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第五章 龍二の百鬼夜行
新たな仲間
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ひとまず龍二は話を戻す。
「ちょっと待て。俺は百鬼夜行の話なんてしてないぞ」
「は? 百鬼夜行の主の息子だって言う、お前が仲間になれって言ったんだから、その意味は一つだろ」
「んなっ!?」
龍二は衝撃を受けたようにのけ反る。
どうやら盛大な勘違いをされてしまったようだ。
修羅の頭の中では、『仲間=百鬼夜行』というように変換されてしまっている。
龍二は頭を抱えた。
「……待ってください」
だがそこで救世主が現れた。
口を挟んだのは桃華だ。
修羅は彼女へ目を向けると睨みつけた。
「嵐堂か、なんか文句あんのか?」
「大ありです! 龍二さんの手助けをするだけならまだしも、百鬼夜行だなんて、私は聞いてません!」
「そりゃお前には言ってないからな」
「とにかく、私はまだあなたを龍二さんの側に置くべきとは認めていませんから!」
龍二はさらに頭を抱えていた。
桃華の言っていることがよく分からない。
龍二は百鬼夜行の話は勘違いだと言いたいのに、論点が微妙にズレている。
しかし修羅も、売られた喧嘩は買う主義なので、眉をひくひくと怒りに震わせていた。
「武戎くん、もう一度勝負です! もしあなたが勝てば、龍二さんの百鬼夜行入りを認めます。私が勝てば、私が龍二さんの百鬼夜行に加わります!」
龍二はずっこけそうになった。
雪姫はのんきに「人間を龍の臣に入れるのはちょっと……」なんてことを言っている。
しかし武戎は頬を吊り上げて床に置いていた刀をとった。
「上等だ」
「この間のようにはいきませんよ」
桃華は不敵な笑みを浮かべ、形代を握る。
銀狼を出す気だ。
一触即発の雰囲気に、障子に現れた目々連も不安そうに見守っている。
龍二が慌てて止めようと足を踏み出すが、鈴が先に声を上げた。
「二人とも、ダメだよ!」
彼女は小さな体で桃華と修羅の間に割って入る。
「り、鈴ちゃん?」
「喧嘩しちゃダメ!」
いつもと違い真剣な表情で言い放つ彼女に、桃華は「うっ」と怯む。
すると、鈴は修羅のほうを振り向き、彼にも強く言った。
「修くんもダメ!」
龍二は修羅の気性の荒さを知っているため、ハラハラするが、彼の反応は意外なものだった。
「すまねぇ、鈴先輩……」
なんと、しょんぼりと肩を落とし謝ったのだ。
雪姫のことを「姉さん」と呼んでいたことといい、いつの間にか百鬼夜行内の力関係ができていたようだ。
雰囲気的に、龍二も百鬼夜行の話は修羅の勘違いだと言いずらくなっていた。
雪姫が困ったように眉尻を下げ、龍二へ「どうしましょう?」と目で訴えてくる。目々連も潤んだ瞳を向けて来て「止められるのは龍二様しかいない」と言っているようだ。
「……はぁ、分かったよ」
場を収束させるため、龍二はため息を吐いて告げる。
「……修羅、よろしく頼むよ」
「……おぅ」
その瞬間、武戎修羅は龍二の百鬼夜行・龍の臣に加わったのだった。
「――百鬼夜行か……」
龍二は広い居間に一人、ポツンとあぐらをかき唸っていた。
修羅と鈴は掃除の後片付けを、桃華は雪姫の手伝いをしに厨房へ行っている。
やることのない龍二は、先ほどのやりとりから、百鬼夜行について考えていた。
今の龍二に父の築いた龍の臣を継ぐ資格があるのか、そもそも陰陽師を目指す者が百鬼夜行を従えるというのはアリなのだろうかなど。
もし一歩間違えば、先日時雨が言っていたように陰陽庁から追放されかねない。
だからといって、支えてくれる雪姫や鈴たちをないがしろにするわけにもいかない。
「はぁ……どうしたもんか」
肩を落としてため息を吐き、畳の上に大の字になって寝転がった。
一番の問題は意志だ。
なんとしても、父の百鬼夜行を継ぐのだという強い意志があれば、迷うことなく信じた道を突き進むというのに。自分に自信がないせいで迷いを断ち切れない。
