きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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このたび猫になりました

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ちょっと肌寒い朝。

モゾモゾ…モゾモゾ…

あぁ、ここあったかい。

zzzz…


隣の毛皮が気持ちいい。

ふんわり ふわふわ…

もうちょっと寝ていたいなぁ…

けど、お腹も空いたなぁ…。

朝日が眩しい。


そぉっと目を開けると
俺の隣に小さな茶トラ猫が1匹、気持ちよさそうに眠っている。

なんだ。
ネコか。

俺は顔を洗いたくなってきた。
右手でカシカシ擦ってみる。
なんだか柔らかくて変な感じ。
その手を見ると
黒い手にピンクの肉球。

ギョギョ⁉︎
ニャンだ⁉︎これは⁉︎

ま、まさか⁉︎

俺は慌てて自分が映る物を探した。
割れた鏡を見つけ、その姿を見て驚いた。

小さな黒猫が1匹映っている。

ニャニャニャンと⁉︎
この黒猫が俺?

長い尻尾
尖った耳
長いヒゲ
手も丸っこい。
力を入れると鋭い爪がキラリと光る。
くるんと丸まって下腹を見るとタマがある⁉︎

俺は『オスの仔猫』に生まれ変わってる‼︎
ひゃーーーーー!すっげーーーー‼︎
マジで転生しちゃったのかよ⁉︎
ひゃーーーーーー!おっどろき~!
俺は角度を変えたり、立ったり座ったりして、しばらく新しい姿に見入っていた。


ふと我に帰る。

待て待て。
テコテコ四足歩行。
現状把握しよう。

まずこの隣の茶トラは一体どなた?
俺とは毛色が違う。
ジーーーっと見つめる。

「バシッ!」
いきなり猫パンチを浴びた。
「痛い!何するにゃ!」
「お兄ちゃんこそ!起きたなら教えてにゃ!」

お…お兄ちゃん⁇
って事はこの仔猫は妹?
俺は恐る恐る聞いてみる。

「お兄ちゃんて、俺のことでしょうか?」
「ばっかね~。当たり前でしょ?寝ぼけてるにゃ⁉︎それよりお母さんは?」

「へ?お母さん?」
お母さんがいるのか。
辺りをキョロキョロしてみる。
人の言葉は喋れないので(当たり前だけど)ニャーニャー鳴いて、母親を呼んでみる。
しばらく呼んでみたが、戻ってくる気配はない。

「いないねぇ~」
もしかして…
俺たちって…捨て猫⁈

えーーーー⁉︎ またかよ~。
いつもこのパターンだ。

「多分母親は俺たちをここに連れて来て居なくなったのかもにゃ」
よくある話だ。
産み落としてそのまま育児放棄とか、安全な場所に置き去りにするとか。
多分後者かな。

トホホ…早速試練かよ。

辺りはすっかり明るくなった。
俺たちは諦めず、ニャーニャー鳴いて母親を呼んだ。
だんだんと声も枯れて来た。
お腹が空いた。
お母さんのおっぱいが飲みたいにゃ。

ところでここは何処だ?

小さな俺から見える範囲では、古い家の軒下。
色がカラーじゃないからよく分からない。
でも、どこか見覚えのある景色…。

『ほら、あの辺だよ』

やばい!人間だ‼︎
俺たちは本能で姿を隠した。
「ジッとしてろよ」
妹猫に話しかける。
捕まって保健所行きだけは絶対嫌だ。

『絶対居るって。ずっと鳴き声聞こえるもん』

ん⁉︎
この声…聞き覚えがある。
俺は顔を少しだけ覗かせてみた。

ええ⁉︎
その人間の姿を見て驚いた。

俺の『妹』じゃん⁉︎

って事は⁉︎
俺はダッシュで向こう側まで走る。

「お兄ちゃん!」
妹猫が呼んでいる。
「そこで待ってろ!」
俺はその古い家をよくよく見上げてみた。


見覚えのある屋根、家の形、玄関。
ここは、俺がバンドの練習場に使っていた古い家だ。
という事は、俺たちは実家のすぐ側に居るってことか⁈
俺は家に帰って来れたのか⁉︎

俺は嬉しくなってきて、木に駆け上ったり、草で戯れたり超ハッピー‼︎
妹猫はその姿を変に思っただろう。
でもこの喜びは誰にも分かるまい‼︎

お?
「そう言えば、お前も転生したのか?」
妹猫に聞いてみる。
「転生…?ニャンのこと⁇」
って事は、コイツは今回生まれてきたばかりの仔ってことか。
「いや、別に。かーちゃんはいないけど、一緒に頑張ろうな」
「うん!」
俺がコイツを守ってやらないと。

とにかく、まずはご飯を手に入れなければ。
ここが自分のテリトリーと分かれば、あとはなんとかなりそうだ。

でもここに居ても仕方ない。
俺は目標を立てた。

まずは人目につかないように、実家の横の倉庫まで移動する!
そのためには夜を待つしかない。
あそこまで行けば、きっとご飯にありつける!
俺と妹猫は、空腹を我慢しながら夜を待った。
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