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ティネンへ7
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レイミアは幌付きの馬車の中から顔を覗かせ言葉を続ける。
「初伝魔術にも関わらず、かなりの魔力が込められていた。あんたの天質の力だろう?」
「はい、僕は魔力増強という天質を持っているのでそれを使って…」
「違うね」
ルカの言葉を遮り、老婆が言った。
「あんたの天質は魔力増強じゃあない」
「魔力増強じゃない…?」
「魔力増強はかなり珍しい天質だけど、あたしはずっと昔にその天質の持ち主に会った事がある。けど、あんたの天質はそれとは違うね」
「そうなん…ですか…?」
ルカは首を傾げた。違う、と言われても確かに自分の天質は魔力増強としか思えない。
「あたしは50年以上は魔術に関わってきたからね。天質を見抜く力は持ってる。例えばそこの剣士のお嬢ちゃん…」
老魔術師はアレクシアに視線を向ける。
「あんたの天質は追憶だろう?」
「はい」
老婆の言葉にアレクシアは頷いた。
「とまあ、だいたいの天質は見抜く事が出来るんだけど…坊やと、メガネのお嬢ちゃんの天質はどうにも分からないね。そうとう珍しい天質の持ち主なんだろうねえ」
「珍しい天質…」
ルカは呟く。正直、今の今まで自分の天質は魔力増強なのだと思い込んでいた。そして、そう思い込むだけの理由は十分にある。しかし、それは違うという。いったいどういう事か。
「まあ、それを知りたかったらあたしのお師匠様に会った時にでも聞いてみるんだね。あの人なら、あんたの天質も見抜く事ができるだろうさ。オイフェって魔術師だから覚えておきなよ。…まあ、オイフェなんてよくある名前だけどね」
「ええ、大魔術師・オイフェにあやかった名前ですよね」
大魔術師・オイフェ。ここ数百年で最高との呼び声高い魔術師だ。もっとも、彼女が活躍したのは今から200年以上前。そして言い伝えによれば、彼女は長命種のエルフではなく人間だったという。すでに存命ではないだろう。
老婆の師匠というのは、その『元祖オイフェ』にあやかって名前を付けられた魔術師のひとりであるとルカには思われた。
「僕も最近、オイフェという名前の方に出会いました。もっとも、レイミアさんのお師匠さんではないでしょうけど」
ルカはパーティを追放された日に出会った少女、クラリス。その師匠であるオイフェという魔術師を思い出す。彼女はどう見ても二十代の後半から三十代の前半だと思われた。目の前の老婆の師匠がそんなに若い人間という事はあり得ないはずだ。
「いや、案外その人があたしのお師匠様かもしれないね」
「え…?」
「まあいいさ。…やれやれ、また余計な事を言っちまたね」
そう言って、レイミアは馬車の中に戻っていった。
「初伝魔術にも関わらず、かなりの魔力が込められていた。あんたの天質の力だろう?」
「はい、僕は魔力増強という天質を持っているのでそれを使って…」
「違うね」
ルカの言葉を遮り、老婆が言った。
「あんたの天質は魔力増強じゃあない」
「魔力増強じゃない…?」
「魔力増強はかなり珍しい天質だけど、あたしはずっと昔にその天質の持ち主に会った事がある。けど、あんたの天質はそれとは違うね」
「そうなん…ですか…?」
ルカは首を傾げた。違う、と言われても確かに自分の天質は魔力増強としか思えない。
「あたしは50年以上は魔術に関わってきたからね。天質を見抜く力は持ってる。例えばそこの剣士のお嬢ちゃん…」
老魔術師はアレクシアに視線を向ける。
「あんたの天質は追憶だろう?」
「はい」
老婆の言葉にアレクシアは頷いた。
「とまあ、だいたいの天質は見抜く事が出来るんだけど…坊やと、メガネのお嬢ちゃんの天質はどうにも分からないね。そうとう珍しい天質の持ち主なんだろうねえ」
「珍しい天質…」
ルカは呟く。正直、今の今まで自分の天質は魔力増強なのだと思い込んでいた。そして、そう思い込むだけの理由は十分にある。しかし、それは違うという。いったいどういう事か。
「まあ、それを知りたかったらあたしのお師匠様に会った時にでも聞いてみるんだね。あの人なら、あんたの天質も見抜く事ができるだろうさ。オイフェって魔術師だから覚えておきなよ。…まあ、オイフェなんてよくある名前だけどね」
「ええ、大魔術師・オイフェにあやかった名前ですよね」
大魔術師・オイフェ。ここ数百年で最高との呼び声高い魔術師だ。もっとも、彼女が活躍したのは今から200年以上前。そして言い伝えによれば、彼女は長命種のエルフではなく人間だったという。すでに存命ではないだろう。
老婆の師匠というのは、その『元祖オイフェ』にあやかって名前を付けられた魔術師のひとりであるとルカには思われた。
「僕も最近、オイフェという名前の方に出会いました。もっとも、レイミアさんのお師匠さんではないでしょうけど」
ルカはパーティを追放された日に出会った少女、クラリス。その師匠であるオイフェという魔術師を思い出す。彼女はどう見ても二十代の後半から三十代の前半だと思われた。目の前の老婆の師匠がそんなに若い人間という事はあり得ないはずだ。
「いや、案外その人があたしのお師匠様かもしれないね」
「え…?」
「まあいいさ。…やれやれ、また余計な事を言っちまたね」
そう言って、レイミアは馬車の中に戻っていった。
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