そうして答えが出せず寝転がっていると、外から声をかけられた。
「ちょっと待て。俺は百鬼夜行の話なんてしてないぞ」
「は? 百鬼夜行の主の息子だって言う、お前が仲間になれって言ったんだから、その意味は一つだろ」
「んなっ!?」
龍二は衝撃を受けたようにのけ反る。
どうやら盛大な勘違いをされてしまったようだ。
修羅の頭の中では、『仲間=百鬼夜行』というように変換されてしまっている。
龍二は頭を抱えた。
「……待ってください」
だがそこで救世主が現れた。
口を挟んだのは桃華だ。
修羅は彼女へ目を向けると睨みつけた。
「嵐堂か、なんか文句あんのか?」
「大ありです! 龍二さんの手助けをするだけならまだしも、百鬼夜行だなんて、私は聞いてません!」
「そりゃお前には言ってないからな」
「とにかく、私はまだあなたを龍二さんの側に置くべきとは認めていませんから!」
龍二はさらに頭を抱えていた。
桃華の言っていることがよく分からない。
龍二は百鬼夜行の話は勘違いだと言いたいのに、論点が微妙にズレている。
しかし修羅も、売られた喧嘩は買う主義なので、眉をひくひくと怒りに震わせていた。
「武戎くん、もう一度勝負です! もしあなたが勝てば、龍二さんの百鬼夜行入りを認めます。私が勝てば、私が龍二さんの百鬼夜行に加わります!」
龍二はずっこけそうになった。
雪姫はのんきに「人間を龍の臣に入れるのはちょっと……」なんてことを言っている。
しかし武戎は頬を吊り上げて床に置いていた刀をとった。
「上等だ」
「この間のようにはいきませんよ」
桃華は不敵な笑みを浮かべ、形代を握る。
銀狼を出す気だ。
一触即発の雰囲気に、障子に現れた目々連も不安そうに見守っている。
龍二が慌てて止めようと足を踏み出すが、鈴が先に声を上げた。
「二人とも、ダメだよ!」
彼女は小さな体で桃華と修羅の間に割って入る。
「り、鈴ちゃん?」
「喧嘩しちゃダメ!」
いつもと違い真剣な表情で言い放つ彼女に、桃華は「うっ」と怯む。
すると、鈴は修羅のほうを振り向き、彼にも強く言った。
「修くんもダメ!」
龍二は修羅の気性の荒さを知っているため、ハラハラするが、彼の反応は意外なものだった。
「すまねぇ、鈴先輩……」
なんと、しょんぼりと肩を落とし謝ったのだ。
雪姫のことを「姉さん」と呼んでいたことといい、いつの間にか百鬼夜行内の力関係ができていたようだ。
雰囲気的に、龍二も百鬼夜行の話は修羅の勘違いだと言いずらくなっていた。
雪姫が困ったように眉尻を下げ、龍二へ「どうしましょう?」と目で訴えてくる。目々連も潤んだ瞳を向けて来て「止められるのは龍二様しかいない」と言っているようだ。
「……はぁ、分かったよ」
場を収束させるため、龍二はため息を吐いて告げる。
「……修羅、よろしく頼むよ」
「……おぅ」
その瞬間、武戎修羅は龍二の百鬼夜行・龍の臣に加わったのだった。
「――百鬼夜行か……」
龍二は広い居間に一人、ポツンとあぐらをかき唸っていた。
修羅と鈴は掃除の後片付けを、桃華は雪姫の手伝いをしに厨房へ行っている。
やることのない龍二は、先ほどのやりとりから、百鬼夜行について考えていた。
今の龍二に父の築いた龍の臣を継ぐ資格があるのか、そもそも陰陽師を目指す者が百鬼夜行を従えるというのはアリなのだろうかなど。
もし一歩間違えば、先日時雨が言っていたように陰陽庁から追放されかねない。
だからといって、支えてくれる雪姫や鈴たちをないがしろにするわけにもいかない。
「はぁ……どうしたもんか」
肩を落としてため息を吐き、畳の上に大の字になって寝転がった。
一番の問題は意志だ。
なんとしても、父の百鬼夜行を継ぐのだという強い意志があれば、迷うことなく信じた道を突き進むというのに。自分に自信がないせいで迷いを断ち切れない。
そうして答えが出せず寝転がっていると、外から声をかけられた。
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