「あいつらは馬鹿だろうが」
 「確かにそうだけど、それをする目的が分からない。それに……」

 ヘルラレンはそこで黙って、決心したような顔で前を向いた。

 「私見たんだ。フネアスの魂を持って生きている人間をね」
 「なんだと!?」

 予想外の発言にジューザラスは目を思い切り見開いた。

 フネアスって確か闇の神だったよな。
 シーミナと一緒に消滅したって聞いたけど……でもなんでそれが悪魔の封印が解かれたことに関係があるんだ?

 「あいつを復活させるには、上級悪魔10体と同等の闇の力が必要だよね。だけど、上級悪魔も一緒に封印した。だけどね、上級悪魔10体の力を1人で持っている者がいる」
 「それってつまり……」
 「そう。フネアスの魂なら余裕で上級悪魔10体を超える」

 つまりフネアスの魂を使って、グラ達が封印した悪魔を復活させたってことか。
 でもそれが事実かどうかはまだ分からないよな。

 ヘルラレンは否定したが、本当に下級悪魔だけで攻めてきたのかもしれないし、グラ達が考えていること以外の方法で復活させたのかもしれない。
 それにしてもフネアスの魂か……。
 一体誰に生まれ変わったんだろうか。
 
 「そういえばよぉ、あいつってどこに封印したんだ?」
 「そんなものとっくに忘れた。上級悪魔諸共封印したのは覚えているが、どこに封印したのかは覚えていない。こんなことになると思ってなかったからな」
 「あのー……」

 俺の遠慮気味の声に、話し込んでいた全員の視線が俺に移り変わった。

 「さっきから話に出てるあ・い・つ・って誰?」

 下級悪魔は見たことあるし、上級悪魔はなんとなく想像はできるが、あいつって呼ばれている奴は中々想像することができない。
 だけど俺の中では、悪魔の頂点に立っている者だと予想している。

 「ああ、そう言えば言ってなかったな。あいつっていうのは悪魔を統べる者、グレデラ・フィンガー。グレデラは最悪かつ最凶の悪魔だ」
 
 グレデラ・フィンガー……グラと同等の力を持つ悪魔か。
 もし本当にそいつが復活したんだったら、結構本気でやばいかもしれないな。
 この場にグラがいなかったらと考えるとゾッとする。

 「とにかくだ。今は判らないことが多い。恐らく、悪魔達がここに来るのも時間の問題だろう。だから、今早急にすべき事は情報収集だ。まずは、フネアスの生まれ変わりかもしれない人間に会ってみよう」
 「情報収集とかめんどくせぇなぁ……」
 「ヘルラレン、フネアスの魂を持つ人間の顔を教えてくれないか」
 「はーい。確かこんな顔だったよ」

 そう言って空中に手を伸ばすと、出現した水を自由に操り人の顔を作り上げていった。
 輪郭、耳、鼻、口、目、そして髪。
 それらが構成されて作り上げられた顔は――。

 「え……?」
 
 俺が最も会いたい人物、ハーシュの顔そのものだった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

パーティから追放された雑用係、ガチャで『商才』に目覚め、金の力で『カンストメンバー』を雇って元パーティに復讐します!

yonechanish
ファンタジー
雑用係のケンタは、魔王討伐パーティから追放された。 平民に落とされたケンタは復讐を誓う。 「俺を貶めたメンバー達を最底辺に落としてやる」 だが、能力も何もない。 途方に暮れたケンタにある光り輝く『ガチャ』が現れた。 そのガチャを引いたことで彼は『商才』に目覚める。 復讐の旅が始まった!

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

無職の俺は追放されてもへっちゃらカタログスペック100%があるから ~現実を強引に俺の真実で塗り替える~

喰寝丸太
ファンタジー
カタログスペックを信じたばかりに遅刻した波久礼(はぐれ)司郎は教室に入るなり魔王討伐の為に異世界召喚された。 クラス全員分あるはずの職業が無い。 職の代わりにカタログスペック100%スキルを貰い異世界に旅立つと、送られた先のお城では無職の為、詐欺師に間違われ追い出された。 後で分かったのだがそれは勇者の陰謀らしい。 そして、カタログスペック100%の真価は色々な場面で発揮された。 表示性能が100%になるって事は誇大広告、空想物語、神話、詐欺のうたい文句なんでもスキルでその通りだ。 スキルがあれば勇者に仕返ししたり魔王軍撃退も余裕さ。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しています。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

処理中です...