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狼が参上!

不幸ヤンキー、”狼”に定められる。【2】

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「花ちゃん~、こころぉ~、聞いてよ~!!!!」
「…それはあんたが悪い」
「…哉太君。私も幸君に同感です」
「え~!!!? 俺、なにも言ってないのに…」
 即座に否定された哉太は愕然とした様子で2人に目を向けた。しかし彼の手元のスマホに映っているのは、ムキムキマッチョの男達が画面で際どいポーズを取っている姿…ビキニのカタログであった。さすがの幸はかなり引いてしまうものの心の教育的に良くないと判断し、素早く手元から取り上げたのだ。その行動に哉太は子供じみた様子で声を上げる。
「俺のスマホ~! なんでよ~?」
「あんたは心ちゃんにもっと気を遣え!」
「あ~、俺のビキニ特集が―」
「言うな、バカ!」
 ――――ヴヴヴヴゥゥ!
 すると哉太のスマホが着信を示して何度も震えていたのだ。不審を抱いた幸はスマホのコール音を押してから耳に傾けると…。
『おい…場磁石!! てめぇまた締め切り守らずにのうのうと生きていやがるとは~! さすがに太陽のような心を持つ俺でも…ぶっ飛ばす覚悟は出来ているぜ?』
 それはとてつもないほどの怒気を孕んだ担当編集の撫子からだった。
 …そういうことか。
 哉太がどうしてみっともなく泣き出しそうな顔をしているのにも納得がいった幸。だから彼は息を吐いて応答をするのだ。
「撫子さん、落ち着いて下さい。…彼岸花です。哉太さんには後で説教しておきますから」
「え~! 俺、説教を受ける羽目になるの…。うわぁ…撫子を呪ってやる」
 哉太がぼやく中、幸が電話に出た途端、撫子はおとなしくなっては今の状況を聞くことにしたようだ。
『おぉ…。彼岸花か。場磁石、様子はどうだ?』
「すいません…。俺も分からなくて…、だから後で俺からも言って―」
 立ち上がってスマホに耳を傾けていた幸の手元のスマホを誰かが奪い去ったのだ。目を向けると、哉太が依然とした態度と声で言い放つ。
「俺は今から、こころがおとーさんと面会行く間に幸とするのでもう切りま~す。…じゃ!」
『はぁっ!?? おい、ばじ―』
 ―――プチンっ。
 幸から取り上げたスマホの電源を切り、幸を抱き寄せた。そんな彼に幸は顔を紅潮させるが、哉太は構わずに言う。
「はい邪魔者は居ないからさ~、幸はこんな惨めな俺を慰めてよ~?」
「なんでだよ? ていうか離れろ!」
「じゃあ…しないとこうしちゃう」
 ―――ッチュ!
 すると幸の頬にキスをしたのだ。心がいる前なので幸としては羞恥心はもちろんある。…だが心にとってはそれが日常と化していた。
 ―『哉太は幸が大好き。幸も哉太を愛してる』…そんなの、心を読めなくても分かる事実である。そんな彼らに心はいそいそとして出かける準備をするのだ。そして、皮肉交じりに言い放つ。
「イチャコラするのは私が出て行ってからにしてよ。…まったく。これだからは…」
「バカって…心ちゃん! さっきのは誤解で―」
「誤解じゃないもんね~。ねぇ花ちゃ~ん?」
「あんたはひっつくな!!!?」
 そんな日常幸せが続いて欲しいと誰もが願った。…嵐が来るまでは。
 ―――ピンポーン!
「…なんだろ。はーい!」
 哉太の拘束を素早く離してハンコを取りに行き幸は対応をすると、哉太は冗談交じりで心に話し掛けるのだ。
「…なんか気晴らしが出来る物だったりして?」
「哉太君は原稿仕上げなよ…。じゃあ私はさっさと家を出ようかな~」
「こころも冷たいよ~? お兄さんの心がもっと冷たく―」
「な…んで?」
 明らかに戸惑っている様子の幸に哉太と心が駆け寄った。そして哉太が問い掛けるのだ。
「花ちゃん、なにかあった?」
「…これ」
「…ん?」
 驚いている様子の幸に哉太と心が駆け寄り封筒を見る。幸が受け取った郵便にはあて名が書いてあった。
 ―あて名は”囲戸 心”様と。そして差出人は…。
「…数珠じゅず 玉緒たまおね。……嫌な知らせが来ちゃったよ」
 哉太は知っているような素振りを見せるのであった。
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