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ウェスは、人の世界では小柄な男である。
人の世界では、というのは実はウェスは獣人だからだ。
ウェスの出身はケンタウリ族。いわゆる半人半馬が通常だ。
ケンタウリ族はナワバリ意識が強く、なまじっか頭がいいが故に他族を馬鹿にした態度を取るのが嫌われる要素にもなっているのだが、ウェスは広い世界が見たかった。
引きこもりで、他族と交わらない変人ばかりと呼ばれているケンタウリ族だが、ウェスは愛想が良い。何もわざわざ嫌われるような真似をしなくても、と思いながらも世渡りは下手くそで、野垂れ死する一歩手前で今の師匠、賢者に拾われた。以来、賢者を目指しているわけだが、師匠が手放してくれないのだ。
170cmそこそこの身長に青みの強い黒髪という草食動物のような、あまり冴えない容姿をしていると自負している。何せ師匠は魔族であるからして、190cmを超えるし空飛ぶし、兄弟子に至っては巨人族で3メートルを超えるし岩をも噛み砕く。だからこそ、採取などの地味な作業を嫌がり、ウェスに任せきりなのだ。
とはいえ、魔法が使えるこの世界で、ウェスは背の高さや筋肉などさほど気にすることはなく、むしろ小さいがため細かい作業も得意だった。森の中も半人半馬になれば、全く問題はないし、魔力循環をして人間の姿になれば、街に出ても邪険にされることもない。
実力はあるのに、万年賢者の弟子という不甲斐ない蔑称を持つウェスは、このレースで『独立』を願う予定である。立派な一人前の賢者になるには、賢者の石を作らなければならないが、使い勝手の良いウェスを師匠が手放したく無いがため、作ろうとするたびに邪魔をしてくるのだ。材料だって時間だって豊富にあるわけでもないのに、必死になって集めた材料を兄弟子に潰されたり、作ってる最中にお使いを頼まれたり、出来上がった石を隠されたり。いい加減「やめてやる!」とも思うのだが、ここで賢者から失格をもらうと、もう賢者になれるチャンスもない。別の賢者に弟子入りという資格すら奪われるのだから。
というわけで、ウェスはこの生死をかけた耐久レースに全てをかけることにしたのだ。
このタブレットも自分で錬金したものである。そのうちもっと細かい情報も打ち出せるものを作りたいが、今回はこれでことが済むはずだ。
そんなわけで転移ゲートを潜り抜けいくつかの世界を渡り、ようやく桃華を見つけた。
名前:大林桃華(♀)
年齢:16歳(高校二年生)
種族:人族
性格:温和、短気、人情深い、チョロい、時々凶暴
嗜好:可愛いもの、甘いもの、小さいもの、食べ物全般
スキル:武道全般、ダンス、威圧、身体強化、覆面獣化(猫族)、丸呑み、バーサーカー
人族と言う割に、よくわからないが凄いスキルの持ち主である。しかも師匠並みにでかい。温和で短気、時々凶暴と言うのも気になるが、チョロいらしく話は聞いてくれそうだ。
いきなりキレられて「お巡りさん、この人、人攫いですよー!」とか叫ばれても困るし、殴りかかってこられるのも怖い。この体躯でバーサーカー状態になられると、ちょっとやばい。
「この世界、魔力持ちはいないよね?獣化のスキルって、一体…あ、覆面が猫面だからか?どちらかっていうと熊っぽいんだけど?」
どうしようか、と考えるものの、他に『覆面女子高生』で『100kg超え』は簡単に見つからなかった。あまり時間をかけてもレースに出遅れてしまう。
ひとまず、笑顔で近づいてみよう。言葉が通じなくても笑顔があれば大体通じる。
「お嬢さん、あなた体重何キロあります?」
ひくり、と頬が引き攣った。
+ー+ー+ー+
人の世界では、というのは実はウェスは獣人だからだ。
ウェスの出身はケンタウリ族。いわゆる半人半馬が通常だ。
ケンタウリ族はナワバリ意識が強く、なまじっか頭がいいが故に他族を馬鹿にした態度を取るのが嫌われる要素にもなっているのだが、ウェスは広い世界が見たかった。
引きこもりで、他族と交わらない変人ばかりと呼ばれているケンタウリ族だが、ウェスは愛想が良い。何もわざわざ嫌われるような真似をしなくても、と思いながらも世渡りは下手くそで、野垂れ死する一歩手前で今の師匠、賢者に拾われた。以来、賢者を目指しているわけだが、師匠が手放してくれないのだ。
170cmそこそこの身長に青みの強い黒髪という草食動物のような、あまり冴えない容姿をしていると自負している。何せ師匠は魔族であるからして、190cmを超えるし空飛ぶし、兄弟子に至っては巨人族で3メートルを超えるし岩をも噛み砕く。だからこそ、採取などの地味な作業を嫌がり、ウェスに任せきりなのだ。
とはいえ、魔法が使えるこの世界で、ウェスは背の高さや筋肉などさほど気にすることはなく、むしろ小さいがため細かい作業も得意だった。森の中も半人半馬になれば、全く問題はないし、魔力循環をして人間の姿になれば、街に出ても邪険にされることもない。
実力はあるのに、万年賢者の弟子という不甲斐ない蔑称を持つウェスは、このレースで『独立』を願う予定である。立派な一人前の賢者になるには、賢者の石を作らなければならないが、使い勝手の良いウェスを師匠が手放したく無いがため、作ろうとするたびに邪魔をしてくるのだ。材料だって時間だって豊富にあるわけでもないのに、必死になって集めた材料を兄弟子に潰されたり、作ってる最中にお使いを頼まれたり、出来上がった石を隠されたり。いい加減「やめてやる!」とも思うのだが、ここで賢者から失格をもらうと、もう賢者になれるチャンスもない。別の賢者に弟子入りという資格すら奪われるのだから。
というわけで、ウェスはこの生死をかけた耐久レースに全てをかけることにしたのだ。
このタブレットも自分で錬金したものである。そのうちもっと細かい情報も打ち出せるものを作りたいが、今回はこれでことが済むはずだ。
そんなわけで転移ゲートを潜り抜けいくつかの世界を渡り、ようやく桃華を見つけた。
名前:大林桃華(♀)
年齢:16歳(高校二年生)
種族:人族
性格:温和、短気、人情深い、チョロい、時々凶暴
嗜好:可愛いもの、甘いもの、小さいもの、食べ物全般
スキル:武道全般、ダンス、威圧、身体強化、覆面獣化(猫族)、丸呑み、バーサーカー
人族と言う割に、よくわからないが凄いスキルの持ち主である。しかも師匠並みにでかい。温和で短気、時々凶暴と言うのも気になるが、チョロいらしく話は聞いてくれそうだ。
いきなりキレられて「お巡りさん、この人、人攫いですよー!」とか叫ばれても困るし、殴りかかってこられるのも怖い。この体躯でバーサーカー状態になられると、ちょっとやばい。
「この世界、魔力持ちはいないよね?獣化のスキルって、一体…あ、覆面が猫面だからか?どちらかっていうと熊っぽいんだけど?」
どうしようか、と考えるものの、他に『覆面女子高生』で『100kg超え』は簡単に見つからなかった。あまり時間をかけてもレースに出遅れてしまう。
ひとまず、笑顔で近づいてみよう。言葉が通じなくても笑顔があれば大体通じる。
「お嬢さん、あなた体重何キロあります?」
ひくり、と頬が引き攣った。
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