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レオンハルト・ツヴァイク襲撃事件6

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「レオンハルト…ツヴァイク…」

 その言葉は、誰が発したものだったか。ひょっとしたら、ローエングリンを除く襲撃者5人全員が思わず呟いてしまった言葉だったかもしれない。この5人の中には、レオンハルトの顔を直接見た事がない者もいた。だが、それでもなお全員が直感した。

 視線の先にいる人物――筋骨隆々とした体躯、白髪に白い髭、獅子レオンを思わせる猛々しい瞳、腰に下げた長大な剣を持ったこの老人が、当代最強の剣士レオンハルト・ツヴァイクであると。

 なぜ、これほどの威圧感を放つ相手が近付いている事に気付けなかったのか。それはおそらく、レオンハルトがアルトゥース流秘伝体技『練寂れんじゃく』を使用していたためだろう。これは、己の体から立ち昇る練気プネウマを体の内に留め外への発散を防ぐ技。本来ならば、体力の消耗を抑えるための体技だ。しかし、当代最強の剣士と言われるレオンハルトほどの実力者となれば…練気プネウマのみならず、己の気配すら内に留めその存在感を消し去る事が出来る。

 襲撃者5人は、レオンハルトを目撃して1秒にも満たぬ間にそこまで理解した。そして、

「その命、貰ったああああ!」

 禿頭スキンヘッドの男、ゲリッケが剣を振り上げレオンハルトに迫る。修伝体技雷足らいそくからの皆伝剣技『斬鉄』。アルトゥース流における必勝のパターン。だが、

「遅い遅い!鍛錬不足ぅ!」

 レオンハルトが叫ぶ。と同時にゲリッケの剣は粉々に砕かれ、その体は宙に舞っている。レオンハルトが放った皆伝剣技『剣槍砕けんそうくだき』がゲリッケの剣を打ち砕いたのだ。これは本来、練気プネウマを込めた剣で敵の武器を砕くという武器破壊技。しかし、レオンハルトの放つそれはあまりに強烈で――武器が受け止め切れなかった練気プネウマの衝撃により、ゲリッケは失神している。

 襲撃者達は、自分達とレオンハルトの間にある圧倒的な力量差を見せつけられる事となった。だが…それは最初から承知している。

「ひゃはあ!」

 刺青の青年…リフェが走る。宙を舞うゲリッケの下を超低空姿勢で駆け抜けた後、渾身の一撃を繰り出した。低空姿勢から、バネの如き勢いで体と共に槍を突き出すパルツィヴァール流皆伝槍技『跳爪ちょうそう』。
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