219 / 251
第十三章 真実を知る者
神具の力
しおりを挟む
「――これでもダメなのか……」
レーザーの照射が終わっても、光の障壁にはヒビ一つ入っていなかった。
シュウゴの表情に絶望の色が浮かぶ。
トライデントアイの最大出力をもってしても通じないとなると、なすすべがない。
それでも攻撃の手を緩めず、ニアがサタンの背後から襲い掛かり、シュウゴも遅れて続いた。
隼の充電はとっくに完了しているが、これを開放したところで状況は変わらないだろう。
(――お兄様危ない!)
必死に頭を回転させていたため、大きな隙ができたことにシュウゴは気付けなかった。
(しまっ……)
シュウゴが視界に意識を戻したときには、もう胸の前までティルヴィングの切っ先が迫っていた。
動きがスローモーションに見えた。
サタンの背後から、ニアが慌てて右肩へ爪を振り下ろそうとしている。
シュウゴもそうだが、その動作によって彼女も隙だらけだ。
「……バカが」
サタンは一瞬酷薄な笑みを浮かべると、シュウゴへ突きを繰り出していた体勢から瞬時に一回転。
真後ろにいたニアを薙ぎ払った。
「カハッ!」
ティルヴィングの黒い刀身がニアの胸を一文字に斬り裂き、鮮血が飛び散った。ニアは苦痛に顔を歪めるが、それでもヒュドラの血の生命力は並ではない。
だがサタンもそれだけで終わらず、左手に漆黒の炎を溜めていた。
至近距離でニアへ放ち、轟音と共に吹き飛ばされた彼女は壁へ叩きつけられた。ニアはその衝撃で気を失い、力なく床へと落下。同時に形態変化も解けていた。
「ニアぁっ!」
シュウゴが顔を歪め必死に叫ぶ。
サタンは何事もなくシュウゴへ振り向くと、神経を逆撫でするような薄ら笑いを浮かべた。
「ふんっ、貴様でも囮程度の役には立ったか」
「くっそぉぉぉっ!」
怒りに我を忘れたシュウゴは、帯電していた稲妻を開放する。
瞬時に間合いを詰める。
そして、ただ力任せに雷纏う斬撃を叩きつけ、連撃を繰り出した。
サタンは余裕に頬を緩め、軽々と稲妻の連撃をいなしていく。
「まだそんな力を残していたのか。だが、遅い!」
サタンは最小限の動作で連撃をいなした後、冷静に隙を見極め魔剣の切っ先を突き出す。
弾丸のような鋭い突きはアイスシールドで防ぐが、ただの一突きで氷の障壁は破壊され突き飛ばされる。
「ぐぅっ!」
勢いよく吹き飛び距離を離されるが、なんとかバーニア噴射で留まる。
あまり破壊力に苛立ちを募らせるが、そのとき脳裏に閃いた。
(そうだ! メイ、グングニルだ! あの槍を使え!)
目前へサタンの追撃が迫る中、シュウゴは必死に念じる。
ティルヴィングは容易く竜の鱗すら斬った。それは神の道具であるからに他ならない。ならば、サタンを倒せるのも同じ神具。
(は、はいっ!)
メイは急いでグングニルの元へ駆け出す。
――キイィィィンッ!
振り下ろされたティルヴィングをブリッツバスターで受け止めると、サタンがシュウゴの顔を覗き込み、眉を寄せた。
「……なにか企んでいる顔だな」
シュウゴは答えずサタンを睨みつける。
だがそれも一瞬。
いくら雷を纏わせたブリッツバスターであっても、ティルヴィング相手に持ちこたえられず、すぐに押し切られた。
「そらっ!」
「ぐっ!」
サタンの蹴りを左腕で受け止めるが、衝撃で大きく蹴り飛ばされる。
そのとき、メイの苦悶の声が頭に届いた。
(う、ぅぅぅっ……)
「メイ?」
シュウゴがサタンに警戒しながら一瞬メイへ目を向けると、彼女はグングニルを掴んで硬直していた。
「はっ、神具をそう簡単に扱えると思うなよ虫けら。生身で触れればたちまち皮膚は焼かれ、見えない神力に弾かれる」
サタンは不敵な笑みを浮かべた。
彼の言う通り、メイは見えない力で体を吹き飛ばされ、床を転がった。
レーザーの照射が終わっても、光の障壁にはヒビ一つ入っていなかった。
シュウゴの表情に絶望の色が浮かぶ。
トライデントアイの最大出力をもってしても通じないとなると、なすすべがない。
それでも攻撃の手を緩めず、ニアがサタンの背後から襲い掛かり、シュウゴも遅れて続いた。
隼の充電はとっくに完了しているが、これを開放したところで状況は変わらないだろう。
(――お兄様危ない!)
