きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

文字の大きさ
上 下
37 / 42

俺の生き方

しおりを挟む
俺は甘ちゃんだった。
祖父さんに会えば、あっさり答えが出て、その通りに動けば何とかなるんじゃないかと思ってた。
自分で考えて…って、本気で考えたかな。
猫になって、人間とは違う生き方をして、見えなくなったものが多くなったのかもしれない。

祖父さんは黙って俺の様子を伺っている。
あ、これって、母親猫と同じだ。
自分で答えを出して実行。
これが=成長か!

考えろ!考えろ!

猫でも出来ることが何かあるんじゃないか?

「ん?猫でもできること…?」

「おお、いいじゃないか?猫でもできること。例えばどんなことだ?」
「例えば…?」
猫でも出来ることって言えば、猫…猫…
猫…可愛い…家でゴロゴロ…のんびり…癒やし?
癒やし?
「癒やし!」
「ウンウン、それで?」

癒やしって、誰を癒やすのか?
人間…人間って言えば、家族…
家族って…
よく考えたら、俺は生まれ変わっても実家に居たじゃないか?
なのに俺の思い違いから離れる事になって、大事な家族を失って…

それだ!
そこからやり直す‼︎

「実家に帰ればいいんだ!」
「ほぉ~?そうきたか。じゃあ何しに実家に帰る?」
祖父さんが問いかけてくる。

「何しに?」
猫…実家…癒やし…
誰を癒やす?
実家に居るのは両親だけ。
たまに叶和子(かなこ)…妹夫妻…

両親もいい歳だ。
俺もチャチャも俺も居なくなって、きっと寂しい思いをしてるんじゃないか?
俺が両親を見守る…?

待てよ?
そうか!
今度は俺が恩返ししていけばいいんじゃないか?
これぞネコの恩返し‼︎

「祖父さん!俺、決めた!実家に戻って両親を見守るよ!」
自分の口からこんな言葉が出るとは思わなかった。
でも自分でちゃんと考えた!

「ほら、答えが出たじゃないか。本当はそうなる運命だったんだよ。お前、かなり遠回りしたな」
祖父さんは笑いながらそう言った。

遠回り。
そうかもしれない。
せっかく実家の近くに転生したのに、自分からそれを捨てて別の生活を選んだ。
もしかしたら、『ご縁』たちがそうしてくれたのかもしれないのに?

俺はバカだ。
失ってから気がつく。
命も家族もみんな!
また同じことを繰り返していた。
【命】は一度きり。
大事にしなくちゃいけないって、自分が一番よく知ってたくせに!
もっと早く気がつくべきだった!

「なんだ。和彦。お前、墓に入りに来たんじゃなかったのか?」
祖父さんの横から祖母さんがニュッと出てくる。

「うぉお⁉︎祖母さん、びっくりするじゃないか!」
「ワシの息子に似て弱っちいのぉ~?」

「祖母さん、墓はもうちょっと先!って言っても猫だから、死んでも同じ墓には入れないよ。でも時々遊びに来る。今度はすぐそこだから!」
答えが出たことで、俺は清々しい気持ちになった。

「心配せんでも、家猫になるなら、私たちはずっと仏壇からお前たちのことを見てるさ。なあ、祖母さんや」
「仕方ないね~。祖父さん」
祖父さんは祖母さんに優しい。
その優しさ、俺も見習わなくちゃ!

俺の生き方が決まった!
とにかく実家に帰る!
そして家猫になるんだ!
そうと決まれば、製材所に戻ってみんなに報告しよう!

「祖父さん、祖母さん!また遊びに来るよ!」

「和彦!もうすぐお前の命日だ。またここから生まれ変わるんだ。今度は間違えるなよ~」
「そうか!忘れてた。命日か。丁度いい。新しい門出だ!」
祖父さんと祖母さんに見送られて、俺はまた製材所に向けて走り出した。

製材所に戻る頃には夕方になっていた。
ご飯を残して、母親猫が待っていてくれた。

「あの…お母さん。聴いて?話したいことがあるんだ。前にお母さんは神様に助けられたって言ってたよね。実は俺も、本当は人間の生まれ変わりなんだ。人間の両親も妹もいる。恥ずかしいけど嫁さんもいるんだ。お母さんが俺を産んでくれたおかげで、俺はこの世に戻って来れたんだ。お母さんとの記憶は、ほんのちょっとしかないけど、それでも本当に幸せだよ!でも、でもね…」
いざ別れを言おうとするとなかなか言葉が出て来ない。

「そうだったの…。で、答えは出たのね?」
少し淋しそうな顔。

「うん。俺、やっと気がついたんだ。チャチャといたあの場所に帰るよ。自分の両親が居る実家に戻って、家猫になるんだ」
俺は母親に告げた。
それが何を意味するか、母親もわかっているようだ。

「そう。自分で決めたのね。偉いわ。お母さん反対なんかしない。頑張りなさい」
母親は俺の耳や顔をいっぱい舐めてくれた。
母親の精一杯の愛情を感じた。
いつまでも親離れしないでいたら、俺はまたダメダメ猫になっちまう。
そういう生き方もあったかもしれないが、せっかくもらった命!
俺はもう一度やり直す‼︎


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...