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第11章 軍団戦争
第209話 誤算
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「お、ようやく来やがったデス」
「あまりに退屈で眠いの」
王城前は独特の空気が漂っていた。リラ
ックスした様子で立っている2人の少女
達に対して、そんな2人を緊張した面持
ちで囲む大勢の兵士達。状況だけを鑑み
るにどちかといえば立場は逆のはずでは
あるが、そうならない要因があった。そ
れは2人に隙が一切見当たらないことと
まだ殺気すら出していないにも関わら
ず、強者独特の威圧感が放たれている為
だった。これにより、兵士達は迂闊に動
くことができず、自分達が仕える王様が
現れるのを今か今かと待つことしか出来
なかった。そして、その想いが通じたの
か、今まさに王が城の外へと姿を現した
のだった。
「随分と派手にやってくれたようだな」
王は城の破壊された部分をチラリと見な
がら、そう言った。眼光は鋭く、そこか
ら怒りが感じられる。
「お前が早く来やがらないからデス」
「こっちの貴重な時間を無駄にして欲し
くないの」
「その特徴的な外見に黒衣、それから幹
部以上が身につけているというクランマークの入った金のバッジ。なるほど、噂
通りだ……………お主ら、冒険者クラン"
黒天の星"の"桃幻鏡"スィーエルと"
紫円"レオナだろう?」
「ミー達のことを知ってやがるデスか」
「ストーカー?」
「ストーカーなんぞせんでも有名なクラ
ンの情報ぐらいは自然と耳に入る。ふん
っ。にしてもワシを前にして、その口の
利き方は大したもんだ」
「ミー達は自由を愛する冒険者。なんで
お前ごときに気を遣わないといけないデ
スか」
「おっさん、偉そうなの。あと臭そう」
「そんな安い挑発には乗らんぞ。さっさ
と用件を申さぬか。お主ら、何か目的が
あって、わざわざやって来たのだろ
う?」
「そうデス。ミー達はお前達に報告をす
る為に来たのデス」
「それならば今し方聞いた。兵士を亡き
者にし、ファンドランの暴虐から勇者を
助けたとかいうやつじゃろう?随分と大
きな口を叩いたもんじゃの」
「それが全てじゃないデス。その先は直
接お前に言おうと思って、待ってたデ
ス」
「ほぅ。聞こうか」
その直後、辺りにとてつもない殺気が放
たれた。兵士達は身体が恐怖でガタガタ
と震え出し血の気が引いていった。圧倒
的な実力差を感じ、この時初めて世の中
には絶対に逆らってはいけない相手がい
ると本能で学んだ。
「もしも勇者を連れ戻し、また酷い目に
遭わせようなんて考えやがったら、どう
なるか分かるデスね?」
「もうサクヤはボク達の仲間なの」
「ふ、ふんっ!そんな脅しには屈しない
ぞ!今すぐお前達のアジトまで乗り込ん
で…………」
「この国を出てすぐ近くに大きな平原が
あるデス。戦うと言うのなら、そこを使
うデス」
「一生懸命、編成した軍隊を連れてくる
といいの。国民はみんな悪くないから、
巻き込みたくないの」
「な、何を勝手なことを!そんなのに素
直に従っ…………」
続く言葉は彼女達には届かなかった。魔
法でその場から転移していなくなったか
らだ。後に残されたのは呆然とする兵士
達と王。しかし、それも数10秒。再び
起動した王は大きな声でこう指示を出し
た。
「おい!急いで平原へと全兵力を向かわ
せろ!何としてでも勇者を取り返すの
だ!」
――――――――――――――――――
「王様、本当に大丈夫なのでしょう
か?」
「何を今更。大体、幹部とは言っても序
列は下の方じゃないか。それに見ろ。た
った2人だ。馬鹿め。そんな人数で一国
の軍隊と殺り合える訳がなかろう」
「で、ですが!実際、彼らの怒りを買っ
て滅びた国もあると聞きます。普段は害
がないが敵に回すととても厄介だと」
「ふんっ!こちらの兵力を見よ。ほれ、
ざっと1万程か。お主はこれでもまだ負
ける可能性があると申すか」
「で、ですが!」
「他国に頭を下げて苦労して掻き集めた
のじゃぞ!今更、引き返せるか!いい
か?勝てばいいんじゃ!勝てば!」
そう言って胸を張る王様。呑気に見物し
ようと戦場まで足を運んだのはいいが、
自分達が負けるとは1ミリも思っていな
い様子だった。それから5分後、開戦の
合図と共に動き出した兵士達。中には冒
険者ランクがAやBにも届こうかという
者もいた。しかし、そんなことは彼女達
にとってはどうでもいいことだった。
「ぐわああああ!」
「な、何だ!」
「や、やめろ~~~!」
スィーエルが大剣を薙ぎ払ったり、振り
下ろす度に余波で500人単位の兵士が
塵となる。同様にレオナの手から放たれ
た円月輪も同じ数だけ
兵士達を屠っていった。
「ゆ、夢でも見ているのか?」
