126 / 251
第九章 王家の墓の死王
時の人
しおりを挟む
シュウゴとシモンが顔を強張らせ、静かに思考を巡らせていると陽気な乱入者が現れた。
「――ああ~柊くんやっぱりいた~」
そう言って入口の暖簾をくぐり、シュウゴの元まで駆け寄って来たのはニアだった。ウェーブがかった色素の薄い青髪に花の髪飾りを着け、肌触りの良さそうな絹で出来た、緑と白のワンピースを着ている。肩部が露出し下の丈が短めなこともあってか、今どきの町娘という雰囲気だ。
シュウゴが驚いて立ち上がると、ニアが正面から抱きついてきた。
「おわっ!?」
変な声を上げたのはシモンだった。
シュウゴも驚いて、両手でニアの体を離し問いかける。
「教会の手伝いはどうしたのニア?」
「今日はあまりやることないから、帰ってもいいってマーヤ様から言われたの~」
「そうだったのか。でも、メイはどうした?」
「えっとねぇ、買い物してから帰るって言うから、私は散歩して帰るって言って別れたんだ~。そしたら、柊くんの匂いに気が付いて~」
ニアは嬉しそうにシュウゴの腕に頬をすりすり。シュウゴのシャツの生地が薄いため、義手のゴツゴツした感触がダイレクトに伝わるはずだが、ニアはそれが良いと言う。
二人は、背後で負のオーラが大きくなっていることに気付かなかった。
――ブッチィィィンッ!
「こらぁっ! イチャつくのなら、よそでやれぇぇぇっ!」
シモンが鬼の形相で怒鳴り、二人は店から追いだされた。
二人は慌てて鍛冶屋を出ると、商業区を北東へ向かって歩き出した。
ニアは不思議そうに首を傾げながら、おっとりした目でシュウゴを見上げる。
「シーくん怖いん~?」
「そんなことはないけど、急に機嫌が悪くなったな。疲れてるんだろう」
鈍感な二人。シモンが不憫で仕方ない。
二人が手を繋いで歩いていると、周囲の視線を感じた。
「おい、あれが噂の……」
「設計士様よ!」
「おぉ、さすがは設計士様だ。あんな美少女を連れているなんて羨ましい……」
「あれは確か、竜種の女の子じゃないかしら?」
道行く人々が足を止め、シュウゴへ目を向ける。嫌悪するような雰囲気でないのが幸いだ。
しかしこんなにも注目されているのに、ニアときたらシュウゴの腕にべったりくっついている。
シュウゴはなんだか気恥ずかしかった。羨望の眼差しを受け続けたシュウゴは、耐え切れなくなり歩くスピードを速める。
「設計士様、凛々しくて素敵……」
「けっ、俺もあの人の脳ミソが欲しいぜ」
シュウゴは気まずさを紛らわせるために、ニアへ声をかける。
「なんかかなり目立ってないか?」
「みんなやっと柊くんの凄さが分かったんだよ~。やっぱり柊くんはカッコいいね~」
ニアが嬉しそうに目を細める。
「――こらっ、ニアちゃん!」
すると、彼らの前方に立ち塞がった人影があった。
呼び止められたニアは、目をパチクリさせてシュウゴと共に立ち止まる。
目の前で肩を震わせて立ちはだかっているのはメイだった。
「メイ? 買い物は終わったの~?」
「終わりましたよ。まったくあなたときたら……家に帰ると言ってたくせに、お兄様を連れ出して……」
メイがむぅと頬を膨らませる。
シュウゴは、微笑ましさに頬を緩ませるが、周囲の視線が痛いほど刺さるので、メイの元まで歩み寄った。
「まあまあ。メイ、落ち着いて」
そう言ってメイの頭にポンポンと軽く手を乗せると、彼女の手から食材の入った袋を奪い、足早に家へと歩き出す。早く人の視線から逃れたかったのだ。
「あっ、お兄様、待ってください!」
「柊くん置いてかないで~」
二人も慌てて後ろに着いて来る。
(みんな、変な噂立てないでくれよ?)
