49 / 58
第五章 伝説の大投資家
反撃の決意
しおりを挟む
ケルベムの言葉に対し、マヤは首を横へ振った。
「いいえ、先生は素晴らしい方ですよ」
「そうかい」
またなにか言ってくると思ったが、ケルベムはそれ以上なにも言わず頬を緩めた。
どこか嬉しそうだ。
ハンナとアヤのほうは、話についていけてないようで首を傾げている。
「けるべむ……なに?」
「わかんない……」
「まあ、お嬢ちゃんたちにはまだ早い世界さね。もう少し大人になったら、私の名を知ることになるだろうよ」
「むぅ? お姉さん、なに言ってんのさ、私たち、もう大人だよ!」
「そうです、結婚だってできちゃいます!」
ハンナとアヤは頬を膨らませ不服そうに言う。
するとケルベムは、顔をほころばせ、小動物を愛でるように二人の頭をなでた。
二人が気持ちよさそうに目を細め、ボーっとしだすと、ケルベムはヤマトへ再び向き直った。
「それで、どういう状況だい? いったいなにをやらかしたら、顧客たちに敵意を向けられるのさ?」
「それが――」
ヤマトはここまでのことをすべてを話した。
かつてのパーティメンバーの仕返しのことから、ドグマン家による圧力のこと、誰かが妙な噂を流していること……そしていなくなったシルフィのことを。
シルフィに持ちかけられたであろう話については、マヤとハンナも知らなかったので、少し取り乱した。
「――なるほどねぇ、事情は分かった。なかなか厄介なことに巻き込まれているわけだ」
「師匠、良ければ、手を貸してくれませんか?」
「断る」
「即答!?」
「当たり前だ。私だってヒマじゃない」
「そうですよね……」
「だから、枷を外してやったんだ」
「さっきも言ってましたけど、かせってなんのことですか?」
「おいおい自覚がないとはな。私がそう教育したとはいえ、そこまで無関心だと私も泣いちゃうぞ?」
「またまたご冗談を。師匠が泣くなんて、天地がひっくり返ってもありえな――」
――ガツンッ
「痛っ!」
ヤマトの脳天にゲンコツが落ちてきた。
とてつもない衝撃にたまらず涙が浮かぶ。
すると、すかさず横からマヤが頭をさすってきた。
「よしよし」
「マ、マヤっ、恥ずかしいよ……」
「こほんっ。お前が持ちうる究極の武器。それは、ヤマト・スプライドがケルベム・ロジャーの後継者であるという圧倒的な『ブランド力』と『信用』だ」
「っ! そういうことですか」
「さっきのを見ただろう? この国での私という存在の影響力は、それほどまでに強大だ。もしお前のほうがそれを悪用しようものなら、蹴飛ばして奈落の底に落としてやるところだが、今は緊急事態なんだろう? 特別に私の名を使っていい。とういうか、さっきの情報屋が勝手に流すだろう」
「そうでしょうね」
「後は好きにやりな、バカ弟子。だけど、女一人取り返せないなんてヘマしたら、許さないからね」
「もちろんです。シルフィは必ず、救い出してみせます!」
ヤマトは拳を握り、師匠の目をまっすぐに見て宣言した。
ケルべムは満足そうに鼻を鳴らすと、マヤの差し出した書類にサインし、正式にヤマト運用の大口顧客となる。
彼女が「また手紙よこせよ」と言って去って行くと、ヤマトはシルフィを取り戻すべく、本気の攻勢に出ようと決意を固めるのだった。
「もう容赦はしない――」
「いいえ、先生は素晴らしい方ですよ」
「そうかい」
またなにか言ってくると思ったが、ケルベムはそれ以上なにも言わず頬を緩めた。
どこか嬉しそうだ。
ハンナとアヤのほうは、話についていけてないようで首を傾げている。
「けるべむ……なに?」
「わかんない……」
「まあ、お嬢ちゃんたちにはまだ早い世界さね。もう少し大人になったら、私の名を知ることになるだろうよ」
「むぅ? お姉さん、なに言ってんのさ、私たち、もう大人だよ!」
「そうです、結婚だってできちゃいます!」
ハンナとアヤは頬を膨らませ不服そうに言う。
するとケルベムは、顔をほころばせ、小動物を愛でるように二人の頭をなでた。
二人が気持ちよさそうに目を細め、ボーっとしだすと、ケルベムはヤマトへ再び向き直った。
「それで、どういう状況だい? いったいなにをやらかしたら、顧客たちに敵意を向けられるのさ?」
「それが――」
ヤマトはここまでのことをすべてを話した。
かつてのパーティメンバーの仕返しのことから、ドグマン家による圧力のこと、誰かが妙な噂を流していること……そしていなくなったシルフィのことを。
シルフィに持ちかけられたであろう話については、マヤとハンナも知らなかったので、少し取り乱した。
「――なるほどねぇ、事情は分かった。なかなか厄介なことに巻き込まれているわけだ」
「師匠、良ければ、手を貸してくれませんか?」
「断る」
「即答!?」
「当たり前だ。私だってヒマじゃない」
「そうですよね……」
「だから、枷を外してやったんだ」
「さっきも言ってましたけど、かせってなんのことですか?」
「おいおい自覚がないとはな。私がそう教育したとはいえ、そこまで無関心だと私も泣いちゃうぞ?」
「またまたご冗談を。師匠が泣くなんて、天地がひっくり返ってもありえな――」
――ガツンッ
「痛っ!」
ヤマトの脳天にゲンコツが落ちてきた。
とてつもない衝撃にたまらず涙が浮かぶ。
すると、すかさず横からマヤが頭をさすってきた。
「よしよし」
「マ、マヤっ、恥ずかしいよ……」
「こほんっ。お前が持ちうる究極の武器。それは、ヤマト・スプライドがケルベム・ロジャーの後継者であるという圧倒的な『ブランド力』と『信用』だ」
「っ! そういうことですか」
「さっきのを見ただろう? この国での私という存在の影響力は、それほどまでに強大だ。もしお前のほうがそれを悪用しようものなら、蹴飛ばして奈落の底に落としてやるところだが、今は緊急事態なんだろう? 特別に私の名を使っていい。とういうか、さっきの情報屋が勝手に流すだろう」
「そうでしょうね」
「後は好きにやりな、バカ弟子。だけど、女一人取り返せないなんてヘマしたら、許さないからね」
「もちろんです。シルフィは必ず、救い出してみせます!」
ヤマトは拳を握り、師匠の目をまっすぐに見て宣言した。
ケルべムは満足そうに鼻を鳴らすと、マヤの差し出した書類にサインし、正式にヤマト運用の大口顧客となる。
彼女が「また手紙よこせよ」と言って去って行くと、ヤマトはシルフィを取り戻すべく、本気の攻勢に出ようと決意を固めるのだった。
「もう容赦はしない――」
0
お気に入りに追加
619
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる