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第9章 フォレスト国
第146話 理想
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「お久しぶりでございます、お兄様方」
「お、お前…………」
「本当にリースなのか?」
「はい。正真正銘、私はリース・フォレスト本人にございます。決して偽物などではございません」
王子達から思わず口をついて出た驚きと疑いの言葉は目の前にいる件の人物が偽物だと疑ってかかっていることに起因している訳ではなかった。それは単純にリースの雰囲気が大きく変わりすぎていた為である。落ち着きと上品さが以前とは比べ物にならないぐらいになっており、ただ立っているだけで絵になるような煌びやかさがそこにはあった。およそ同居しないはずの儚さと力強さもそこから感じ取ることができ、彼女が少し動くだけでそれを目で追ってしまうような美しさも兼ね備えていた。
「たった1ヶ月でどうしてこうも…………」
口から零れてくるのは制御しきれない本音であり、現在の状態がいかに異様であるかをはっきりと示していた。城を出て行く直前に見た時は幼さと不安の色が強い顔をしており、どこか辿々しい立ち振る舞いであった。それが今ではどうだ。この目の前に立つ少女は今までとは打って変わって自信に満ち溢れた表情をしており、漂う緊張感をものともせずにしっかりと立っている。一体彼女に何があったのか。今すぐにでも問いただしたい衝動に駆られ、ディースは思わず口を開いた。
「リース、お前に一体何が……………」
「フォレスト王!」
「何だ?」
しかし、それはリースの一声によってかき消されてしまった。タイミングが悪かったのか、はたまた自分のことなど眼中にないのか。どちらにせよ、発言がなかったことにされた悔しさと恥ずかしさからディースは顔が赤くなった。それを見たエースはしたり顔でどこか満足そうにしている。
「どうか私にも真意を明かすことをお許し下さい!」
「何を言うのかと思えば……………当然だ。お前も歴とした後継者候補。ディースとエース同様、その権利はお前にもある」
「ご配慮痛み入ります」
「うむ。では聞かせてもらおうか。お前の真意を」
「はい。私が目指す国家は……………平和な国家です」
「は?」
「平和……………だと?」
険しい顔をする王子達を無視してリースは続ける。
「私が王になった暁には誰もが毎日を幸せに生きていける、そんな国にしていきたいと思っています。とは言ってもそんなことはただの綺麗事。理想が高すぎると皆、思うことでしょう。並大抵の運営ではその為に多くの代償を支払うことになりますし、デメリットが大きいです。しかし、私はそれでも目指したいのです!人々が手を取り合って笑い合う素晴らしい国家を……………たとえ未だかつて前例がなかったとしても」
「ふ、ふざけるな!そんな御伽噺のようなことが現実でできると思うのか!」
「そうだ!俺達を馬鹿にしているのか!…………いきなり、現れて何を言い出すのかと思えば」
「ではお聞き致しますが、お兄様方の目指される国家が上手く存続していくとお思いですか?」
「「当たり前だろ!そんなの」」
「そこには国民と冒険者の方々の暮らしや感情は含まれておりますか?」
「なっ!?」
「そ、それは…………」
「お兄様方の考え方では国の者全員を肉体的または精神的に疲弊させ、困窮させ、人として幸せに生きていくという権利すらも奪ってしまいます。そこまでして存在する国家に価値などあるのでしょうか?」
「「……………」」
「だから、私はたとえ周りから変な目で見られようが、頭のおかしい者だと蔑まれようがこの考え方を貫き通したいんです」
「だ、だがお前も先程言っていたではないか!そんなのは綺麗事だと!理想が高すぎると!勇気と無謀は違うぞ!できもしないことに無策で突っ込むのは大馬鹿者のすることだ!」
「私はきっとできると信じておりますし、それに……………無策という訳でもありません」
「何?」
