88 / 92
王宮の崩壊②
しおりを挟む
誰かと思って見てみたら、なんと王様。騎士たちに混じって全然目立たなかったよ。声を上げた事で全員の視線が王に刺さった。誰一人として頭を下げるものがいない。何せ俺がディスったばかりだからね。感情に任せて死刑とか宣った事、後悔させてやるよ。ここまで、ただ伯爵領を盛り上げて国に貢献していただけだと思ったら大間違いだ。
「これは、これは。国王陛下。平民になった俺たちが国を出ることに許可はいらないはずですよね」
「わ、わしがいつお前達の縁切りを許したのだ!許さんぞ!」
「陛下は昨日、側近の仕事はクビだ、とっとと王宮から出て行け、2度と来るなと仰いましたがお忘れですか?嘔吐もあろう方が言動をコロコロ変えては民はついて来ませんよ。
それに俺は26歳のいい大人です。養子縁組の解消にわざわざ王の許可は要りません。親父様…ハイベック伯爵のサインもいただいています。それに書類はすでに提出済です」
とは言え、親父様はその書類にサインしたこともわかっていないだろうけどね。例の瘴気の森を貰い受けた時のものだから。金勘定をしただけでちゃんと書類を読まなかったのはあちらの不備だ。ただしアルヴィーナについては実は何の保証もない。婚姻届もまだ出していないからだ。そのためにもここではっきりさせなければ。
「ア、アルヴィーナ嬢は渡さん!お前はどこへでも行くがいい!衛兵!騎士ども!誰でもいい!アルヴィーナ嬢を保護しろ!」
王が声を荒げて喚き散らすが、誰もが王を睨みつけた。
「この騒ぎになっても、自分だけ部屋に立てこもって何もしなかった能無しが」
「カレンティエ様がいなければ、いつでもどこでも侍女を引き込もうとしていた蜘蛛男が」
「アルヴィーナ様を馬車馬のように働かせ自分だけは高みの見物気取りか」
「急事に何の指示も出せず、何が王か」
不満は次の不満を呼び、その声は次第に怒りを帯びてくる。次第に不平不満が渦巻き、王は逆に囲まれてしまった。王を守る者は誰一人としていない。
「あなた方、王族との魔力契約では、アルヴィーナの好みになるよう殿下を再教育すると言う事だった。その件で、アルヴィーナが拒否した場合と、シンファエル殿下が問題を起こした場合は契約は解消されると言ったではないですか!それもお忘れですか!それとも契約を反故にするのなら罰則があることもお忘れか!」
宰相と王妃は契約を解消する前に逃げた。もし王がこの契約を反故にすると言うのであれば、3人とも罪人の焼印がつく。解消するしかないはずだ。
「エヴァン殿とアルヴィーナ様が出て行くというのなら俺たちも後に続く!」
「そうだ!騎士は皆アルヴィーナ様に誓いを立てた!我が身はどこまでもアルヴィーナ様とともに!」
「アルヴィーナ様の幸せを私たち王宮侍女は見守ってきました!どんな下働きであろうと名前を覚えていただき優しくして下さったアルヴィーナ様にお支えするのは私の誇りですわ!」
「エヴァン殿の画期的な発明にどれだけ助けられたことか!テイマーの仕事がなければ僕の家族は路頭に迷っていた!伯爵領でも年老いた母は川まで水汲みをせずに済んだのだ!それがどれほどの助けになったか、平民でなければわからない!」
「それだけじゃないわ!あの臭い王子の面倒をお一人で見て下さった!誰もが吐く匂いを一週間もたたないうちに消して下さったのよ!」
俺は唖然とした。
このままだと伯爵領の暴動のようになってしまう。すでに王は四面楚歌で汗だくになっている。チラリと王子を見れば、上半身半分がスカイの口の中に入っていた。
スカイ…。それは気を利かせてくれたのかな?聞かせたくないんだね?
「アルヴィーナ…どうする?放っておくと国王、殺されそうだけど」
「そうだね。それはまあいいんだけど、」
えっ?良いの?良いのか?
「それ以上にここにいる全員ついて来るとか、やめてもらいたいよね」
「あ、それもあったな…」
ついて来るってどこまでついて来るつもりなのか。瘴気の森とか、無理だろ?伯爵領だって、一気にこれだけの人間は受け入れ態勢にないし。
さあ、王様。どうする?ここでどれだけアルヴィーナに縋っても、あんたについていく国民がいなさそうだけど?
