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花人の謎

不幸ヤンキー、”狼”に招かれる。【3】

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 テーマパークへと入園した哉太や幸、そして心などを含めた5人の姿を監視カメラで確認したとある男…玉緒は不敵な笑みを見せた。そしてパソコンの画面を閉ざし、車を運転している秘書に行先を変更させるのだ。
「行先変更や。ワイのテーマパークに直行や。…ええな?」
「…また、武器を調達するおつもりで?」
「当たり前や」
「ははっ。それはまた都合が良すぎますな~」
 髭を生やし丸い眼鏡を掛けた秘書が笑いながら言えば、玉緒は大きく後部座席に背中を擦りつけ鼻で笑う。革で作られている車内のソファの感覚が心地よく最近はちゃんと眠ることが出来ないほど過度な仕事量で疲れてはいた。…だが、今回の武器、いや、アクセサリー調達という名の自身の武器が増えるという幸福感に包まれていく感覚を思えばこんなの大したことではない。むしろ内心でも表情でも喜びが伝わっていくのが自分でも分かった。
 そんな玉緒の様子を見て秘書である明松かがりは車内ミラー越しから見える社長の姿に再び笑う。
「今回もなんとか話し合いで解決して欲しいのですが…」
「商売はそうやけれど、武器調達はそういう訳にはいかんのや。どれだけ言えば分かる?」
「それでも嫌ですよ。…社長がなんて犯したら。…わたくし達社員に被害が被りますから」
 その言葉に玉緒は少し起き上がっては欠伸をした。やはりまだ眠気はある。…だが秘書が聞き捨てならない言葉を言うものだから訂正をせねばと思ったのだ。隣にある肌身離さずに持ち歩く財産…アタッシュケースを自身の前にして彼は薄らに笑った。
「なに言うんねん明松かがり。そんなアホなことは出来るかいな。でもそうやな」
 ―やるっちゅうなら、これやろ?
 すると玉緒はアタッシュケースの厳重な蓋を開け放ち、数多くあるアクセサリーから1つを取り出した。ハートの中心に五寸釘のようなものが何本も突き刺さっているアクセサリーはを示しているかのように気味が悪い。それに息を吹きかけて、玉緒は右手をアクセサリーと対面させ祈るようにした。
 ―するとアクセサリーは勝手に動き出し振り子のようにグルグルと回る。そしてパソコンの画面をもう一度開き直し、アクセサリーの動きを見た。…それが示すのは離れてはいるが歩いているの人間。それをミラー越しから見た明松かがりは少し不安げな様子であった。
「今回は2つも狙うのですか?」
「まぁそうや。ええやろ?」
「…社長も欲がお深いですね~」
「それが商売人ちゅうってことや。…さぁ~て、”ハートイータ”。…ワイが邪魔やと思う相手の心を刺せ。呪って食ってしまってもええ。…ええか?」
 ”ハートイータ―”と呼ばれた五寸釘を刺した心臓は一瞬止まってからクルクルと回る。それはまるで喜んでいるように思える。
 ―そんなアクセサリーを容易く扱う数珠 玉緒という男は一体何者なのだろうか?
 疑問も浮かび上がるが彼は多くの監視カメラから2人の人物を拾い上げて画像で表し、”ハート―イータ”に見せつけた。そして命令する。
「喰え。”ハートイータ”」
 ―じゃあな、お2人さん?
 画像で浮き上がったのは脇腹に大きな狼の入れ墨を入れた男と、白髪の青年が映っていた。
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