星の降る夜に

ベガ

文字の大きさ
上 下
9 / 10

私の葛藤

しおりを挟む
学校に着くなり机に顔を突っ伏した。昨日からいろいろありすぎて何が何だか分からない。
いっそこのまま全ての記憶を消し去ってしまいたい。本気でそう思い始めてしまった。そんな出来もしない事を考えながら朝のホームルームを迎える。


私の表情を見て菫が何かを察したらしい。
「岬さん、何かあったの?」
私は彼女に全てを話した。
少し楽になったかもしれない。
そんな感じがした時だった。
「みなさーん!聞いてくださーい!」
大人の女の人の声が響く。担任の声だ。
「急遽決まったことがあります。
残念ながら相手側の学校の都合により交換留学は今月いっぱいとなりました。」





「え。もういやだ。これ以上なにも起こらないでよ。」

もうパンク寸前だった。
菫ちゃん達本州から来た高校生も知らなかったようで驚きを隠せずにいる。遅かれ早かれお別れすることには変わりなかったのだがここまで早いとやはり気持ちの準備ができていなかった。
いなくなるということは、彼への謎も分からないままになってしまうのか。


いやだ。そんなの。全然スッキリしない。


「決めた。今日、彼とちゃんと話しをしよう。」


朝のホームルームが終わり私はドアを乱暴にあけ
隣のクラスへ駆け込む。


彼の席は教室の一番後ろの奥の方にある。
私は机と机の間をすり抜けながら彼の前に立つ。
彼は文庫本片手に持ち集中しているようだった。
彼が読んでいる本は、

「昭和の人の心得」


なんじゃそりゃ。これじゃあ噂が立つわけだ。
しかもニヤニヤしながら読んでるし。
だめだめ。そんな事を気にしている場合じゃない。


「新一さん、今夜時間ありますか?」

「あー、大丈夫ですよ。」

「じゃあ、今日の夜10時に、星岬のベンチで」

相手の返事も聞かないまままた机と机の間をすり抜け教室を後にした。





心臓の高鳴りが抑えきれず胸に手をやり鼓動を聞く。確かに鼓動を感じる。でも彼、新一さんの
鼓動は余命という形で限られた時間しか動かない。
今夜全てがわかるなんて思うと、知っていいものなのかどうかという葛藤にかられながらも、
聞くチャンスは今しかない。
決意を決め聞く事とする。











今夜この出来事が私の家族の本当の秘密を知ることになるとは当然知る由もなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

処理中です...