「これは、これは。国王陛下。平民になった俺たちが国を出ることに許可はいらないはずですよね」
「わ、わしがいつお前達の縁切りを許したのだ!許さんぞ!」
「陛下は昨日、側近の仕事はクビだ、とっとと王宮から出て行け、2度と来るなと仰いましたがお忘れですか?嘔吐もあろう方が言動をコロコロ変えては民はついて来ませんよ。
それに俺は26歳のいい大人です。養子縁組の解消にわざわざ王の許可は要りません。親父様…ハイベック伯爵のサインもいただいています。それに書類はすでに提出済です」
とは言え、親父様はその書類にサインしたこともわかっていないだろうけどね。例の瘴気の森を貰い受けた時のものだから。金勘定をしただけでちゃんと書類を読まなかったのはあちらの不備だ。ただしアルヴィーナについては実は何の保証もない。婚姻届もまだ出していないからだ。そのためにもここではっきりさせなければ。
「ア、アルヴィーナ嬢は渡さん!お前はどこへでも行くがいい!衛兵!騎士ども!誰でもいい!アルヴィーナ嬢を保護しろ!」
王が声を荒げて喚き散らすが、誰もが王を睨みつけた。
「この騒ぎになっても、自分だけ部屋に立てこもって何もしなかった能無しが」
「カレンティエ様がいなければ、いつでもどこでも侍女を引き込もうとしていた蜘蛛男が」
「アルヴィーナ様を馬車馬のように働かせ自分だけは高みの見物気取りか」
「急事に何の指示も出せず、何が王か」
不満は次の不満を呼び、その声は次第に怒りを帯びてくる。次第に不平不満が渦巻き、王は逆に囲まれてしまった。王を守る者は誰一人としていない。
「あなた方、王族との魔力契約では、アルヴィーナの好みになるよう殿下を再教育すると言う事だった。その件で、アルヴィーナが拒否した場合と、シンファエル殿下が問題を起こした場合は契約は解消されると言ったではないですか!それもお忘れですか!それとも契約を反故にするのなら罰則があることもお忘れか!」
宰相と王妃は契約を解消する前に逃げた。もし王がこの契約を反故にすると言うのであれば、3人とも罪人の焼印がつく。解消するしかないはずだ。
「エヴァン殿とアルヴィーナ様が出て行くというのなら俺たちも後に続く!」
「そうだ!騎士は皆アルヴィーナ様に誓いを立てた!我が身はどこまでもアルヴィーナ様とともに!」
「アルヴィーナ様の幸せを私たち王宮侍女は見守ってきました!どんな下働きであろうと名前を覚えていただき優しくして下さったアルヴィーナ様にお支えするのは私の誇りですわ!」
「エヴァン殿の画期的な発明にどれだけ助けられたことか!テイマーの仕事がなければ僕の家族は路頭に迷っていた!伯爵領でも年老いた母は川まで水汲みをせずに済んだのだ!それがどれほどの助けになったか、平民でなければわからない!」
「それだけじゃないわ!あの臭い王子の面倒をお一人で見て下さった!誰もが吐く匂いを一週間もたたないうちに消して下さったのよ!」
俺は唖然とした。
このままだと伯爵領の暴動のようになってしまう。すでに王は四面楚歌で汗だくになっている。チラリと王子を見れば、上半身半分がスカイの口の中に入っていた。
スカイ…。それは気を利かせてくれたのかな?聞かせたくないんだね?
「アルヴィーナ…どうする?放っておくと国王、殺されそうだけど」
「そうだね。それはまあいいんだけど、」
えっ?良いの?良いのか?
「それ以上にここにいる全員ついて来るとか、やめてもらいたいよね」
「あ、それもあったな…」
ついて来るってどこまでついて来るつもりなのか。瘴気の森とか、無理だろ?伯爵領だって、一気にこれだけの人間は受け入れ態勢にないし。
さあ、王様。どうする?ここでどれだけアルヴィーナに縋っても、あんたについていく国民がいなさそうだけど?
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
奴隷と呼ばれた俺、追放先で無双する
宮富タマジ
ファンタジー
「レオ、お前は奴隷なのだから、勇者パーティから追放する!」
王子アレンは鋭い声で叫んだ。
奴隷でありながら、勇者パーティの最強として君臨していたレオだったが。
王子アレンを中心とした新たな勇者パーティが結成されることになり
レオは追放される運命に陥った。
王子アレンは続けて
「レオの身分は奴隷なので、パーティのイメージを損なう!
国民の前では王族だけの勇者パーティがふさわしい」
と主張したのだった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる