俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第36話:潜水艦

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「お前ら、これに乗ってくれ」

そう言って、俺が異空間から取り出したのは大きな潜水艦だった。

「うおっ!これは凄い!!」

「ん?これで余達は海底まで向かうちゃきか?」

「ああ」

そう。次の金鎧は海底に沈んでいるのだ。その場所は火山の時と同じく指定難度SSS。普通の人間ならば、そこまで息が保つ訳はないし、仮に魔法でその部分を解決したとしてもそっちに気を取られすぎると今度は海中に生息する魔物に襲われる危険性がある。もちろん、高ランク冒険者であってもわざわざ、そんな危険を犯してまで向かう者はいないのが現状だった。

「これに乗っていけば、息継ぎの心配はしなくていいし、魔物に襲われたとしても対抗手段はある」

中に入れば、分かることだがモニター室には属性ごとに手を翳すパネルがある。それは全属性分あり、魔力を込めて手を翳すことで好きな魔法を潜水艦に取り付けられた砲口から発射できる仕組みとなっている。その威力は申し分なく、込めた魔力量によって調整できることから、アトラクション要素もあって、楽しいはずだ……………はずなのだが、俺としては心配事があった。

「「?」」

俺が不安そうな目を向けているのに対して、首を傾げる2人。ビオラとクロガネがまたまた調子に乗って、暴走しないかが俺の気掛かりだった。





「「「「「お~~~っ!!!!!」」」」」

ところが、そんな心配は無用だった。潜水してから、みんなは海中の美しい景色に見惚れていたからだ。確かにこんな景色を大きな窓から悠々と見れることなんて早々ないからな………………なんか全員が一斉に同じ景色を見上げてるの微笑ましいな。まるで水族館に校外学習にやってきた児童達みたいで。

「おっ」

と、そんな中、一体の魔物が潜水艦に近付いてきた。その魔物は潜水艦が物珍しいのか、窓に張り付くみんなをジロジロと窓越しに見ている。

「おっ、何だこの魔物!!」

「可愛いちゃきね!!」

体長約30mはあり、蛇というよりはどちらかというと、うつぼのような見た目のその魔物は名をシーサーペントとという。身体が空のように綺麗な青色で通称"海龍"と呼ばれているこの魔物はクロガネの言うように可愛く……………はなかった。うん、とてもじゃないが、全然………………こいつの感性はどうなってんだ?

「あれ?この魔物、何だか動きがおかしような…………」

「こ、これはまずいんじゃないちゃきか?」

そうこうしている内にこちらを見ていたシーサーペントは何やら大きく身体を捻り、不穏な動きを見せ始めた。まるでこちらに対して、攻撃でもしようとしているかのように。

「「う、うわ~~~っ!!」」

そして、そんな予感は的中し、シーサーペントは捻った身体の反動を活かして、こちらへ攻撃を仕掛けようとしていた。海底まではまだまだ遠い。序盤からこれじゃ、潜ろうなんて冒険者がいないのも頷けた。

「ほい」

俺は徐にパネルに手を乗せて、潜水艦の砲口から魔法を放った。選択した魔法は"サンダーショック"。本来は広範囲に低威力の電気を放つ魔法だが、魔力量を増やすことで俺は広範囲に中威力の雷を放った。

「「「「「グオオオッ!!!!?」」」」」

それによって、こちらへ迫っていたシーサーペント……………だけでなく、ついでにこちらへ向かってきていた他の魔物もまとめて一掃した。

「「な、何今の!?」」

しかし、これによって約2名にオモチャの存在を知られることとなってしまったのだった……………全く、余計なことをさせてくれやがって。





「あはははっ!」

「凄いちゃき、これ!!」

案の定、オモチャを買い与えられた子供のように手当たり次第にパネルへ手を翳しまくる2名。

「ビオラ、クロガネ?」

「「ひぃっ!?」」

しかし、即座にティアの呼びかけにより、大人しくなる2名。その後はビオラ達が適当に放ちまくった魔法に釣られてやってきた魔物達をティア達がそれぞれ対処するハメになっていた。

「ふふっ」

しかし、ビオラ達程ではないものの、何だかんだ楽しそうにパネルへ手を翳す仲間達がそこにはいたのだった。


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