「だって、そんな国家運営に関わるのは私が幼い頃より尊敬し信頼しているディースお兄様とエースお兄様ですから!ほら、無策ではないでしょう?」
「「…………は?」」
「お、お前…………」
「本当にリースなのか?」
「はい。正真正銘、私はリース・フォレスト本人にございます。決して偽物などではございません」
王子達から思わず口をついて出た驚きと疑いの言葉は目の前にいる件の人物が偽物だと疑ってかかっていることに起因している訳ではなかった。それは単純にリースの雰囲気が大きく変わりすぎていた為である。落ち着きと上品さが以前とは比べ物にならないぐらいになっており、ただ立っているだけで絵になるような煌びやかさがそこにはあった。およそ同居しないはずの儚さと力強さもそこから感じ取ることができ、彼女が少し動くだけでそれを目で追ってしまうような美しさも兼ね備えていた。
「たった1ヶ月でどうしてこうも…………」
口から零れてくるのは制御しきれない本音であり、現在の状態がいかに異様であるかをはっきりと示していた。城を出て行く直前に見た時は幼さと不安の色が強い顔をしており、どこか辿々しい立ち振る舞いであった。それが今ではどうだ。この目の前に立つ少女は今までとは打って変わって自信に満ち溢れた表情をしており、漂う緊張感をものともせずにしっかりと立っている。一体彼女に何があったのか。今すぐにでも問いただしたい衝動に駆られ、ディースは思わず口を開いた。
「リース、お前に一体何が……………」
「フォレスト王!」
「何だ?」
しかし、それはリースの一声によってかき消されてしまった。タイミングが悪かったのか、はたまた自分のことなど眼中にないのか。どちらにせよ、発言がなかったことにされた悔しさと恥ずかしさからディースは顔が赤くなった。それを見たエースはしたり顔でどこか満足そうにしている。
「どうか私にも真意を明かすことをお許し下さい!」
「何を言うのかと思えば……………当然だ。お前も歴とした後継者候補。ディースとエース同様、その権利はお前にもある」
「ご配慮痛み入ります」
「うむ。では聞かせてもらおうか。お前の真意を」
「はい。私が目指す国家は……………平和な国家です」
「は?」
「平和……………だと?」
険しい顔をする王子達を無視してリースは続ける。
「私が王になった暁には誰もが毎日を幸せに生きていける、そんな国にしていきたいと思っています。とは言ってもそんなことはただの綺麗事。理想が高すぎると皆、思うことでしょう。並大抵の運営ではその為に多くの代償を支払うことになりますし、デメリットが大きいです。しかし、私はそれでも目指したいのです!人々が手を取り合って笑い合う素晴らしい国家を……………たとえ未だかつて前例がなかったとしても」
「ふ、ふざけるな!そんな御伽噺のようなことが現実でできると思うのか!」
「そうだ!俺達を馬鹿にしているのか!…………いきなり、現れて何を言い出すのかと思えば」
「ではお聞き致しますが、お兄様方の目指される国家が上手く存続していくとお思いですか?」
「「当たり前だろ!そんなの」」
「そこには国民と冒険者の方々の暮らしや感情は含まれておりますか?」
「なっ!?」
「そ、それは…………」
「お兄様方の考え方では国の者全員を肉体的または精神的に疲弊させ、困窮させ、人として幸せに生きていくという権利すらも奪ってしまいます。そこまでして存在する国家に価値などあるのでしょうか?」
「「……………」」
「だから、私はたとえ周りから変な目で見られようが、頭のおかしい者だと蔑まれようがこの考え方を貫き通したいんです」
「だ、だがお前も先程言っていたではないか!そんなのは綺麗事だと!理想が高すぎると!勇気と無謀は違うぞ!できもしないことに無策で突っ込むのは大馬鹿者のすることだ!」
「私はきっとできると信じておりますし、それに……………無策という訳でもありません」
「何?」
「だって、そんな国家運営に関わるのは私が幼い頃より尊敬し信頼しているディースお兄様とエースお兄様ですから!ほら、無策ではないでしょう?」
「「…………は?」」
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