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ルフェールへの道中6

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 夜の警戒は、昨日からルカ&アレクシア(ペア)、ドナルド(単独)、デボラ(単独)の三交代制で行っている。

 ルカとアレクシアがペアなのは、ドナルドの提案によるものだ。

「この女は信用できねえ。ひとりで起こしておくのは危険だ。ガキ、てめえが面倒を見ろ」

 との事だ。

 砂時計で時間を測り、三時間ごとに夜警の交代する。今日は、ドナルド、ルカ&アレクシア、デボラの順番だ。

 ドナルドがひとり残り、残りの七人は隊員によって設置されたテントの中へと入っていく。

 ルカは、テントに入る前に少しだけ不安を覚えドナルドの方を振り返った。すると、ドナルドもちょうどこちらを見ていたようで目が合ってしまう。

「なんだ!?俺が信じられねえのか!?」

 ドナルドはルカを睨みつけた。

「いえ…すみません」

 ルカはテントに入って寝袋に潜り込んだ。

(ドナルドさんだって、Dランクの冒険者なんだ。僕が心配しなくても大丈夫なはずだ)

 そう思い、目を閉じる。ルカはすぐに眠りに落ちた。眠るべき時に眠るというのも冒険者に必要な能力なのだ。

 眠りに落ちる寸前、ルカはクラリスの事を思い出した。

 大魔導士を目指す少女。ルカを励ましてくれた少女。口付けを交わした少女。

 彼女は元気にしているだろうか。そんな事を考えながら、ルカは眠りに誘われていった。

 ◇

「ふぁあーあ」

 夜警を開始してから1時間。ドナルド・エルミートは退屈しきっていた。彼は完全に弛緩してしまっている。明日になればルフェールに到着して警護は終わり、ジムケに謝礼を貰いしばらくは遊んで暮らせる。そう思うと、自然に気持ちが緩んでしまう。

「もう半分くらいいったか…?」

 砂時計に目を向ける。しかし、まだ砂時計の砂は三分の一が落ちた程度。

「ちっ…まだ一時間か」

 ドナルドは、弛緩していると同時に浮き足立っていた。早く明日にならないか。早くルフェールに到着して酒を飲めないか。そんな事ばかり考えていた。彼は立ち上がり、周囲を歩きはじめる。

 野営地の中央には大きな焚火。それを囲むようにしてテントと荷馬車。さらにその外側に四つの篝火かがりびが設置されている。ルカの提案で配置されたものだ。こうやって周囲を照らしていれば、異常があった場合もすぐに発見して対処する事ができる。

 ドナルドは荷馬車の近くまで来た。と、そこで積み荷の中にあるものを発見する。酒樽だ。

 ベルーズはブドウの産地として有名だ。そのブドウを原料に作られたワインをルフェールに運んで売るというのがジムケの商隊キャラバンの目的のひとつだった。

 ドナルドはごくりと喉を鳴らす。もう一週間近く酒を飲んでいない。酒好きの彼にとって、一週間の断酒というのは決して短くはない期間だ。

「ちょっとだけ味見してやっても…バチは当たらねえよな」

 酒樽の横には中央が空洞になった短い棒が突き刺さっている。さらに、その棒は栓で蓋をされていた。この栓を抜けば酒樽から酒が出てくるという寸法だ。

 ドナルドは木製ジョッキを片手に、酒樽の栓を抜いた。赤く輝く液体がトクトクと溢れ出し、芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。酒樽に栓をした後、ドナルドはジョッキを煽った。彼の飲酒に作法などというものはない。喉をぐびぐびと鳴らし飲み干す。豊かな香りが体内を走り抜け、喉から胃にかけてが熱くなる。

「かぁ…!」

 気持ちよさそうにワインを飲み干した後、再び栓を抜きジョッキをワインで満たす。

(こんなもん飲んだうちに入らねえ。あと一杯…あと一杯だけ)

 そう自分に言い聞かせ、ドナルドはワインを喉に流し込み続けた。
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