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20話 魔獣の飼い方

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 「ただいまー……って、誰もいないじゃん」
 「まだ寝てる……?」

 一応昼食を買って帰って来たが、誰一人として起きて来ていなかった。
 
 もうすぐ昼になるのに……。
 食材が入っている袋を机の上に置いて、自室に戻ろうとするとルーレルに服を軽く引っ張られた。

 「どうした?」

 俺の顔を下から見上げながら、ジッと俺の目を見てくる。
 何かしてほしいのか?

 「あの……」

 そんなに言いにくい事なのか、ルーレルはもじもじしながら中々話を切り出さずにいた。
 
 もしかして、元居た場所に戻してほしいとかじゃないよな……。
 呼び出しておいたのはこっちだが、俺も戻してあげることが出来ない。
 本当に戻して欲しい、とか言われたらどうしよう。

 しかし、そんな俺の不安は不必要だった。

 「ペットが……飼いたい……」
 「ペット……?」

 予想外なお願いに、変な声で返答してしまった。
 
 まさかそんなお願いだとな……。
 もっと大きな願いが来ると思っていたから、ちょっと安心した。

 「ダメ……?」
 
 ルーレルは不安げな表情を浮かべながら、俺の顔を見上げてくる。
 ルーレルには俺の特訓に付き合ってもらって、その他にも色々してもらっている。
 だから、ダメだなんて言うわけがない。

 「別にいいぞ。今から行くか?」
 「うん……!」

 普段は、あまり笑顔を浮かべることがないルーレルだが、今は目をキラキラ輝かせながら眩しいほどの笑みを浮かべた。






 ペットを飼うには2種類の方法があり、ある程度大きくなった魔獣を飼うか、卵を買って自分で孵化させて育てるかだ。
 それに魔獣の種類も多く、地獣、鳥獣、水獣、神獣、竜種などがある。
 卵から育てる場合、どのような外見で生まれてくるか分からないため、ある程度大きくなった魔獣を飼う人が多い。
 それに、神獣や竜種は入手が困難なこともあり、値段が結構高い。

 「どうする?」

 目の前に並ぶ魔獣や卵を見ながら、ルーレルは考え込んでいる。
 
 さっきから卵ばかり見てるな。
 もしかして、卵から育てるつもりなのだろうか。
 でも、卵って育てるの難しいんだよな。
 最悪孵化しない場合もあるし。

 「これがいい?」
 「ん? それは……」

 ルーレルは卵から育てるようで、緑の波のような模様が入った卵を指さしていた。
 ルーレルが卵から育てようが何も文句はない。
 ルーレルなら上手く育てることが出来ると思うからな。

 だが、問題が新しく発生してしまった。

 「竜種……」
 「ダメ……?」

 俺の反応が予想外だったのか、不安そうな表情をまた向けて来た。
 ここはいいよと言ってやりたいが……金銭的な問題がなぁ……。
 まだ家具も買わないといけないし。

 「ダメじゃないけど……ちょっと金が……」

 ルーレルは、少し悲しそうな表情を浮かべると卵を見つめた。

 「でも仕方ない……。お金は……どうしようもないから……。またいつか……飼えればいい……」
 「ルーレル……」

 そんな悲しそうな顔で言われたら「そうだね、またいつか飼おう」なんて言えるわけがないじゃないか。
 それに、方法がないわけではない。

 「難易度の高いクエストを達成したら、その卵を買えるかもしれない」
 「え……」

 俯いていた顔が上がり、ルーレルの左右で色が違う瞳と目があった。
 
 「行くか?」
 「うん……! 行く……!」

 俺の提案に迷うことなく頷くと、目に輝きが戻った。
 
 そして俺は、もう一度S級クエストを受けることとなった。

 
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