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第15章 親子喧嘩
第338話 はぐれ者の過去
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「まずは俺の生い立ちからだ……………い
きなりだが、俺はこの世界の出身ではな
い」
「「「「「っ!?」」」」」
キョウヤのこの言葉に驚きを示したのは
ブロン達だけだった。ティア達は誰1人
として驚くことなく、続きの言葉を待っ
ている。
「いわゆる"異世界"、それも"日本"
と呼ばれる国に生まれた。俺が生まれ育
った国は世界的に見ても比較的安全だと
いう認識があった。犯罪発生率が周辺国
と比べて低く、食料の入手が比較的安
易。勉学や仕事も成果に応じた将来が待
ち受けており、生きていく為のサポート
もしっかりしている。また、国柄的にそ
こに住む国民は大らかで優しく、気遣い
のできる気質を持っていることが多かっ
た。ここまで聞くとその国での暮らしは
さほど難しくないどころか、むしろ、と
ても生活しやすい環境が整っているよう
に思える。しかし、潤う者がいる一方で
それとは正反対にあらゆる艱難辛苦に耐
えることを強制される者達がいることも
また事実だった。俺の生まれた……………
というか、俺が捨てられた場所はそんな
ところだった」
「っ!?お前……………まさか」
周囲が複雑な表情をする中、何かに気が
付いたシンヤはハッとして、キョウヤを
見据えた。
「俺は捨て子だった。俺が捨てられた場
所は日夜、危険が蔓延るような場所で"
廃棄場"と呼ばれていた。殺人や窃盗が
横行し、その日生きていられる保証な
ど、どこにもない場所。住民は生きてい
く為に道徳に反した行いを繰り返してお
り、そんなところに捨てられた俺はいく
ら赤子といえど、見つかれば、タダでは
済まなかった。そんな中で俺は運の良い
ことにある男に拾われた。
そして、その後、その男は父親として、
俺を育て上げてくれた」
「「「「「………………」」」」」
周囲がただ黙って耳を傾ける中、キョウ
ヤの語りは続いていく。
「男からは色々なことを学んだ。勉強、
生活の知恵、手先を使った技術、常
識………そして、戦闘術や殺しの技な
ど。その種類は多岐に渡るが、どれも生
きていく上で役に立つものばかりだっ
た。ちなみに俺の名字と名前はその男に
もらったものだった。それを初めてのプ
レゼントとして、もらった時はとても嬉
しかった。男がやけに笑顔だったのも覚
えている」
キョウヤは遠くを見据えて、何とも言え
ない表情をしており、シンヤはどこか懐
かしい気持ちになりながら話を聞いてい
た。
「月日が流れ、俺が18歳になった時、
男から1つの提案をされた。それは"廃
棄場"を出て、外の世界を見てみないか
というものだった。男は常日頃から、外
の世界の素晴らしさを俺に語って聞かせ
ていた。その為、外の世界に興味を持っ
ていた俺はその提案に二つ返事で答え、
各地を放浪する旅へと出た。今でも思
う。あの当時の俺は本当に世間知らずの
ガキだったと………………そんな俺が"廃
棄場"を出て、まず驚いたのは普通に生
活することの難しさに対してだった。最
低限の金を持って飛び出したはいいもの
の、それは軽い食事程度で消えてしまう
ものだった。しかし、人は食わねば死ん
でしまう。その為には金を手に入れる必
要があった。そこで俺に残された選択肢
は2つ。盗むか、働くかだった」
コロコロと毛色が変わる話についていく
のが精一杯のブロン達。そんな彼らを慮
ってか、ここで少し間を空けるキョウ
ヤ。それは時間にして約1分程だった
が、彼らにとってはちょうど良かった。
「盗みをするつもりは最初からなかっ
た。男との約束でどうしようもない場合
を除き、他人に迷惑をかけるような行為
はしてはならないと決めてあったから
だ。となると、残る選択肢は1つ。俺は
働いて金を手に入れ、それを食費と旅費
に当てることにした。それからは沢山の
仕事をした。多くの者は仕事などしたく
ないと口を揃えて言うだろう。しかし、
俺は街の景色1つ取っても初めて見るも
のばかりで感動するような人間だ。その
為、仕事も新鮮でワクワクした。もちろ
ん、分からないことだらけで大変だった
し、普通に生きていくことの辛さもそこ
で知った。だが、今までの暮らしと比べ
ると天と地の差だった。ここでは常に命
を狙われるようなことはない。突発的な
事件に巻き込まれる危険性があるにはあ
るが、それもあちら側にいた者ならば、
対処できる程度のもの。俺はすぐにこち
ら側の生活に順応した」
キョウヤはゆっくりと自身の記憶をなぞ
り、それを言葉にしていく。その表情は
とても穏やかなものであり、先程の戦い
で見せていた顔と全然違っていた。
「そんなこんなで各地を旅して4年がた
った頃、俺はとある1人の女と出会っ
た」
ここで急に声のトーンが変わった為、皆
が何事かとキョウヤを凝視する。そんな
中、キョウヤは真っ直ぐとシンヤを見つ
めて、こう言い放った。