必死に頭を回転させていたため、大きな隙ができたことにシュウゴは気付けなかった。
(しまっ……)
シュウゴが視界に意識を戻したときには、もう胸の前までティルヴィングの切っ先が迫っていた。
動きがスローモーションに見えた。
サタンの背後から、ニアが慌てて右肩へ爪を振り下ろそうとしている。
シュウゴもそうだが、その動作によって彼女も隙だらけだ。
「……バカが」
サタンは一瞬酷薄な笑みを浮かべると、シュウゴへ突きを繰り出していた体勢から瞬時に一回転。
真後ろにいたニアを薙ぎ払った。
「カハッ!」
ティルヴィングの黒い刀身がニアの胸を一文字に斬り裂き、鮮血が飛び散った。ニアは苦痛に顔を歪めるが、それでもヒュドラの血の生命力は並ではない。
だがサタンもそれだけで終わらず、左手に漆黒の炎を溜めていた。
至近距離でニアへ放ち、轟音と共に吹き飛ばされた彼女は壁へ叩きつけられた。ニアはその衝撃で気を失い、力なく床へと落下。同時に形態変化も解けていた。
「ニアぁっ!」
シュウゴが顔を歪め必死に叫ぶ。
サタンは何事もなくシュウゴへ振り向くと、神経を逆撫でするような薄ら笑いを浮かべた。
「ふんっ、貴様でも囮程度の役には立ったか」
「くっそぉぉぉっ!」
怒りに我を忘れたシュウゴは、帯電していた稲妻を開放する。
瞬時に間合いを詰める。
そして、ただ力任せに雷纏う斬撃を叩きつけ、連撃を繰り出した。
サタンは余裕に頬を緩め、軽々と稲妻の連撃をいなしていく。
「まだそんな力を残していたのか。だが、遅い!」
サタンは最小限の動作で連撃をいなした後、冷静に隙を見極め魔剣の切っ先を突き出す。
弾丸のような鋭い突きはアイスシールドで防ぐが、ただの一突きで氷の障壁は破壊され突き飛ばされる。
「ぐぅっ!」
勢いよく吹き飛び距離を離されるが、なんとかバーニア噴射で留まる。
あまり破壊力に苛立ちを募らせるが、そのとき脳裏に閃いた。
(そうだ! メイ、グングニルだ! あの槍を使え!)
目前へサタンの追撃が迫る中、シュウゴは必死に念じる。
ティルヴィングは容易く竜の鱗すら斬った。それは神の道具であるからに他ならない。ならば、サタンを倒せるのも同じ神具。
(は、はいっ!)
メイは急いでグングニルの元へ駆け出す。
――キイィィィンッ!
振り下ろされたティルヴィングをブリッツバスターで受け止めると、サタンがシュウゴの顔を覗き込み、眉を寄せた。
「……なにか企んでいる顔だな」
シュウゴは答えずサタンを睨みつける。
だがそれも一瞬。
いくら雷を纏わせたブリッツバスターであっても、ティルヴィング相手に持ちこたえられず、すぐに押し切られた。
「そらっ!」
「ぐっ!」
サタンの蹴りを左腕で受け止めるが、衝撃で大きく蹴り飛ばされる。
そのとき、メイの苦悶の声が頭に届いた。
(う、ぅぅぅっ……)
「メイ?」
シュウゴがサタンに警戒しながら一瞬メイへ目を向けると、彼女はグングニルを掴んで硬直していた。
「はっ、神具をそう簡単に扱えると思うなよ虫けら。生身で触れればたちまち皮膚は焼かれ、見えない神力に弾かれる」
サタンは不敵な笑みを浮かべた。
彼の言う通り、メイは見えない力で体を吹き飛ばされ、床を転がった。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語
ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。
変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。
ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。
タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)
2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜
フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」
貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。
それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。
しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。
《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。
アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。
スローライフという夢を目指して――。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる