俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第188話 決勝

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「我々を今までの相手と一緒にするなよ。我々はお前達を甘く見ないし、油断も一切しない。全力を尽くして、勝利を掴んでみせる!」

「楽しみにしているよ」

いよいよ決勝戦が行われる。既に舞台上では相手チームのリーダーとクリスが何やら言葉を交わし、他の者は準備運動を始めている。皆、気の引き締まった表情をしており、この決勝戦で何が何でも勝利を収めたいという意気込みが感じられた。

「ただいまより、竜闘祭の決勝戦を行います!ここまで勝ち残ったのは今大会のダークホースであるセントラル魔法学院のチーム"黒椿"と毎年の優勝候補である竜騎学院のチーム"牙竜"!さぁ、今回も予想のつかない戦いが繰り広げられると思いますが果たして、どうなるのか!?では両チームとも準備はよろしいでしょうか?お互いに正々堂々と悔いの残らないように頑張って下さい!……………それでは試合開始!」






――――――――――――――――――





最初に動き出したのはチーム"牙竜"の方だった。勢い良く飛び出した前衛数人が真っ直ぐに敵チームへと突っ込んでいく。これに対して、真っ先に対処に当たったのが遊撃の役割を担っているセーラだった。彼女はこれまでのも含めた3戦全てに参加しており、色々な敵と戦う際の経験値が溜まっていた。その為、今回はその経験を活かして、向かってきた前衛相手にどこまでできるのか確認するつもりだったのだ。そして、その結果はというと……………

「ぐぅっ!?」

「くらえ!………ぐはっ!?」

「な、何故当たらない!?」

「"身体強化"!これで戦え…………がはっ!」

1人で数人を相手することが可能になっていた。とは言っても相手チームも優勝候補だけあって、そこそこ強かった。並大抵の相手であれば、もっと多くの生徒達相手に立ち回ることができたし、何ならもう試合が終わっている可能性すらある。しかし、そんなすぐに決着がつくことはなく、セーラを相手している以外の生徒達は他を狙い始めて、攻撃へと入っていた。

「「"火球"」」

「"火球"」

「「"風襲"」」

「"風襲"」

「「「"剣閃"」」」

「"剣閃"」

あちらこちらで同じ魔法や技が飛び交い、それらが相殺または貫通して、状況を少しずつ変えていく。今までのように圧倒的な勝利とまではいかず、軽く傷を負う者まで出始めた。別に手加減をしている訳ではない。単純にチーム"牙竜"のポテンシャルが今までの対戦相手と比べて高いだけのことなのだ。

「ぐっ…………"火の…………"がっ!?」

しかし、必死の攻防がいつまでも続く訳ではない。次第に天秤はどちらかに傾き出していた。

「そ、総員退避!」

リーダーの掛け声で一度距離を取るチーム"牙竜"。一転して攻めから守りへと変わり、一旦体勢を整えようと考えたようだ。だが、それは同時に敵に攻めを許してしまうということでもある。現にこれ幸いとチーム"黒椿"は皆が顔を見合わせて、頷き合い……………

「じゃあ、次はこっちの番だね」

一気に攻めへと転じたのだった。






――――――――――――――――――





「第67回竜闘祭の優勝者は………………セントラル魔法学院のチーム"黒椿"だ~~~!」

「「「うおおお~~~!!!」」」

司会が優勝者を述べた直後、会場全体が揺れた。興奮冷めやらず、歓声はどこまでも響いていく。よく晴れた天気の下、彼らはとても輝いていた。そして、様々な反応が見られる中、司会は優勝者へと話を振る。

「見事優勝されました皆さん、お疲れ様でした!代表して、リーダーのクリスさん……………何か一言頂けないでしょうか?」

司会としては締めの一言が熱いものや感動的なものとなることを望んでの質問だった。というよりもこの状況においてはそれ以外ほぼないと踏んでいた。だが、クリスから返ってきた言葉はこの場にいるほとんどの者が度肝を抜かれるような内容だった。

「この度は竜闘祭へ参加させて頂き、誠にありがとうございます。長ったらしい感想を今、この場で語るのは気分ではないので控えさせて頂きます。代わりといってはなんですが、とあるご報告をさせて頂ければと思います」

「…………と言いますと?」



「実は………………僕達、チーム"黒椿"改めセントラル魔法学院2ーHは全員、これから冒険者として活動していきたいと思っています」
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