上 下
147 / 1,065

特訓10

しおりを挟む
「なるほど…凄い剣だからこそ売れないってのはそういう意味なんですね。確かにRPGでも伝説の武具を売ろうとしたら『これは買い取れないよ!』って言われる事多いですもんね」

 と、またもやルカ達には理解できない形で納得する安鶴沙。

「まあ、売る売らない以前にもし実際に聖剣や魔剣を手に入れてしまったら修道騎士団に接収されてしまうでしょうね。使い方次第では世界の脅威になりかねませんから」

「うっ…それは嫌ですねえ。修道騎士団の方々とは、正直関わり合いになりたくないです…」

 牢獄に囚われていた時の事を思い出し、苦い顔をする安鶴沙。

「そういえば――」

 ルカはアレクシアに視線を向けた。

「アレクシアさんの使ってる剣の位階は…」

「ああ、私の剣かい?私の剣は『王剣』だよ。銘は、『フラムシュトイツ』という」

「やっぱり…そうですか」

 王族であるアレクシアの愛剣、さらにアレクシアが奥伝剣技を使用しても刃こぼれひとつしていない事からなんとなく察しはついていたが、やはり並の剣ではなかった。

「え…お、王剣って、確か3億…!?つまりその剣イコール宝くじ一等賞と同額って事ですか!?あ、いや、3億って言っても円じゃないですけど…で、でも、物凄い金額って事ですよね!?」

「いや、王剣が3億というのはあくまで標準価格だからね。同じ位階の剣でも、それぞれの価格はまちまちさ」

 アレクシアが答える。

「ああ、そういえばそう言ってましたね。さすがに3億はいかないですか…」

「いや――多分、この剣の価値は10億Krクローナ程度はあるんじゃないだろうか」

「じゅ、10億!?そ、それだけあれば一生遊んで暮らせるじゃないですかっ!」

「…売るのかい?私の剣はシュタインベルグ王家に伝わるものだから私の一存では売買できないのだけれど…」

「い、いや、売りません、売りませんよ!ちょっと言ってみただけですよぅ」

 あはは、と笑ってみせる安鶴沙。

「でも、そんな凄い剣ならトーナメントの時はルカ君がその剣を使えば…あ、いや、それは難しいですか…」

 と、安鶴沙は言葉の途中で自分の過ちに気が付いた。

「はい、僕とアレクシアさんじゃあ身長が違いすぎますからね。僕にはアレクシアさんの剣は使えません」

 アレクシアの身長は、180cm近い長身。それに対してルカは、彼女に比べ頭ふたつ程は低い。身長が違えば当然腕の長さも違う。ルカがアレクシアの剣を使うのは難しいだろう。

「うん、だからルカ君に合った剣を探そうと思う。私はこれでも刀剣の目利きについてはそれなりの自信を持っているからね。例え雑剣や兵剣でも可能な限り良いものを見つけさせてもらうよ」

「よろしくお願いします、アレクシアさん」

 そんなやり取りを聞いて、

「それじゃあ、わたしは店の中を見回ってますね」

 と言って安鶴沙は店に所狭しと並べられている武具に目を向けた。彼女の家は南北朝時代から続く古武術の宗家。徒手空拳の格闘術のみならず、刀や槍を使った武術も受け継いでいる。

「むう…剣も弓も槍も日本のものとは結構違いますねえ…」

 そんな事を呟きながら武器を見回っていると、店の隅に投げ捨てるように置かれた剣の山が目に入った。

「あれ、これは…?」

「ああ、そりゃあガラクタだよ。お嬢ちゃん」

 安鶴沙の後ろにいた店員がそう声をかけてきた。

「冒険者がどっかから拾って売りに来たボロ剣とか、鍛冶屋が打ち損じた剣だ。実戦じゃ使いものにならない雑剣以下のガラクタだけど、訓練なんかには使えるからこうやって投げ売りしてんだ。ま、ひとつ1000Krクローナだから気が向いたら買ってってくれ」

「ふむふむ…言うならば剣のワゴンセールですか」

 安鶴沙は何気なくガラクタの山に手を伸ばした。店員の言う通り、錆の浮いた剣や明らかに打ち損じと分かる不格好な剣などとても実戦では使えそうにもないものばかりだった。

「うーん、例え安くても欲しくなるようなものはありませんねえ…ん…?」

 見切りをつけて立ち去ろうとしたその時、安鶴沙はふとあるものに目が留まった。それは、錆だらけの剣だった。一見するとただのボロ剣。けれど、彼女はその形に見覚えがある。

「これって…日本刀…?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜

純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」 E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。 毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。 そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。 しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。 そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。 『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。 「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」 「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」 これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。 ※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

パーティーを追放された雑用係の少年を拾ったら実は滅茶苦茶有能だった件〜虐げられた少年は最高の索敵魔法を使いこなし成り上がる~

木嶋隆太
ファンタジー
大手クランでは、サポーターのパーティー追放が流行っていた。そんなとき、ヴァレオはあるパーティーが言い争っているのを目撃する。そのパーティーでも、今まさに一人の少年が追放されようとしていた。必死に泣きついていた少年が気になったヴァレオは、彼を自分のパーティーに誘う。だが、少年は他の追放された人々とは違い、規格外の存在であった。「あれ、僕の魔法ってそんなに凄かったの?」。何も知らない常識外れの少年に驚かされながら、ヴァレオは迷宮を攻略していく。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八
ファンタジー
 主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...