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ちょっと無謀かな
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「と言うわけで、親父様。俺はこれからボンクラ王子をアルヴィーナの好みに仕上げると言う大義を国から任されましたので、伯爵家の仕事を別の者に託す許可をいただきたく、お願いにあがりました」
「なるほど。それで期間は?」
「王子が成人されアルヴィーナと婚姻を結ばれる前までです」
「約2年か……。報酬は?」
「……私の欲しいものを、と」
「それは?」
「まだ考えておりません」
これは俺に対する報酬であって、伯爵家に対する報酬ではない。
金にしろとか爵位にしろとか言われても無視だからな。
俺は少し身構えたが、親父様はふむ、と考えてそれ以上突っ込まなかった。
どうしたことだ。この金の亡者のような伯爵が金を口に出さないとは。
「では、こうしよう。お前が伯爵家のために働けない1年間、国へはその損害賠償金を請求する。もしお前が王子を調教することができないのであれば、お前はそれを倍にして国に返済し、身を粉にして生涯伯爵家のために働け」
「……」
うん?俺がそれを倍返し?んで、生涯伯爵家のために働く?
「お前がうまく王子を調教してアルヴィーナがそれを認めれば、お前に選択肢をやる。このまま伯爵家の息子として領地のために働くか、王子の側近として働き、損害賠償金をわしに払うかだ」
「……」
いやいやいや、どっちもおかしいじゃねぇか。
ってか、国に損害賠償金を請求するってなんだ?
国のために働けるってのは名誉なことじゃないのか?
やってることは調教師と同じだけど、立場は側近だぞ?
しかも失敗したら、受け取った賠償金の倍額を俺が払って、生涯伯爵家のために俺が身を粉にして働く?
ふざけんな。
とはいえ、俺は養子な訳だから伯爵家のために働くってのは、当然といえば当然だ。
いや、損害賠償はどう考えてもおかしいけどな。
「アルヴィーナが王妃になれば、それだけでもかなりの額の支度金や陞爵もあり得るのでは?」
「む?そうだな……そうなるとあの事業の展開も考えられるか…となると……」
ああ、また取らぬ狸の皮算用が始まってしまった。
こうなるとしばらく戻ってこないのが親父様だ。
親父様は金勘定は異常に長けているけれど、それ以外は割とどうでもいいらしい。
伯爵の爵位も「都合がいい」から使っているようなもので、なんというか金儲け以外にあまり野心がない。もらえるものはなんでももらうけどな。
俺を養子にしたのも「投資」ぐらいにしか考えていないから、息子扱いもされた覚えがない……とはいえ、別に迫害されたことも、奴隷のように扱われたこともないが。
雇うより安く済んだというのが親父様なりの考えだったらしい。
まあね、タダ働きだし。学校も俺の努力の末の奨学金だし。
でもさ、養子縁組の用意って結構金かかるんだぜ。
俺の教育にも学園に行く前まで結構な人材使ってたし。長い目で見ればっていうけど、ほんとかね。
まあ、俺としては棚からぼたもち状態だったからいいけど。
頭がいいんだか悪いんだか、わかんねーよ。
まあいい。交渉は親父様に任せておこう。
あの宰相相手にどこまで食い下がれるか、わかんねえけどな。
「おい、アルヴィーナ」
俺はアルヴィーナにもこれからの動向を告げておこうと、部屋に向かった。
「エヴァン!んっふっふ!婚約破棄してやりましたわ!王宮はどうでした?」
アルヴィーナは部屋で優雅にお茶を飲みながら、侍女とトランプをして遊んでいた。
「きゃあ、エヴァン様、いらっしゃいまし!」と侍女たちの黄色い声が聞こえたが無視する。
アルヴィーナの侍女たちはサリー、メリー、それからローリィという。どれも精鋭で(まあ、俺が訓練したんだけど)油断すればすぐに何かしら技をかけようとする。
断じて色仕掛けをかましてくるわけではない。
どこを目指しているんだか、腰にはヌンチャク、エプロンには鉄板仕込み、腕にも足にもナイフやら何やらを隠している。アルヴィーナの護衛兼侍女として任せられる女性軍だ。
「ああ。残念だけどお前、まだ破棄されてねーから。宰相から王子をお前の好みの男になるよう調教しろって言われた」
「えぇっ!?そんなバカな!計画と違うわ!」
ものすごく得意げにでかい胸を張ったアルヴィーナが、一瞬にして青ざめて頭を抱えた。
残念だったな。お前は有能すぎたらしい。おいそれとは手放してもらえねえぞ。
「計画では、『王族を婚約破棄するとは不敬罪だ!』って激昂されて、実家を追い出されて、それで私は国外追放されて晴れて平民になって自由になる予定だったのに!」
「平民?」
無理だろ、それ。俗書の読みすぎだ。
簡単に言うけど、平民って大変なんだぞ?
