6 / 58
狼と赤ずきん。
【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”に恥辱される。《前編①》
しおりを挟む
駐車場に停めてある軽自動車に電源を入れてからカーナビを起動させ、哉太が今住んでいる家…彼岸花 幸の家の住所を検索して確認し、発進させた。
彼岸花 幸とは赤い髪を2つに束ね、鋭い目つきをしている色黒で小柄な青年のことを差す。その風貌で喧嘩を吹っ掛けられることが大いにあるのだが、どんな不良達相手でも喧嘩にめっぽう強い…地元では不良にはかなり恐れられている存在。…赤い髪をなびかせ、そして、身体が小さい割にはどんな相手でも半殺しでぶちのめすほどの強さから取られた異名は”不幸の花人”と呼ばれ、恐れられている。のだが…実は喧嘩は売られることは多々あるが、彼は自分から売ったことは一度も無く、しかも苗字からも分かるほど不幸を振り被っている気苦労な青年で、哉太と出会う前は不幸続きだったらしい。
麗永が初めて会った際には幸は少々、言葉足らずで無知な一面もあったのだが、最近になっては勉学に励み、様々なことを覚えるようになってきている。
―恋人かつ同棲している哉太曰く、『昔の花ちゃんは結構おバカだったし、素直じゃなかったから、口説くのに手間取った~!』とニヤつきながらのろけ話を語っている姿を麗永は車内のクラッシク音楽を聴きながら思い出しては、なんとなく深く息を吐いた。
…場磁石君のことだ。彼に何かをしたんでしょうね。…全く、彼岸花君が彼のおかげで今が幸せなのかは…。
「彼岸花君にしか分かりませんね…。…そういえば言ってましたか。場磁石君ともあんな形で出会ったと聞いていますし…?」
また息を吐いて彼は音楽に浸る前に呟く。
「…あのクズ人間はどこまで人に迷惑を掛ければ」
音楽を聴きつつも運転に集中をする麗永は、人間嫌いなくせに信頼している人間には迷惑を掛ける自己中な”狼”に疲れを覚えた。
車を停めて彼岸花家に向かいインターホンを押すと、出てきたのは幸…ではなく同居人である少女の心であった。
囲戸 心。小学5年生とは思えないほど達観した性格と大人顔負けの名前の通り、ある意味心が広い少女は、とある事情により幸の家で暮らしている。麗永ともとある事件で対立をしたのだが今ではちゃんと和解し、たまに遊びに来ることもある関係となっている。
インターホンで麗永だと分かった心は、ドアを大きく開けて彼を出迎えた。
「おはようございます。今、撫子さんもいらっしゃってますよ。…こんな早くにすみません。…その、哉太君が悪いとは思うんですけど…」
心が小学5年生とは思えないほど丁重かつ礼儀正しく挨拶をし、室内へ案内する。
「…とりあえずは、おはようございます…ですね。心さんも、今日はお休みだというのに…。ちゃんと起きられて偉いですね~。場磁石君に関しては散々迷惑を掛けられていますから、お気になさらないで下さい。…それよりも」
すると麗永は彼女にこのような質問を投げかけた。それは、哉太がなぜこのような状態であったのかというのと…もう1つ。
「心さん。…彼岸花君は部屋にいらっしゃるんですか?」
「あ…はい」
「…恐らく、いや。必ず、絶対に場磁石君が悪いのは承知なんですが…。彼が居ないと話にならないというか…」
すると心は少々困った顔をしてから首を軽く横に振って悲しげな表情を見せていた。…つまり、彼女にも分からないらしい。…これはかなり困った。
「喧嘩でもされたんですか?」
すると彼女は不安げで悲しげな顔をして彼を案内し空を見上げる。その瞳は本当に何も分からずに自分でも探りたいが探れないという様子だ。
「…喧嘩、というか。幸君の部屋に入って聞いてみても何も答えないから、分からなくて。…それに」
―話さないんです。幸君がどうして哉太君と喧嘩をしたのかが。
「…彼岸花君がですか」
…そんな酷いことを言ったのか、あのバカ狼は。
「私の能力を使おうとすると、幸君は…とっても傷付いたような顔をするから使えないし」
悲しげに俯く彼女に麗永は考え込んでから本当に何があったのかが気になっていた。優しい彼女のことだ。気を遣って幸が自分から話してくれるのを待っているのだろうが…しかし困った。
「…本当に場磁石君は何をしでかしたのか。…二股だろうが何股だろうが、掛けそうなクズ狼ですが、彼岸花君にはぞっこんの彼です」
―じゃあどうして?