シュウゴは内心で祈りながら、帰路につく。
「――ああ~柊くんやっぱりいた~」
そう言って入口の暖簾をくぐり、シュウゴの元まで駆け寄って来たのはニアだった。ウェーブがかった色素の薄い青髪に花の髪飾りを着け、肌触りの良さそうな絹で出来た、緑と白のワンピースを着ている。肩部が露出し下の丈が短めなこともあってか、今どきの町娘という雰囲気だ。
シュウゴが驚いて立ち上がると、ニアが正面から抱きついてきた。
「おわっ!?」
変な声を上げたのはシモンだった。
シュウゴも驚いて、両手でニアの体を離し問いかける。
「教会の手伝いはどうしたのニア?」
「今日はあまりやることないから、帰ってもいいってマーヤ様から言われたの~」
「そうだったのか。でも、メイはどうした?」
「えっとねぇ、買い物してから帰るって言うから、私は散歩して帰るって言って別れたんだ~。そしたら、柊くんの匂いに気が付いて~」
ニアは嬉しそうにシュウゴの腕に頬をすりすり。シュウゴのシャツの生地が薄いため、義手のゴツゴツした感触がダイレクトに伝わるはずだが、ニアはそれが良いと言う。
二人は、背後で負のオーラが大きくなっていることに気付かなかった。
――ブッチィィィンッ!
「こらぁっ! イチャつくのなら、よそでやれぇぇぇっ!」
シモンが鬼の形相で怒鳴り、二人は店から追いだされた。
二人は慌てて鍛冶屋を出ると、商業区を北東へ向かって歩き出した。
ニアは不思議そうに首を傾げながら、おっとりした目でシュウゴを見上げる。
「シーくん怖いん~?」
「そんなことはないけど、急に機嫌が悪くなったな。疲れてるんだろう」
鈍感な二人。シモンが不憫で仕方ない。
二人が手を繋いで歩いていると、周囲の視線を感じた。
「おい、あれが噂の……」
「設計士様よ!」
「おぉ、さすがは設計士様だ。あんな美少女を連れているなんて羨ましい……」
「あれは確か、竜種の女の子じゃないかしら?」
道行く人々が足を止め、シュウゴへ目を向ける。嫌悪するような雰囲気でないのが幸いだ。
しかしこんなにも注目されているのに、ニアときたらシュウゴの腕にべったりくっついている。
シュウゴはなんだか気恥ずかしかった。羨望の眼差しを受け続けたシュウゴは、耐え切れなくなり歩くスピードを速める。
「設計士様、凛々しくて素敵……」
「けっ、俺もあの人の脳ミソが欲しいぜ」
シュウゴは気まずさを紛らわせるために、ニアへ声をかける。
「なんかかなり目立ってないか?」
「みんなやっと柊くんの凄さが分かったんだよ~。やっぱり柊くんはカッコいいね~」
ニアが嬉しそうに目を細める。
「――こらっ、ニアちゃん!」
すると、彼らの前方に立ち塞がった人影があった。
呼び止められたニアは、目をパチクリさせてシュウゴと共に立ち止まる。
目の前で肩を震わせて立ちはだかっているのはメイだった。
「メイ? 買い物は終わったの~?」
「終わりましたよ。まったくあなたときたら……家に帰ると言ってたくせに、お兄様を連れ出して……」
メイがむぅと頬を膨らませる。
シュウゴは、微笑ましさに頬を緩ませるが、周囲の視線が痛いほど刺さるので、メイの元まで歩み寄った。
「まあまあ。メイ、落ち着いて」
そう言ってメイの頭にポンポンと軽く手を乗せると、彼女の手から食材の入った袋を奪い、足早に家へと歩き出す。早く人の視線から逃れたかったのだ。
「あっ、お兄様、待ってください!」
「柊くん置いてかないで~」
二人も慌てて後ろに着いて来る。
(みんな、変な噂立てないでくれよ?)
シュウゴは内心で祈りながら、帰路につく。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語
ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。
変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。
ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。
タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜
フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」
貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。
それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。
しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。
《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。
アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。
スローライフという夢を目指して――。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる