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第十章 侵された聖域

陰草

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 それからシュウゴたちは今まで行ったことのないエリアへ進んでいた。
 以前は至る所に沼があり視界が悪すぎたために誰も進むことのできなかったルートだ。
 背の高い灰色の草が広がる草原で、ところどころ底なし沼と毒沼がある。
 ひび割れた大きな岩の下などには花が咲いているところもあり、メイがすかさず採集していく。

「これで七種類目です」

「順調順調~」

 当初は難易度が高そうだと思われた薬草採取だが、思いのほか簡単に終わりそうだ。
 灰色の草原は少し見晴らしは悪いが、絶好の採取エリアだった。
 このまま先へ進もうとするが――

「――止まるんだ!」

 シュウゴが突然怒鳴るように叫んだ。
 メイはハッとしてキョロキョロと辺りを見回し、デュラはすぐさまランスを構える。
 ニアはシャキンッと音を立てると竜の爪を光らせ、翼を広げて舞い上がった。
 シュウゴの頭上で彼女は告げた。

「囲まれてるねぇ……」

「こいつら、一体どこから……」

 いつの間にかシュウゴの前方には二体のカトブレパスと三体のアラクネが広がって展開していた。
 この数の敵に気付けないなど、普段のシュウゴたちならあり得ない。デュラは常に周囲へ気を配っているし、特にニアは鼻が利く。
 シュウゴは解せないと眉をひそめた。

「ニア、こいつらの臭いは?」

「んん~全然分かんないよ~」

「なんだって? 確かに存在感もまったく感じられないけど……」

 まるで幻影を前にしているようだった。目の前に広がる敵は灰色の草で上手く姿を隠すことはできても、雰囲気や音で存在が感じられるはずだ。
 そこでメイは、なにかに気付いたように図鑑を広げた。

「……あっ、ありました! ここに生えてるのはおそらく陰草いんそうです」

「陰草?」

「生き物が発する気配や音などを遮断する性質を持った草です。おそらく、魔物たちは最初からいたんですよ」

「とんだトラップだな。だからデュラやニアでも気付けなかったのか」

 シュウゴは悔しげに奥歯を噛み、周囲で揺れている陰草を見渡す。
 これだけの陰草に囲まれていれば、周囲の情報は難なく遮断されてしまうということか。
 デュラがガシャンと警告するように金属を響かせる。振り向くと、背後からもカトブレパスが二体歩いてきていた。

 ――キイィィィッ!

 さらにイービルアイが二体、どこからともなく現れる。
 どちらも容赦なく目に光を収束し始めた。

「ちぃっ、岩の影にでも隠れてたか!? 今は退こう。デュラは背後のカトブレパスへ突撃して退路を開いてくれ! メイは岩に隠れて援護、ニアと俺でイービルアイを先に倒そう!」

 シュウゴが指示すると各自素早く散開した。
 デュラはまっすぐに後方のカトブレパスへと駆け出し、ニアはすぐさまレーザーを照射せんとするイービルアイへ突進する。
 シュウゴもバーニアを噴射し、もう一体のイービルアイへ向かおうとするが――

「――っ! ニア、避けろ!」

「えっ?」

 シュウゴが叫ぶと同時に、ニアの後方から複数の白い糸の塊が飛来する。
 ニアはそれに気付き間一髪で身をよじり回避。
 続いて弾丸のような勢いでアラクネの白い糸が飛来する。
 態勢を崩しながらも、ニアはなんとかその全てを回避した。
 しかし――
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