上 下
38 / 1,065

ラナキア洞窟攻略3

しおりを挟む
 空間のねじれを過ぎ、さらに数km。洞窟は左右に曲がり、時には人ひとりがぎりぎり通れる程度の幅に狭まる事もあった。だが、基本的には一本道だった。そして何度目かのカーブを曲がった所で…突如視界が開けた。

「これは…」

 誰からともなく声を上げる。

 前方に広がっていたのは広大な空間だった。まず前方には傾斜のきつい坂。その下、数mの場所には湖。地底湖だ。天井からは鍾乳石が垂れ下がり、中には地面と接触して柱状になっているものもちらほら見える。さらに岩壁が所々ぼんやりと輝いている。魔鉱石の放つ光だろう。

「あの狭い入口の先に、こんな空間が広がっていたとは…」

 アレクシアが感動した面持ちで周囲を見回す。

「これが迷宮ダンジョン、というものなのだろうか…?」

「そうですね。これだけ魔鉱石があるって事は、魔力が濃い証です。迷宮ダンジョンと判断しても…間違いないと思います」

 ルカが答えた。

「しかし、私の想像していた迷宮ダンジョンとは少し違うな。なんとうか、こう…もっと迷路じみたものを想像していたが…」

迷宮ダンジョンって言っても形態は色々だからな。古代遺跡が迷宮ダンジョン化したものだったら、通路が歪んでそれこそ迷路みたいになってる所もある。…らしいぜ。俺もそういった迷宮ダンジョンを見た事がある訳じゃねえから人づてに聞いた話だけどよ」

 そう説明しながら、ジョゼフも興味深げにきょろきょろと周囲を見回していた。

「それじゃあ、ひとまず…坂の下に降りるか。迷宮ダンジョンってもんは下にゴールがあるのが定番だしな」

 ジョゼフは坂の下に降りようとした。それをゲルトが止める。

「しばしお待ちを。…光よ、行く先を照し我らをまがごとより遠ざけよ『フエゴ・ファトゥオ』」

 ゲルトが前方に掌をかざしながら魔術を発動した。すると、その先の中空に青白く輝く光の玉が出現した。それはフワフワと浮遊し、ゲルトたちの頭上で漂い始める。

中伝レベル2形成魔術、フエゴ・ファトゥオです。ウィル・オー・ザ・ウィスプと同種の魔術による形成物質ですが、周囲を照らすだけではなく人体にとって有毒なガスなどを感知すれば点滅して知らせてくれます」

「こりゃありがてえ。気付かないうちにガスを吸ってお陀仏なんて事にはなりたくねえからな」

 ジョゼフが頼もし気にフエゴ・ファトゥオを見上げた。

 光源が増えた事で、足元もよりはっきりと見えるようになった。所々にある突起に足を取られないよう注意しつつ、坂を降りる。湖の目前まで到着した。

「…でけえ湖だな」

 ジョセフが呟く。確かに大きな湖だ。その水は異様な程に青々としており、むしろ不気味さを感じさせる。深さも相当ありそうだった。

「もしや、この湖の中を潜るのか?私は一応、泳ぎは出来るが…」

 アレクシアが湖を覗き込みながら言った。

「いやいや、まさかそんな事はしねえよ」

 ジョゼフが笑う。

「ここが迷宮ダンジョンになってるとしたら、奥へと続くルートがどこかあるはずだ。最深部と繋がってねえと、この辺りまで魔力が流れ込んで来ねえはずだからな。それを探そう」

「ふむ、なるほど…それは良かった。さすがに私もルカ君以外の者に裸を見られるのは抵抗があるからね」

(え…)

 ルカは内心でドキリとする。自分以外の者に裸を見られるのが嫌という事は、自分にならば見られてもいいという頃だろうか。

(い、いや…それは僕が子供だから…だよね。多分)

 ルカとしては自分はもう子供ではないつもりだったが、その事をいちいち口にするつもりはなかった。今はとにかく、迷宮ダンジョン攻略のためのルートを探すのが先決だ。

 一行は湖の周囲を歩いて捜索する事にした。この開けた空間では床の至る所に鍾乳石の突起が屹立し、それが視界を遮っている。もしどこかに道があったとしても、よく観察しなければ気がつく事ができないだろう。そう思っていたのだが…、

「おっ…」

 しばらく探索した所で、先頭を進むジョゼフは眼前の岩壁に穴を発見した。大人が屈んで通れるかどうかという大きさの空洞だ。

「この先から魔力が流れ込んで来ているのを感じます。おそらく、深部へ通じているのでしょう」

 とゲルト。

「へへ、なんだ。思ったより簡単に見つかったな」

 ジョゼフは肩をすくめる。そして屈みこみ、穴の中へと入ろうとしたその時――ルカは見た。穴の奥から、何かが現れるのを。

「――危ない!」

 ルカは咄嗟に走り寄り、ジョゼフに飛びついた。

「のわっ…!?」

 ジョゼフがよろめき、たたらを踏む。

「ルカ、いきなり何やって――」

 とジョゼフが言いかけた所で、ガチン――と、硬質な物体同士が触れ合う音が響く。そちらへ視線を向ける。先ほどまでジョゼフの足があった場所だ。そこには、赤黒いはさみがあった。人間の足など容易く切断してしまえるであろう巨大なはさみだ。

 そして、穴の奥からそのはさみの持ち主がぬっと姿を現した。四つん這いになった熊ほどの大きさもあるであろう、巨大なかにだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜

純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」 E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。 毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。 そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。 しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。 そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。 『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。 「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」 「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」 これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。 ※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

パーティーを追放された雑用係の少年を拾ったら実は滅茶苦茶有能だった件〜虐げられた少年は最高の索敵魔法を使いこなし成り上がる~

木嶋隆太
ファンタジー
大手クランでは、サポーターのパーティー追放が流行っていた。そんなとき、ヴァレオはあるパーティーが言い争っているのを目撃する。そのパーティーでも、今まさに一人の少年が追放されようとしていた。必死に泣きついていた少年が気になったヴァレオは、彼を自分のパーティーに誘う。だが、少年は他の追放された人々とは違い、規格外の存在であった。「あれ、僕の魔法ってそんなに凄かったの?」。何も知らない常識外れの少年に驚かされながら、ヴァレオは迷宮を攻略していく。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八
ファンタジー
 主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...