そこからも魔法や剣技が放たれ、阿鼻叫
喚の地獄絵図。結果がどうなったのかは
言うまでもないだろう。
「あまりに退屈で眠いの」
王城前は独特の空気が漂っていた。リラ
ックスした様子で立っている2人の少女
達に対して、そんな2人を緊張した面持
ちで囲む大勢の兵士達。状況だけを鑑み
るにどちかといえば立場は逆のはずでは
あるが、そうならない要因があった。そ
れは2人に隙が一切見当たらないことと
まだ殺気すら出していないにも関わら
ず、強者独特の威圧感が放たれている為
だった。これにより、兵士達は迂闊に動
くことができず、自分達が仕える王様が
現れるのを今か今かと待つことしか出来
なかった。そして、その想いが通じたの
か、今まさに王が城の外へと姿を現した
のだった。
「随分と派手にやってくれたようだな」
王は城の破壊された部分をチラリと見な
がら、そう言った。眼光は鋭く、そこか
ら怒りが感じられる。
「お前が早く来やがらないからデス」
「こっちの貴重な時間を無駄にして欲し
くないの」
「その特徴的な外見に黒衣、それから幹
部以上が身につけているというクランマークの入った金のバッジ。なるほど、噂
通りだ……………お主ら、冒険者クラン"
黒天の星"の"桃幻鏡"スィーエルと"
紫円"レオナだろう?」
「ミー達のことを知ってやがるデスか」
「ストーカー?」
「ストーカーなんぞせんでも有名なクラ
ンの情報ぐらいは自然と耳に入る。ふん
っ。にしてもワシを前にして、その口の
利き方は大したもんだ」
「ミー達は自由を愛する冒険者。なんで
お前ごときに気を遣わないといけないデ
スか」
「おっさん、偉そうなの。あと臭そう」
「そんな安い挑発には乗らんぞ。さっさ
と用件を申さぬか。お主ら、何か目的が
あって、わざわざやって来たのだろ
う?」
「そうデス。ミー達はお前達に報告をす
る為に来たのデス」
「それならば今し方聞いた。兵士を亡き
者にし、ファンドランの暴虐から勇者を
助けたとかいうやつじゃろう?随分と大
きな口を叩いたもんじゃの」
「それが全てじゃないデス。その先は直
接お前に言おうと思って、待ってたデ
ス」
「ほぅ。聞こうか」
その直後、辺りにとてつもない殺気が放
たれた。兵士達は身体が恐怖でガタガタ
と震え出し血の気が引いていった。圧倒
的な実力差を感じ、この時初めて世の中
には絶対に逆らってはいけない相手がい
ると本能で学んだ。
「もしも勇者を連れ戻し、また酷い目に
遭わせようなんて考えやがったら、どう
なるか分かるデスね?」
「もうサクヤはボク達の仲間なの」
「ふ、ふんっ!そんな脅しには屈しない
ぞ!今すぐお前達のアジトまで乗り込ん
で…………」
「この国を出てすぐ近くに大きな平原が
あるデス。戦うと言うのなら、そこを使
うデス」
「一生懸命、編成した軍隊を連れてくる
といいの。国民はみんな悪くないから、
巻き込みたくないの」
「な、何を勝手なことを!そんなのに素
直に従っ…………」
続く言葉は彼女達には届かなかった。魔
法でその場から転移していなくなったか
らだ。後に残されたのは呆然とする兵士
達と王。しかし、それも数10秒。再び
起動した王は大きな声でこう指示を出し
た。
「おい!急いで平原へと全兵力を向かわ
せろ!何としてでも勇者を取り返すの
だ!」
――――――――――――――――――
「王様、本当に大丈夫なのでしょう
か?」
「何を今更。大体、幹部とは言っても序
列は下の方じゃないか。それに見ろ。た
った2人だ。馬鹿め。そんな人数で一国
の軍隊と殺り合える訳がなかろう」
「で、ですが!実際、彼らの怒りを買っ
て滅びた国もあると聞きます。普段は害
がないが敵に回すととても厄介だと」
「ふんっ!こちらの兵力を見よ。ほれ、
ざっと1万程か。お主はこれでもまだ負
ける可能性があると申すか」
「で、ですが!」
「他国に頭を下げて苦労して掻き集めた
のじゃぞ!今更、引き返せるか!いい
か?勝てばいいんじゃ!勝てば!」
そう言って胸を張る王様。呑気に見物し
ようと戦場まで足を運んだのはいいが、
自分達が負けるとは1ミリも思っていな
い様子だった。それから5分後、開戦の
合図と共に動き出した兵士達。中には冒
険者ランクがAやBにも届こうかという
者もいた。しかし、そんなことは彼女達
にとってはどうでもいいことだった。
「ぐわああああ!」
「な、何だ!」
「や、やめろ~~~!」
スィーエルが大剣を薙ぎ払ったり、振り
下ろす度に余波で500人単位の兵士が
塵となる。同様にレオナの手から放たれ
た円月輪も同じ数だけ
兵士達を屠っていった。
「ゆ、夢でも見ているのか?」
そこからも魔法や剣技が放たれ、阿鼻叫
喚の地獄絵図。結果がどうなったのかは
言うまでもないだろう。
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