親父様と奥様(おふくろ様とは呼ばせてもらえなかった)がお前みたいな金蔓、そうそう手放すとは思えねえしな。
それに知らなかった俺の勉強不足だけど、王子の公務、お前全部把握してるだろ。
追放の前に口封じされるって。
「なるほど。それで期間は?」
「王子が成人されアルヴィーナと婚姻を結ばれる前までです」
「約2年か……。報酬は?」
「……私の欲しいものを、と」
「それは?」
「まだ考えておりません」
これは俺に対する報酬であって、伯爵家に対する報酬ではない。
金にしろとか爵位にしろとか言われても無視だからな。
俺は少し身構えたが、親父様はふむ、と考えてそれ以上突っ込まなかった。
どうしたことだ。この金の亡者のような伯爵が金を口に出さないとは。
「では、こうしよう。お前が伯爵家のために働けない1年間、国へはその損害賠償金を請求する。もしお前が王子を調教することができないのであれば、お前はそれを倍にして国に返済し、身を粉にして生涯伯爵家のために働け」
「……」
うん?俺がそれを倍返し?んで、生涯伯爵家のために働く?
「お前がうまく王子を調教してアルヴィーナがそれを認めれば、お前に選択肢をやる。このまま伯爵家の息子として領地のために働くか、王子の側近として働き、損害賠償金をわしに払うかだ」
「……」
いやいやいや、どっちもおかしいじゃねぇか。
ってか、国に損害賠償金を請求するってなんだ?
国のために働けるってのは名誉なことじゃないのか?
やってることは調教師と同じだけど、立場は側近だぞ?
しかも失敗したら、受け取った賠償金の倍額を俺が払って、生涯伯爵家のために俺が身を粉にして働く?
ふざけんな。
とはいえ、俺は養子な訳だから伯爵家のために働くってのは、当然といえば当然だ。
いや、損害賠償はどう考えてもおかしいけどな。
「アルヴィーナが王妃になれば、それだけでもかなりの額の支度金や陞爵もあり得るのでは?」
「む?そうだな……そうなるとあの事業の展開も考えられるか…となると……」
ああ、また取らぬ狸の皮算用が始まってしまった。
こうなるとしばらく戻ってこないのが親父様だ。
親父様は金勘定は異常に長けているけれど、それ以外は割とどうでもいいらしい。
伯爵の爵位も「都合がいい」から使っているようなもので、なんというか金儲け以外にあまり野心がない。もらえるものはなんでももらうけどな。
俺を養子にしたのも「投資」ぐらいにしか考えていないから、息子扱いもされた覚えがない……とはいえ、別に迫害されたことも、奴隷のように扱われたこともないが。
雇うより安く済んだというのが親父様なりの考えだったらしい。
まあね、タダ働きだし。学校も俺の努力の末の奨学金だし。
でもさ、養子縁組の用意って結構金かかるんだぜ。
俺の教育にも学園に行く前まで結構な人材使ってたし。長い目で見ればっていうけど、ほんとかね。
まあ、俺としては棚からぼたもち状態だったからいいけど。
頭がいいんだか悪いんだか、わかんねーよ。
まあいい。交渉は親父様に任せておこう。
あの宰相相手にどこまで食い下がれるか、わかんねえけどな。
「おい、アルヴィーナ」
俺はアルヴィーナにもこれからの動向を告げておこうと、部屋に向かった。
「エヴァン!んっふっふ!婚約破棄してやりましたわ!王宮はどうでした?」
アルヴィーナは部屋で優雅にお茶を飲みながら、侍女とトランプをして遊んでいた。
「きゃあ、エヴァン様、いらっしゃいまし!」と侍女たちの黄色い声が聞こえたが無視する。
アルヴィーナの侍女たちはサリー、メリー、それからローリィという。どれも精鋭で(まあ、俺が訓練したんだけど)油断すればすぐに何かしら技をかけようとする。
断じて色仕掛けをかましてくるわけではない。
どこを目指しているんだか、腰にはヌンチャク、エプロンには鉄板仕込み、腕にも足にもナイフやら何やらを隠している。アルヴィーナの護衛兼侍女として任せられる女性軍だ。
「ああ。残念だけどお前、まだ破棄されてねーから。宰相から王子をお前の好みの男になるよう調教しろって言われた」
「えぇっ!?そんなバカな!計画と違うわ!」
ものすごく得意げにでかい胸を張ったアルヴィーナが、一瞬にして青ざめて頭を抱えた。
残念だったな。お前は有能すぎたらしい。おいそれとは手放してもらえねえぞ。
「計画では、『王族を婚約破棄するとは不敬罪だ!』って激昂されて、実家を追い出されて、それで私は国外追放されて晴れて平民になって自由になる予定だったのに!」
「平民?」
無理だろ、それ。俗書の読みすぎだ。
簡単に言うけど、平民って大変なんだぞ?
親父様と奥様(おふくろ様とは呼ばせてもらえなかった)がお前みたいな金蔓、そうそう手放すとは思えねえしな。
それに知らなかった俺の勉強不足だけど、王子の公務、お前全部把握してるだろ。
追放の前に口封じされるって。
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