「それが後にシンヤ…………お前の母親
となる人物だ」
その時、気が付けば外では雨が降り出し
ていた。
きなりだが、俺はこの世界の出身ではな
い」
「「「「「っ!?」」」」」
キョウヤのこの言葉に驚きを示したのは
ブロン達だけだった。ティア達は誰1人
として驚くことなく、続きの言葉を待っ
ている。
「いわゆる"異世界"、それも"日本"
と呼ばれる国に生まれた。俺が生まれ育
った国は世界的に見ても比較的安全だと
いう認識があった。犯罪発生率が周辺国
と比べて低く、食料の入手が比較的安
易。勉学や仕事も成果に応じた将来が待
ち受けており、生きていく為のサポート
もしっかりしている。また、国柄的にそ
こに住む国民は大らかで優しく、気遣い
のできる気質を持っていることが多かっ
た。ここまで聞くとその国での暮らしは
さほど難しくないどころか、むしろ、と
ても生活しやすい環境が整っているよう
に思える。しかし、潤う者がいる一方で
それとは正反対にあらゆる艱難辛苦に耐
えることを強制される者達がいることも
また事実だった。俺の生まれた……………
というか、俺が捨てられた場所はそんな
ところだった」
「っ!?お前……………まさか」
周囲が複雑な表情をする中、何かに気が
付いたシンヤはハッとして、キョウヤを
見据えた。
「俺は捨て子だった。俺が捨てられた場
所は日夜、危険が蔓延るような場所で"
廃棄場"と呼ばれていた。殺人や窃盗が
横行し、その日生きていられる保証な
ど、どこにもない場所。住民は生きてい
く為に道徳に反した行いを繰り返してお
り、そんなところに捨てられた俺はいく
ら赤子といえど、見つかれば、タダでは
済まなかった。そんな中で俺は運の良い
ことにある男に拾われた。
そして、その後、その男は父親として、
俺を育て上げてくれた」
「「「「「………………」」」」」
周囲がただ黙って耳を傾ける中、キョウ
ヤの語りは続いていく。
「男からは色々なことを学んだ。勉強、
生活の知恵、手先を使った技術、常
識………そして、戦闘術や殺しの技な
ど。その種類は多岐に渡るが、どれも生
きていく上で役に立つものばかりだっ
た。ちなみに俺の名字と名前はその男に
もらったものだった。それを初めてのプ
レゼントとして、もらった時はとても嬉
しかった。男がやけに笑顔だったのも覚
えている」
キョウヤは遠くを見据えて、何とも言え
ない表情をしており、シンヤはどこか懐
かしい気持ちになりながら話を聞いてい
た。
「月日が流れ、俺が18歳になった時、
男から1つの提案をされた。それは"廃
棄場"を出て、外の世界を見てみないか
というものだった。男は常日頃から、外
の世界の素晴らしさを俺に語って聞かせ
ていた。その為、外の世界に興味を持っ
ていた俺はその提案に二つ返事で答え、
各地を放浪する旅へと出た。今でも思
う。あの当時の俺は本当に世間知らずの
ガキだったと………………そんな俺が"廃
棄場"を出て、まず驚いたのは普通に生
活することの難しさに対してだった。最
低限の金を持って飛び出したはいいもの
の、それは軽い食事程度で消えてしまう
ものだった。しかし、人は食わねば死ん
でしまう。その為には金を手に入れる必
要があった。そこで俺に残された選択肢
は2つ。盗むか、働くかだった」
コロコロと毛色が変わる話についていく
のが精一杯のブロン達。そんな彼らを慮
ってか、ここで少し間を空けるキョウ
ヤ。それは時間にして約1分程だった
が、彼らにとってはちょうど良かった。
「盗みをするつもりは最初からなかっ
た。男との約束でどうしようもない場合
を除き、他人に迷惑をかけるような行為
はしてはならないと決めてあったから
だ。となると、残る選択肢は1つ。俺は
働いて金を手に入れ、それを食費と旅費
に当てることにした。それからは沢山の
仕事をした。多くの者は仕事などしたく
ないと口を揃えて言うだろう。しかし、
俺は街の景色1つ取っても初めて見るも
のばかりで感動するような人間だ。その
為、仕事も新鮮でワクワクした。もちろ
ん、分からないことだらけで大変だった
し、普通に生きていくことの辛さもそこ
で知った。だが、今までの暮らしと比べ
ると天と地の差だった。ここでは常に命
を狙われるようなことはない。突発的な
事件に巻き込まれる危険性があるにはあ
るが、それもあちら側にいた者ならば、
対処できる程度のもの。俺はすぐにこち
ら側の生活に順応した」
キョウヤはゆっくりと自身の記憶をなぞ
り、それを言葉にしていく。その表情は
とても穏やかなものであり、先程の戦い
で見せていた顔と全然違っていた。
「そんなこんなで各地を旅して4年がた
った頃、俺はとある1人の女と出会っ
た」
ここで急に声のトーンが変わった為、皆
が何事かとキョウヤを凝視する。そんな
中、キョウヤは真っ直ぐとシンヤを見つ
めて、こう言い放った。
「それが後にシンヤ…………お前の母親
となる人物だ」
その時、気が付けば外では雨が降り出し
ていた。
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