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しおりを挟むいつかの日を彷彿させるがごとく、それは突然のことだった。
「陸斗!お前の尻いじらせて!」
「………は?」
いつものように大学で講義を受けた後にバイトを終えて、疲れた体をソファーで休めていた俺にそう一言。耳を疑いたくなるようなセリフだが、キラキラと目を輝かせている蒼真に一応確認を取る。
「なん…?俺の尻、、?」
「うん。陸斗のお尻。」
「じゃ、俺はそろそろ寝るから。疲れてるんだろお前も早く寝ろよ~」
「ちょ、おい待ってまって!!」
どうやら蒼真は疲れているらしい。もしくは俺が疲れすぎて幻聴が聞こえているのか。
なんにせよ、俺の尻なんかいじってどうするつもりなんだろうか。そもそもいじるってなんだ?ただ触るんじゃなくて?
「………なんだよ。」
「陸斗、俺本気だから。大丈夫お前が痛がることなんてしないよ。乳首のときもそうだったろ?絶対気持ちよくするから。」
「ちっ、乳首はまあ、そうだけどさ、、なんで急に尻なんだよ。」
「え?」
「ん?」
蒼真が驚いた顔をして、掴んでいた俺の腕をするりと離す。少し考える素振りを見せた後スッと俺の方を見据えた。くそ、顔が無駄にいいからそれだけで心臓が跳ねる。
「もしかして、陸斗男同士の方法知らない?」
「方法って、なんの?」
「っ、まじか。お前ちょっと純情すぎないか…?」
蒼真が口に手を当てて俺の方をまじまじと見る。よく分からないが、軽くショックを受けているらしい。もしかして今俺は幻滅されてる……?そう思うと頭に冷水を被せられた気になる。最近両思いが発覚して恋人に落ち着いた俺たちだが、今だに俺が陸斗に釣り合っているとは思えない。
蒼真が俺に興味を失ってしまったらどうしようと頭の中でグルグルと考えるが、なす術がない。
「……フッ、ふふ、そんな不安そうな目で見てくるなって。ごめんな、ちょっと驚いただけ。どんだけ俺の恋人はかわいいんだろうって。」
「なんなんだよお前、、」
「ごめんって、怒らないで。おいで陸斗。ちょっと話そうぜ。」
蒼真が俺の手を引いて寝室に向かう。ペタペタと翔の後ろをついていくが、こいつが何を考えているのかイマイチまだ分からない。あと握る手の力が強くてちょっと痛い。
「着いた。」
「おい、手。痛いって、、っッうわ!!」
寝室に着いたと思ったら、すぐにベットに投げられた。文句を言おうと思ったら蒼真がベットに乗り上げてきて、二人分の重みで軋んだ音がする。部屋が暗いから顔はよく見えないが、口元は緩んでいる気がするので機嫌は良さそうだ。
「………翔?」
「かわいいね、陸斗。でもちょっと残念な気持ちはあるかも。俺とのセックス考えたことはなかった?」
「せ?!なんでそんな急に」
「俺はいつも考えてる。陸斗と繋がれたら絶対気持ちいいし幸せなんだろうなって。お前がこんな格好してるときは特にな。」
つ、、と蒼真の指が俺の太ももをなぞる。風呂から上がって、暑いからよく下は履かずに下着でいるから、素肌を直に触られる。ピク、と俺が反応すると蒼真は楽しそうに目を細めた。
「な、考えたことある?」
「~っ!」
「ほら教えて。」
「………あるっ!あるよもちろん!でもその、正直最近お前恋人になれただけで満足してたから、そういうこと頭から抜けてたって言うか、」
「そもそも翔が恋人になるとか思ってなかったし、その先のこととか考えてすらなかったから、頭いっぱいになってて、、やり方とかよく分からないんだよ。ごめん。」
「……………はあぁ、」
捲し立てるように喋る俺を、真上から見下ろすようにして見つめている蒼真が大きくため息をつく。そのまま脱力して俺の上にのしかかってきた。重い。
「ああもう、ほんとかわいすぎるよお前。」
耳に吐息があたるくらい密着し、ボソリと翔がつぶやいた。普段と違い低くて掠れた声にまた心臓が跳ねる。ぐりぐりと肩口に額を押し付けてきたかと思ったら、蒼真が体を起こした。
「ピュアな陸斗くんは、本当に何も知らないんだねぇ。思えば乳首いじらせてって言った時もチョロかったし、俺心配なんだけど。」
「ピュアって!馬鹿にすんなっての!俺だってちょっと調べればそれなりに上手くやる自信あるわ!」
「………だめ。陸斗はそのままで何も知らないでいいから。」
「はあ?」
「俺が全部教えてやるから。俺の手で何も知らないお前に初めての快楽を教えてやるって、最高だろ?俺さ、新雪とか踏み荒らすの好きなタイプのガキだったんだよね。」
ちゅっ、とリップ音と共に触れるだけのキスを落として微笑む蒼真はやはりかっこいい。こうやって俺はいつも流されてしまうのか……と思うが、まんざらでもない自分がいるのも事実だ。
「分かったよ。蒼真の好きにしてくれ。」
「ありがとう陸斗。一緒に気持ちよくなろうな。………で、尻の話だけど。」
「まあなんとなく想像はできるよな。蒼真、俺に挿れたいんだ。」
「うん。痛くないように頑張るから、陸斗のなかに入るのを許してほしい。……ダメか?」
「………いいよ。怖くないと言えば嘘になるけど、蒼真になら何されたっていい。」
「凄い殺し文句だな。愛してる、陸斗。」
嬉しそうに顔を綻ばせた蒼真が、頬に何度もキスを落とす。犬みたいだな、と思い頭を撫でてやると強く抱きしめられた。そして腰を抱く手が肌に滑らせるように徐々に下がっていって、蒼真の手が俺の下着にかかる。
「え?ちょ、おい!!」
「んー?」
慌てて蒼真の手を掴み止めようとするが間に合わず、そのままするりと下着を脱がされ床に放り投げられてしまった。
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