上 下
25 / 54

25話 配下になる最強竜

しおりを挟む
 「配下に加えて欲しい?」
 「はい。私は長い間強者を探しておりました。そして、ようやくあなた方を見つけたのです」
 「そう言われてもなぁ……」

 急に配下にしてくれって言われても、別に欲しいわけでもないし……。
 それよりも、配下にしたとしても、こんなに大きかったら連れていけないんだよな。

 意見を求めるためにルーレルに視線を移すと、目をキラキラと輝かせて飛青竜を見上げていた。

 「ルーレル?」
 「飛青竜……ペットにしたい……」
 「ペット!?」
 「それはいいですね! 是非私をルーレル様達のペットにして下さい!」

 ルーレルは何を言い出してるんだよ!
 それに卵は!?
 卵のために、このクエスト受けたんじゃないのかよ!

 「もう卵はいい……。飛青竜の方がいい……」
 「えぇ……」
 「有難うございます! 必ずルーレル様達に永遠の忠誠を誓います!」

 どうして話が勝手に進んでるんだ。
 俺は一言も良いって……もういいや!
 何か問題が起こった時は、その時はその時だ!

 「俺の名前はライって言うんだけど、お前に名前ってあるのか?」
 「いえ、私には名などございません」
 「それは困るな……」
 「シェラレイ……貴方の名前はシェラレイ……」
 「シェラレイ……! 私に名前を付けて頂き、有難うございます!」

 ハハハ、どんどん決まっていくよ。
 俺がこの場にいる意味なくないか? 

 まぁ……それはさておき、あとは大きさだな。
 こんな大きさで町を歩くことは出来ないし、騎士達に見つかったら攻撃されてしまう。
 だから出来る限り、町中にいるようなペットと、同じ大きさにならなければいけない。

 「シェラレイって体の大きさの調節は出来るか?」
 「はい。どのくらいのサイズでしょうか?」
 「えっと、俺の両手に収まるくらいの大きさなんだが」
 「分かりました」

 シェラレイはそう返事をすると、目を瞑って翼を広げた。
 直後、巨大な鎧を纏う体は音を立てながら縮んでいき、手のひらサイズになってしまった。

 「おいで……」

 ルーレルは小さくなったシェラレイに手を伸ばすと、腕をつたって歩いて肩に乗った。

 この姿を見たら誰一人として、あんなに凶暴だった飛青竜とは思わないだろうな。

 肩に乗ったシェラレイは、ルーレルの頭に飛び乗ったりして戯れて遊んでいる。

 「じゃあ……帰るか」

 まさか、こんな展開になるとはな。





 扉を開けて外に出ると、そこは人で溢れかえっていた。
 その中には、肩や頭に小さな魔獣を乗せて散歩している者もいた。
 
 その中の1人が俺たちだ。

 ルーレルとシェラレイはすっかり仲良くなり、ずっと戯れている。

 たった今クエストの完了を伝えて、報酬を貰ってきたところだが、今回の報酬金額は47万セリン。
 S級だったこともあり、高額な金額になっていた。

 「報酬も受け取ったことだし、家に帰るか」
 「うん……」

 俺達は会話をしながらしばらく歩いていると、もう見慣れた屋根が見えてきた。

 「ここがライ様達の家ですか?」
 「そうだ」
 「大きいですね」
 「シェラレイも、この家と同じくらい大きいけどな」
 
 俺はドアノブに手を当てて、扉を開けた。

 「テメェらどこ行ってたんだよ」
 「特訓行くって伝えたじゃん」
 「そうだったな。それより、このパンちょっとかてぇ……なんだその鳥?」
 
 ジューザラスは、ルーレルの肩に乗っているシェラレイを見て目を丸くした。
 自室から出てきたグラとヘルラレンも、全く同じ反応をしている。
 
 俺もシェラレイを見ると、少しだけ目がつり上がっている。
 鳥と言われたことが頭に来たらしい。

 「私は鳥ではありません。空の支配者である飛青竜のシェラレイです」
 「飛青竜? 鳥じゃねぇか」
 「私を知らないのですか? いいでしょう。教えて差し上げます」

 シェラレイはルーレルの肩から飛び立つと、ジューザラスに向かって一直線に飛んでいった。
 そして頭に着地すると、鋭い爪で踏みつけ始めた。

 「テメェ! 何しやがるんだ!」
 「貴方が鳥と言ったのが悪いのです」
 「ククク……! いい度胸じゃねぇか! 焼き鳥にして食ってやるよ!」

 ジューザラスは椅子から立ち上がって、シェラレイを掴み取ろうとするが、上手く逃げ回って掴むことが出来ないようだ。

 「これはまた一層……賑やかになりそうだな」
 「だねぇ」

 ジューザラスとシェラレイのやり取りを、俺たち4人は温かい目で見守ったのだった。

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!! 男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。 そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢! そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。 どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの? ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます! しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、 物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど…… 2022.4.7 予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン) 《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます! とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。 ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。 よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

今日から悪役令嬢になります!~私が溺愛されてどうすんだ!

ユウ
恋愛
姉の婚約破棄により、公爵家だった我が家は衰退の一途をたどり。 嫉妬に狂った姉は壊れて行った。 世間では悪役令嬢として噂を流されてしまう。 どうしてこうなってしまったのだろうか。 姉はただ愛を望んだだけだったのに、そんなことを想いながらマリーは目を覚ますと体が小さくなっていた。 二度目の人生を終えて新たな転生を果たしたと思ったら何故か再び転生して、悪役令嬢の妹として転生するのだが…何故か姉のポジションになり私は誓った。 こうなったら私が悪役令嬢になって私が姉と家族を守ろうと誓ったが… 悪役令嬢ってどうしたらいいんだけっけ? 間違った方向に努力を続けたら、冷たい婚約者は何故か優しく微笑んで来たり、ライバル令嬢も何故か優しくしてくれる。 「あれ?おかしくね?」 自称悪役令嬢の奮闘劇が始まる!

婚約者に裏切られてヤバい復讐しました〜彼の両親と浮気現場に突撃したら彼は心が壊れて病院で療養生活することに

window
恋愛
私シャルロット伯爵令嬢と彼ノア伯爵令息は婚約していました。 でも最近彼は、私に対して冷たい態度で怒るようになった。前はそんなことなかったのに。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

処理中です...