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俺はギタリストなんだが、なぜか満腹中枢が変になってるベーシストにメシを奢ったりする

七久間とかいうおんな

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”同時メシ同時消化ミッション”から考えると3日前。

金髪にしてから数えると4日目のことだ。

俺はバイトの同僚と二人で飲んでいた。

七九間アスタ。
ナナクマ アスタというのがこの同僚の名前だ。
俺のバイト先、ゴッサムバークスビルディングにホールスタッフとして採用された七九間だったが、あまりレストランやバーでの経験がなかったので都合俺が教育係みたいになった。
そもそも人当たりも良くざっくばらんな性格なので外国人客が多いうちの店特にバーフロアではすぐに常連に気に入られていた。
横着なところもあるのだが、面倒見はいいのか他人の状況には目が行き届くようで他のスタッフのフォローもさっと入ってくれたりもする。
そんなヤツだ。

七九間は外国に一人旅なんかをよくしていて当地の状況や文化に詳しい事やその繋がりなのか音楽を体で体験的に楽しむような性質があり話がよく合う。
会った当初は男勝りな感じだなあと思っていたが、むしろそれで七九間が性別上女である事を俺はつい忘れてしまうような感じがあり、女の子を心から友達だと言えた人生初めてのヤツなのだ。

「おい、七九間。なんだよ。もう潰れたのか?」
「ふぃぃー。麻生田川ぁぁ。。もうだめだぁ。。。」

「ちょっと。まだ俺が来て一時間しか経ってないし。まあ、しゃあねえな。じゃあもう帰ろうぜ。」
「まだだぁぁ。むぁだ帰らんん、。麻生田川ぁぁぁ。」

俺たちはRッポン木のバーで呑んでいた。
俺が部屋でまったりしていたら七九間からいきなり呼び出されたのだった。

「なあ、どうしたんだ。お前、何かあったのか?七九間。」
「おおよぉぉ、ないよぉぉ、別にないよぉぉ何にもぉぉ。あ。ちょっとおしっこ。」
あ〜あ〜、なんだよ、アイツどうしてあんなに酔っ払ってるんだ?
元々酒好きだがいつもあそこまで酔うまでは飲まないようにしてたのに珍しいな。

「いってきたよぉっぉぉ、おしっこぉ。」
「おしっことか言わなくっても別にわかってるし、行く時も言ってたし。」

「なぁ、麻生田川はさぁ、、なによ。恋とかしてないのかぁ。なんかぁ、ぁの、これ金髪とかにしちゃって色気づいてんじゃぁぁねえろぉぉ。んにぃ?」
「恋?お前、恋って言ってんの?七九間。」
もう初対面から多分一年くらいは経つが、こいつが色恋沙汰みたいな話をするのは初めてだった。

「ぅぅうん。そおぉ。恋。恋よ。ロォマンスゥの話ぃぃぃ。ふぃぃぅ。」
「ああ、まあな。今は俺なかなか忙しいしさ。あんまりだな。ってか全然だ。そりゃ学生時代とかはいたよ。彼女の一杯や二杯はな。」
俺のコイバナを尋ねてきたものの全然聞いてないようで、突っ込みもせずにうなだれていやがる。
いつもなら「イカの単位だろ!それ」とかちゃんと適切なの来るんだけど。

「なんだ七九間。もしかしてお前誰かに振られた、、とか、なの?かしら?」
「ぅぉぉおおおぉぉ!」

「な、なんだよ。遠吠えか?どういう習性だよ。それお前。」
「ぅぅぅおおおおおおおんっ!」

「ほらほら、そんな声で泣くな狼の子よ。こちらも悲しくなるだろう。お前の仲間ならほら、あの山にいるぞ。」
「うう、、ぅぅぅおおおおおおおんっ!!」
なんかもうノリでやってんのかマジでやってんのか全然わからんが、見事な遠吠えだ。
かなりが喧しいバーで良かたー。

ま、吠えたいだけ吠えさしといてやるか。
「まあ、気が済むまで吠えてていいぞ。七九間。」
「うぅぅぅおおおおっ!!ガブっガブ!!」

「おあぁっ!痛って!!こいつ手ぇ噛みやがった。なにすんだよっ!」
「ぅぅぅぅおおおおおおんん!」
「遠吠えで野生のフリしてごまかしてんじゃねえぞ。七九間ぁっ!」
「ぅぅおおおおっ!!ガブっ!」
「おぁ、また噛んだ。なんなんだ。狂犬はここでは飼えねえ。さっさと山に帰っとくれ!」
「ぅぅぅぉぉおおおおおおおおんん!!」
「まーたごまかしてやがるっ!」
・・・・・・
・・・・
・・・

と、何度か噛まれたりした後、七九間は電車に乗るのも無理でタクシーで帰っていった。
結局七九間がなんの理由で荒れていたのかは不明だが、なんか恋がどうのって言ってたからなぁ。
そんなことなのかなぁ。
しかし、あの七九間がか?
まさかね。
でも何があったんだろうな。
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