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第二章 快進撃
マヤの苦悩(ソウルヒート視点)
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それから一か月が経った。
「どうした? 遠慮はいらねぇからたくさん飲めよ、マヤ」
マキシリオンが高級ぶどう酒入りのグラスを片手に、マヤへ告げる。
しかしマヤは、不機嫌そうに眉をしかめてため息を吐いた。
「……私はこの一杯だけで十分だわ」
その日の夜、ソウルヒートは高難易度クエストクリアの達成感に酔いしれるべく、高級料亭で打ち上げを行っていた。
とは言っても、酔いしれているのは三人だけで、マヤは最後まで反対していたが。
「元気ないねぇ、マヤちゃん。なにか悩みがあるなら、僕が相談になってあげるよ」
肩を抱こうとライダが伸ばしてきた手をはたき、マヤは冷たい目を向ける。
「それなら、すぐに派手な散財をやめてちょうだい」
「またそれかぁ……」
「ちょっとマヤさん。こんなときまでなにを言ってらっしゃるの? いい加減にしてくださらないかしら?」
優雅にナフキンで口元をふきながらスノウが告げると、マヤは彼女をキッとにらんだ。
「何回も言ってるじゃない!? もう既に余剰資金のうち3割近く減っているのよ!? あんなに潤沢にあったのに。私たちには今まで通りの生活をする余裕はないわ」
「確かに3割はでかいね。でも、それは資源が高騰してるせいだろ?」
「もちろんよ。私たちだけじゃなくて、他のハンターたちだって今は苦しいの」
一か月ほど前から、世界最大の資源国であり輸出国でもある『ヴァルファーム』を中心に、周辺諸国へ疫病が蔓延し始めた。
それによって、重要資源であるダークマターやエーテル鉱石、ミスリル銀鉱石などの採掘量が減り、各国への供給不足によって資源価格が高騰しているのだ。
そんな状況だと言うのに、マキシリオンたちはマヤの言うことも聞かず、武器の強化や製造、消耗品の大量購入を続け、それ加えてマキシリオンとライダはキャバクラや娼館通い、スノウは高級アクセサリーの物色をやめないのだから、もの凄い勢いで資産が減っていくのも無理はない。
しかし、マキシリオンは余裕の表情で酒をあおり、言い放つ。
「心配するな、どうせすぐに価格は戻るだろ。そうすりゃまた稼ぎ放題だ。俺たちは超高難易度のクエストだって攻略できるんだからな」
しかしマヤはますます表情を曇らせる。
いくら高難易度のクエストをクリアしたところで、出費が報酬より多いのだからいずれは底をつく。
彼らはそれが分かっていないのだ。
「そうだぜマヤちゃん。心配すんなって。ヤマトも似たようなことをたまに言ってたけど、俺らはそれを一度も聞かなかった。それでもなにも問題はなかったんだから」
「ヤマト?」
「あなたの前に資金管理をしていた無能ですわ」
「っ!」
マヤはようやく思い出した。
自分より前にソウルヒートの資金管理をしていた者がいたことを。
最初は戦闘メンバーたちにばかり目がいって、資金管理をしている青年のことなど眼中にもなかった。
しかし今になってようやく自分の認識が間違っていたのだと痛感する。
マヤが目を見開き固まっていると、マキシリオンが「お前ら、もっと飲めや!」と言い、再び騒ぎだした。
マキシリオンたちが酒と食事に夢中になる中、マヤはぼそりと呟く。
「ヤマトさん……彼はいったい、どうやってこのパーティを管理していたのかしら――」
「どうした? 遠慮はいらねぇからたくさん飲めよ、マヤ」
マキシリオンが高級ぶどう酒入りのグラスを片手に、マヤへ告げる。
しかしマヤは、不機嫌そうに眉をしかめてため息を吐いた。
「……私はこの一杯だけで十分だわ」
その日の夜、ソウルヒートは高難易度クエストクリアの達成感に酔いしれるべく、高級料亭で打ち上げを行っていた。
とは言っても、酔いしれているのは三人だけで、マヤは最後まで反対していたが。
「元気ないねぇ、マヤちゃん。なにか悩みがあるなら、僕が相談になってあげるよ」
肩を抱こうとライダが伸ばしてきた手をはたき、マヤは冷たい目を向ける。
「それなら、すぐに派手な散財をやめてちょうだい」
「またそれかぁ……」
「ちょっとマヤさん。こんなときまでなにを言ってらっしゃるの? いい加減にしてくださらないかしら?」
優雅にナフキンで口元をふきながらスノウが告げると、マヤは彼女をキッとにらんだ。
「何回も言ってるじゃない!? もう既に余剰資金のうち3割近く減っているのよ!? あんなに潤沢にあったのに。私たちには今まで通りの生活をする余裕はないわ」
「確かに3割はでかいね。でも、それは資源が高騰してるせいだろ?」
「もちろんよ。私たちだけじゃなくて、他のハンターたちだって今は苦しいの」
一か月ほど前から、世界最大の資源国であり輸出国でもある『ヴァルファーム』を中心に、周辺諸国へ疫病が蔓延し始めた。
それによって、重要資源であるダークマターやエーテル鉱石、ミスリル銀鉱石などの採掘量が減り、各国への供給不足によって資源価格が高騰しているのだ。
そんな状況だと言うのに、マキシリオンたちはマヤの言うことも聞かず、武器の強化や製造、消耗品の大量購入を続け、それ加えてマキシリオンとライダはキャバクラや娼館通い、スノウは高級アクセサリーの物色をやめないのだから、もの凄い勢いで資産が減っていくのも無理はない。
しかし、マキシリオンは余裕の表情で酒をあおり、言い放つ。
「心配するな、どうせすぐに価格は戻るだろ。そうすりゃまた稼ぎ放題だ。俺たちは超高難易度のクエストだって攻略できるんだからな」
しかしマヤはますます表情を曇らせる。
いくら高難易度のクエストをクリアしたところで、出費が報酬より多いのだからいずれは底をつく。
彼らはそれが分かっていないのだ。
「そうだぜマヤちゃん。心配すんなって。ヤマトも似たようなことをたまに言ってたけど、俺らはそれを一度も聞かなかった。それでもなにも問題はなかったんだから」
「ヤマト?」
「あなたの前に資金管理をしていた無能ですわ」
「っ!」
マヤはようやく思い出した。
自分より前にソウルヒートの資金管理をしていた者がいたことを。
最初は戦闘メンバーたちにばかり目がいって、資金管理をしている青年のことなど眼中にもなかった。
しかし今になってようやく自分の認識が間違っていたのだと痛感する。
マヤが目を見開き固まっていると、マキシリオンが「お前ら、もっと飲めや!」と言い、再び騒ぎだした。
マキシリオンたちが酒と食事に夢中になる中、マヤはぼそりと呟く。
「ヤマトさん……彼はいったい、どうやってこのパーティを管理していたのかしら――」
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