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33話 違和感の正体

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 またか……。
 これは一体どういうこと……。

 ヘルラレンはと全く同じように感じ取り、少し頭が混乱していた。
 
 どうして……どうしてライの中から反射の神シーミナの気配がするんだ……。
 この前はふと見かけた女性から闇の神フネアスの気配がしたが、今度はライから反射の神の気配……。
 
 ヘルラレンは考えれば考えるほど頭が混乱した。
 
 もしかしたら、私がただ勘違いをしているだけなのかもしれない。
 だけど、この感覚を勘違いで済ましていいのだろうか。
 確かに感じる反射の神シーミナの気配。
 なぜか今ライを見ていると、生きていた頃のシーミナを見ている気がしてならない。
 誰か……他に誰か気付いていないのか……。

 考えるのを一旦止めて、皆の顔を見渡しているが、誰1人として気づいているという感じではない。
 グラティオラス達は呆然としているが、あれはシェラレイの話の方でシーミナの気配を感じ取っているわけではないはず。
 私は……どうすればいい……。
 いっその事話してしまうか。

 ヘルラレンは少しだけ口を開きかけ、声を発する寸前で息を止めた。

 それは……やっぱり出来ない……。
 グラティオラスはシーミナの事を可愛がっていたのに、最終的にはフネアス諸共消滅してしまった。
 その責任を誰よりも感じているのは、グラティオラス本人だろう。
 どうすることも出来ずに呆然と立ち尽くし、不安から絶望に変わった時のグラティオラスの顔は、今でも鮮明に覚えている。

 やっぱりこの事は誰にも言わないでおこう。
 その方が誰も傷付かな――。

 「どうした?」
 「え……?」
 「なんか顔色が悪そうだけど、具合悪いか?」
 
 どうして……ここにいるの……?
 さっきまでは、気配を感じるだけだったのに……。
 今ははっきりと、私の目に映っている。

 「シーミナ……」
 「え?」
 
 ヘルラレンの口から、無意識のうちにその名がこぼれ落ちてしまった。
 
 しまった……!
 どうして私はそんな事を言って……いや、別にいいか……。
 だって、私は嘘なんてついていない。
 なぜなら、実際に私の目の前には、反射の神シーミナがいるのだから。





 シーミナ……シーミナ……どこかで聞いた名前だ……。
 えっと……思い出した!
 確か反射の神の名前だったはずだ。
 でも、なんでこのタイミングでヘルラレンはその名前を言ったんだ?
 それも俺に向かって。

 「ヘルラレン」
 
 グラは真面目な表情でヘルラレンに向き直ると、目を真っ直ぐと見つめて名前を呼んだ。
 
 「どうしてライをシーミナと呼んだのだ?」
 「言い間違えってわけでもねぇよなぁ」
 
 どうやらグラ達は、ただのいい間違えという可能性を考えていないらしい。
 
 「どういう意味で、ライをシーミナ呼んだのだ?」
 
 そのまましばらく沈黙が続き、ようやくシーミナは口を開いた。
 
 「意味なんて別にないよ。ただ……ライがシーミナに見えたんだよ」

 俺は当然ながらシーミナの顔を知らない。
 そんなに俺と顔が似ているのか?
 でもそんなことグラは一言も言ってなかったしな。
 
 「ライがシーミナに見えただと? それは一体どういう事だ」
 「そのままの意味だよ。でも、私はあれが見間違いだとは思わない。だって、シーミナが……違うな。シーミナのがここにあるのだから」

 ヘルラレンは迷う事なくそう言い放った。
 他でもない、俺の目を見つめながら。

 
 
 
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