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12話 神って強すぎだろ

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 消えてしまいそうな声で喋るのは、ジューザラスの部下のルーレルだ。
 ジューザラスの部下とかいうから、もっと乱暴で破壊するの大好きっていう感じかと思ったが、どうやらそんなことはないらしい。

 「俺はライ。これからよろしく」
 「ライ……」

 俺はルーレルに向けて手を出した。
 最初はジューザラスを見て戸惑っていたが、ゆっくりと俺の手に近づいて握ってくれた。

 「よろしく……」

 本当にルーレルの剣術は凄いのだろうか。
 グリールを瞬殺したジューザラスが認めるってことは、本当に実力があるんだろうけど、ちょっと疑ってしまう。

 俺達の会話で完全に目を覚したのか、グラとヘルラレンは目を擦りながらベッドの上で体を起こした。

 「あれ? ルーレルじゃん久しぶりー」

 ヘルラレンはベッドから飛び降りると、ルーレルに走って抱きついた。
 
 「ヘルラレン様……。お久しぶりです」
 
 ルーレルの緊張していた顔が、抱きつかれたことによって少しだけほぐれたような気がする。
 でも、久しぶりか。
 一体どれだけ会ってないんだろう。

 「えっと……60年ぶり……ですかね?」
 「違うよ75年ぶりだよー」

 どうやら俺とは、久しぶりの長さが違うらしい。

 グラはまだベッドから降りることなく、外を見ながらぼーっとしている。
 やっぱり起こさない方が良かったかもしれない。

 「おいテメェら。早く行くぞ」
 「どこに……?」
 「そんなの決まってらぁ。ライの修行だ」

 




 「何で余まで……」
 「何で私まで……」
 「うるせぇ! 文句言ってんじゃねぇ! 誰のおかげで金が手に入ったと思ってんだぁ!」
 「たしかにそうだが」

 俺たちは国を出て、見渡しの良い草原に来ていた。

 どうやらここで、特訓をしてくれるらしい。
 
 「テメェに剣術を教える必要があると思ってルーレルを呼んだが、勇者ってことは剣術は悪くねぇんだろ?」
 「多分……」
 「そういうことならなぁ、強くなりてぇなら強い相手と殺りあうしかねぇ」
 「え? てことは……」
 「人間と神の対決だ」

 おいおいマジかよ。
 剣術を教えてもらうだけかと思ってたから、ちょっと足がすくんでしまう。
 あの森の支配者を殺すことのできる神達と、戦わなければいけないなんて……。
 勝てる確率なんて無いに等しい。
 こんなことやったってぼろぼろになるだけ――

 「おい。テメェは強ぇ人間になりてぇんじゃなかったのかよ」

 そうだ……。
 何をまた逃げようとしてるんだ……。
 強い人間になってハーシュに感謝を伝えるんじゃなかったのかよ!

 俺は腰に差してあった剣を抜いて、ジューザラス達に向かって構えた。

 「よろしくお願いします!」
 「良いぜぇその顔! ちなみにだが、魔法を使うのも良いからなぁ!」







 俺の前にルーレルが立ち、もうすぐ特訓が始まろうとしている。
 だが、ルーレルは剣を持っていない。

 「剣は?」
 「今から創る……」

 ルーレルは手を横に出すと、そこに細かい金の光が集まっていった。
 その光は止まることなく集まっていき、そして一本の剣を創り上げた。
 ルーレルが持つ剣は金に輝き、まるで聖剣のようだ。

 「いくよ……」
 「ああ」

 神にどう対処するか。
 恐らく、最初は正面からそのまま来るだろうから、その攻撃を受け止める。
 その後、魔法を使って体勢を崩した後に背後に回って決着をつける。
 これで行こう。


 
 俺が考えていた通りに、ルーレルは風の如く俺の正面に移動してくると、下から右斜めに斬り裂く構えをし、その剣を受け止めようと視線を少しだけ下にもっていった。

 そして、俺の剣とルーレルの剣がぶつかるその時、
背後から突然気配を感じた。
 
 考えている暇もなく、咄嗟に背後に首を回すとそこには前方にいたはずのルーレルがいた。
 
 「気付かれた……」
 「これが神か!」

 俺に向けて横に振られる剣を何とか受け止める。

 「破壊の魔法ゾレスーラ!」

 俺がそう唱えた瞬間、ルーレルに向かって魔法が放たれる。
 だが、この至近距離で放った魔法に反応したルーレルは、俺との間に薄い光の壁を張った。
 
 これは破壊の魔法だから、そんな薄い壁なんて破壊できるぞ!
 しかし、その考えは甘かった。

 ルーレルに向かっていった魔法は、その光の壁にぶつかると、霧のように粉々になり空中に散っていた。

 「嘘だろ……」
 「こっちに集中……」

 俺の意識が魔法に向いてしまったことで、少しだけ押されてしまった。
 だけど負けたわけじゃない。
 ここから押し返して、それで――

 「……!」

 俺はルーレルに押された。
 だが、さっきと違うのはルーレルが右手だけで俺を押していたということ。

 左手はさっきの光の壁に触れている。
 一体何をする気だ……!

 「剣……」

 ルーレルがそう静かに呟いた直後、その壁は一瞬にして剣に変化した。
 その剣を握ると、剣を押し返すのに必死な俺の首に当てられ、そこで止まった。

 「私の勝ち……」
 
 ルーレルは剣を空中に投げて、その剣は地面に落ちることなく空中に散っていく。
 俺は体勢を戻す事ができずに、地面に座り込んだ。

 はは……。
 やばいな……。
 ドラウロ達とは比べる事ができないほど強かった。
 それに、まだ手加減をしている様子だった。

 「これが神の強さか……」

 俺が神と対等に戦えるようになるには、まだまだかかりそうだ。
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