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俺はギタリストなんだが、なぜか満腹中枢が変になってるベーシストにメシを奢ったりする

金色のもの マストで

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セージは俺がTシャツを片手に戻っても体勢を変えず、それについては触れなかった。
この謎の生物はわりと消化の為に静かにしている必要があるのかもしれない。

数十分後、俺たちの胃の調子もかなりマシになってきたのでそろそろ出る事にした。
ユイサがレジを担当し、貰ったTシャツを入れる為の紙袋を用意してくれた。
「あとさ、タカさん。さっきのそのTシャツくれたお客さんがね。
これタカさんに渡しといてくれって。」
「なにこれ?」チケット用の封筒だった。
すぐにその封筒を開けてみると煌びやかな金で縁取られたチケットが出てきた。
”×××× 30th Anniversary Golden Party!!! in Omotesando Bills"
とある有名ブランドのオードトワレの30周年の会員限定パーティがおモテ参道ビルズで今日催されるらしい。そのチケットだ。
開場は19:30からとなっている。このチケット一枚で4人まで入れると書いてあった。

それと太字でかなり目立つようにドレスコードについての注意書きがある。
”必ず金色の物を一つ以上身に着けてご来場下さい。”

金色のもの?んなの持ってたかな。
思いつかなかった。
んー。買わないとない、、かな。
ん。いや、なーんかどっかにあったような。。。思い出せない。

セージがチケットを覗き込んできた。
「ほぉ〜。これはぁ。すごいチケットだねぇ。」
「セージさ、今夜用事はどう?これ7時半からみたいだけど行ける?」

「ん。いや、今日はこれからアークの実家に行くじゃない。実家ってミナトミライでしょ?その後俺夜は横浜に用があるから、そのパーティはさすがにちょっと。。。」
「え?は?俺の実家?なんで?」

「昼飯食べたらアークの実家行くって叉市が言ってたけど?」
「なに、そんな事言ってたの?」
俺の計画では腹の食物が消化されるまでセージが絶対行った事がないはずのアオ山とかおモテ参道辺りでも散策して回るつもりだったが。。。俺の実家?
いや、ってか、ぬぁーんで叉市が勝手に決めてんだよっ!

何にしてもセージは夜横浜に行く必要があると言ってはいるし、俺は腹のものがすっかり消化するまではセージと過ごすつもりではあった。
それが俺の今日の意地と覚悟なのだ。
ミナトミライの俺の実家に連れて行く事は出来なくないとは思う。
ただ今夜は平和島のバイトがない夜空いてる日だからせっかくだし正直このパーティには行ってみたい。
でもなぁ一旦横浜方面まで行ってからだとおモテ参道行くのが時間的にギリギリだし体力的に厳しいんじゃないかなあ。
実家行ってからパーティはいくらなんでもめんどいZe。

でも叉市が行くように言っててセージも実家行く気になってるワケだしなぁ。
んー。パーティ優先にしたい気持ちが盛り上がっているが、、今降って湧いたような話だしなあ。実家行くの断る理由がそれではなんか弱い気がするんだなあ。
どうすっかなぁ。
なーんかシックリこないなぁ。

あ。そうだ!
まずは実家に電話して都合が大丈夫か訊いてみよう。
母さんに用事とかあって断られるかも知んないしな。うん。
無理だったらしょうがない!当然ミナトミライに行くのはなしだ。うん。
それを確認してからもう一度思案しても遅くはあるまい。

万が一実家の都合がつかない場合、セージとこの辺を散歩でもテキトーにしてその後俺はこのパーティに行こう。
そうしよう。うん。

俺はスマホを取り出しかなり複雑な気持ちで実家に電話をかけた。
すぐに母さんが出た。
「あのさ、母さん。今日ってこれから友達っていうか、うちのメンバー連れて行っても大丈夫かな。いや、でも突然すぎるかな。用事とかあるかもだよね。」
「え、メンバー?メンバーってSorrys!の?誰?誰がうちに来るの?」
かなり嬉しそうに訊いてくる。
「うん。セージなんだけど。」
「セージ君!あ、ベース弾いてるコね?そうなんだー。会えるの楽しみ。あ。じゃあカラ揚げ作って待ってるから!」
「うん。いや、俺たち食べ物は今回そんなに大丈夫ははずなんだけど。」
うーむ。断られる事を半ば期待したが、やっぱり実家の受け入れ体勢は万全だった。
いや、うん。うちの家族のこういうところはかなり好きだし、普通に嬉しいことなんだよな。
こっちの都合でガッカリしちゃいけないな。
そう、そして実家のソウルフードは鳥のカラ揚げなのだ。

「あ。そう言えばね。貴士。今朝クローゼット整理してたらね。アンタが大学の時やってたバンドで使ってた衣装が目に入ってきてね、それを私ちょうど見てたのよ。
で、今日アンタが初めてメンバーのセージ君連れてくるって言うじゃない?何か私これ運命的な感じがするんだなあ。」
母さんがこんな事を言う時は大体乙女チックな瞳をキラキラさせている。今も電話口でそんな表情をしているに違いなかった。
よく分からん事や他人からするとこじつけみたいな事をうちの母さんは良く言うし、占いとかそういう類の事もかなり好きだ。
ただ実際、母さんが持っている何らかの直感みたいなものは幼少期から何度も俺を助けてくれてるのも事実だった。
「ふーん。。。まあそんな偶然は関係ないとは思うけど。。。」
と言いながら俺は反射的にその衣装を頭に思い描いていた。
あ!!

「あの、、ねえ、母さん!その衣装って金色のネクタイのヤツ?」
「え。そうよ?あれアンタのでしょ。」
「それか。。わかった。後数時間でセージ連れて行くから。それじゃね。」
ふぅ。わかったよ。
この感じはミナトミライ行っておモテ参道行くって流れなわけね。

はいはい、そういう感じね。

「うん。それじゃあ後でねー。セージ君によろしくー。」

電話を切ってセージに事の次第を伝える。
「母さんが待ってまーすってさ、あとセージによろしく言ってたよ。」
「ふーん。まあ、でもアークの実家かぁ、気まずいなぁ。アウェイだなあ。」
おいっ。わざわざよろしくって言ってくれてる俺の家族をアウェイ呼ばわりすんじゃないっ。そして招待すんだからそこはどんだけそう思っても言うんじゃないよっ!

ユイサは俺たちが座っていたテーブルを片付け終わって一息付いていた。
「なあ、今日ってユイサ、シフト何時まで?このチケット4人入れるみたいなんだけど。行ってみる?」
「えーー。いいなーいいなー。でも私今日ラストまでで無理ですよーだ。」
「そっか。まあドレスコードもあるみたいだしな。じゃ、他あたってみるよ。」
「ぶーっ」

俺たちは今度こそ店を後にした。
にしてもダグのヤツ、なんでパーティのチケットを直にくれなかったんだろう?ちょっと俺たちのテーブルに寄って渡してくれたらそれでよかったと思うが。。。
Tシャツはその場で脱いでまで手渡してきたほどの豪傑だ。
酔っ払っていたのだとしてもかなり妙な気がした。
うーむ。
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