首を傾げている麗永に心は少しはにかんでからリビングのドアを開けた。…その表情はどこか疲れているような、悲しんでいるような様子が伺えた。
「…とりあえずくつろいで下さい。申し訳ありませんが、私は幸君の様子を見に行きます」
…やはり彼岸花君が心配なのですね。こうやって気に掛けてくれている方が居て、良かった。
だから麗永は優しげに微笑んでは申し訳なさそうにしている少女へ声を掛ける。それは心の底から思っていることであるから。
「大丈夫ですよ。逆に感謝をします。…行ってあげて下さい」
「…ありがとうございます」
そして心は彼をリビングへと通し幸の部屋へ行ったのだ。
彼岸花 幸とは赤い髪を2つに束ね、鋭い目つきをしている色黒で小柄な青年のことを差す。その風貌で喧嘩を吹っ掛けられることが大いにあるのだが、どんな不良達相手でも喧嘩にめっぽう強い…地元では不良にはかなり恐れられている存在。…赤い髪をなびかせ、そして、身体が小さい割にはどんな相手でも半殺しでぶちのめすほどの強さから取られた異名は”不幸の花人”と呼ばれ、恐れられている。のだが…実は喧嘩は売られることは多々あるが、彼は自分から売ったことは一度も無く、しかも苗字からも分かるほど不幸を振り被っている気苦労な青年で、哉太と出会う前は不幸続きだったらしい。
麗永が初めて会った際には幸は少々、言葉足らずで無知な一面もあったのだが、最近になっては勉学に励み、様々なことを覚えるようになってきている。
―恋人かつ同棲している哉太曰く、『昔の花ちゃんは結構おバカだったし、素直じゃなかったから、口説くのに手間取った~!』とニヤつきながらのろけ話を語っている姿を麗永は車内のクラッシク音楽を聴きながら思い出しては、なんとなく深く息を吐いた。
…場磁石君のことだ。彼に何かをしたんでしょうね。…全く、彼岸花君が彼のおかげで今が幸せなのかは…。
「彼岸花君にしか分かりませんね…。…そういえば言ってましたか。場磁石君ともあんな形で出会ったと聞いていますし…?」
また息を吐いて彼は音楽に浸る前に呟く。
「…あのクズ人間はどこまで人に迷惑を掛ければ」
音楽を聴きつつも運転に集中をする麗永は、人間嫌いなくせに信頼している人間には迷惑を掛ける自己中な”狼”に疲れを覚えた。
車を停めて彼岸花家に向かいインターホンを押すと、出てきたのは幸…ではなく同居人である少女の心であった。
囲戸 心。小学5年生とは思えないほど達観した性格と大人顔負けの名前の通り、ある意味心が広い少女は、とある事情により幸の家で暮らしている。麗永ともとある事件で対立をしたのだが今ではちゃんと和解し、たまに遊びに来ることもある関係となっている。
インターホンで麗永だと分かった心は、ドアを大きく開けて彼を出迎えた。
「おはようございます。今、撫子さんもいらっしゃってますよ。…こんな早くにすみません。…その、哉太君が悪いとは思うんですけど…」
心が小学5年生とは思えないほど丁重かつ礼儀正しく挨拶をし、室内へ案内する。
「…とりあえずは、おはようございます…ですね。心さんも、今日はお休みだというのに…。ちゃんと起きられて偉いですね~。場磁石君に関しては散々迷惑を掛けられていますから、お気になさらないで下さい。…それよりも」
すると麗永は彼女にこのような質問を投げかけた。それは、哉太がなぜこのような状態であったのかというのと…もう1つ。
「心さん。…彼岸花君は部屋にいらっしゃるんですか?」
「あ…はい」
「…恐らく、いや。必ず、絶対に場磁石君が悪いのは承知なんですが…。彼が居ないと話にならないというか…」
すると心は少々困った顔をしてから首を軽く横に振って悲しげな表情を見せていた。…つまり、彼女にも分からないらしい。…これはかなり困った。
「喧嘩でもされたんですか?」
すると彼女は不安げで悲しげな顔をして彼を案内し空を見上げる。その瞳は本当に何も分からずに自分でも探りたいが探れないという様子だ。
「…喧嘩、というか。幸君の部屋に入って聞いてみても何も答えないから、分からなくて。…それに」
―話さないんです。幸君がどうして哉太君と喧嘩をしたのかが。
「…彼岸花君がですか」
…そんな酷いことを言ったのか、あのバカ狼は。
「私の能力を使おうとすると、幸君は…とっても傷付いたような顔をするから使えないし」
悲しげに俯く彼女に麗永は考え込んでから本当に何があったのかが気になっていた。優しい彼女のことだ。気を遣って幸が自分から話してくれるのを待っているのだろうが…しかし困った。
「…本当に場磁石君は何をしでかしたのか。…二股だろうが何股だろうが、掛けそうなクズ狼ですが、彼岸花君にはぞっこんの彼です」
―じゃあどうして?
首を傾げている麗永に心は少しはにかんでからリビングのドアを開けた。…その表情はどこか疲れているような、悲しんでいるような様子が伺えた。
「…とりあえずくつろいで下さい。申し訳ありませんが、私は幸君の様子を見に行きます」
…やはり彼岸花君が心配なのですね。こうやって気に掛けてくれている方が居て、良かった。
だから麗永は優しげに微笑んでは申し訳なさそうにしている少女へ声を掛ける。それは心の底から思っていることであるから。
「大丈夫ですよ。逆に感謝をします。…行ってあげて下さい」
「…ありがとうございます」
そして心は彼をリビングへと通し幸の部屋へ行ったのだ。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる