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第66話 ガチャ石を、割って、溶かす
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「あぁ、そりゃ聖翔石って奴だな」
その日のお昼。見舞いにやってきたアベルにそのことを説明すると、やはり存在はしているらしい。
でも、この世界にはそれなりに長く生活してきているけど、見たことがない気がする。
「あー、なんだったかなぁ、もともと数が少なかったんだろうなぁ。何百年も前に掘り尽くされたって話だ。それに、そう簡単に手に入るもんじゃないしな。あと、魔石は言ってしまえば魔力の結晶。使えば消える。氷のようにな」
「消えちゃうの?」
「あぁ、なんだ知らなかったのか?」
「使ったことないもの」
マヘリアとしての記憶をたどっても、彼女が魔石を使ったことは一度もないはず。
一応、儀礼とかの関係で王族が使っているのを見たことはあるらしいけど、それだけじゃねぇ。
「ま、そりゃそうだな。魔石はそれ一つで魔法の代わりみたいなことができるが、一度でも使えば消滅する。昔はそれを利用してあれこれ好き勝手やってたようだが、数が少なかった。それに、火とかは出せても出し続けることは出来ないんだよ。せいぜい、数分程度が? 一瞬の攻撃に使うならまだしも、なぁ? 今の時代、知ってる奴の方が少ないんじゃないか?」
なんというか、出鼻を挫かれた感じはしないわね。
言ってしまえば石炭とかも使い切ってしまえば殆ど残らないし。
もともと、蒸気機関をメインとする予定で魔法機関はその代替品のつもりだったし。
しかし、まさか使ったらそのまま消えるだなんて……そういえば先輩、「石が溶けるぅ~」とか変なイントネーションでしゃべっていたわね。
あれ、そういうことなんだ……本当に、溶けてるんだ……怖いわね。そんなのにあの人、数万円も使ってたのかしら。
「俺もこれはガキの頃の家庭教師に聞いた程度の話だが、魔石ってのは土地の魔力が結晶化したものだ。だが、それが使えるレベルにまで大きくなるにはそれこそ気の遠くなる年月が必要だって話だぜ? しかも、できるかどうかもわからない、できたとしても広大な土地に一つ、二つ……てなぐらいらしい」
「ふぅん、形はどうあれ、鉱物資源と同じだってことに変わりはないわね。でも化学変化は起こせそうにないわね……本当に、結果だけを出すものなのかしら」
火の魔石は火を熾せる。それだけでも十分使い道はあるけど、石炭たちの代わりにはなりえない。不純物が出ないかもしれないのは良いけど、製鉄に関しては本来抽出されるべき物質がないのはかなり痛手だ。
でも別の側面を見れば何の不純物もなく高温を発せられて、鉱石を溶かせれると考えるとむしろ欲しくなるわね……利用方法はいくらでもある……でも燃焼し続けれないってなると結局他の素材を使ったほうが効率はいいし……。
ただし、アベルの話を聞けば私たちが利用できる鉱物資源に比べると産出量が少ないのね。大規模の利用は不可能ってことかしら。
「なるほどねぇ、この世界が、異様な部分で発達しているのになんで未だにもたついているか、ちょっとわかったかも」
やはりというか原因は魔法という存在だ。
便利すぎるがゆえに、それを使いすぎた。その結果として、成長を遂げた技術もあるけれど、今度はそれだけで終わってしまうから、長続きしないんだ。
まぁ、これは石炭燃料機関も同じだけど、そのころには電気当たりが実用化されていると考えましょう。まだ石油も残っているはず。
そして魔石の存在も大きい。火を熾す、水を出す、風を吹かせる。これはつまりはエネルギーとして利用できるけど、産出量が少なく、使えばそれでおしまい。石炭も木炭も究極を言えば使ってしまえばおしまいだけど、これらは量でカバーができる。そのほかの利用方法もある。
魔石にはそれがなさすぎるのだろう。
「あぁ、あとあれだな事故が多い」
「事故?」
「魔石は魔力に反応をするんだ。しかも不安定なものほど、やばい。別に山で魔法を使ったら即座に魔石が暴走するってわけじゃないが、仮に、魔法を使って山を掘り続けてりゃ、ボンッだ。だから、炭鉱夫の仕事は底辺に落ちたのさ。貴族が、魔法使いが危険にさらされる仕事だってことでな」
そういうカラクリもあったわけ?
うぅん、でもちょっと残念ねぇ。数は少なくても研究をするぐらいはしていれば、この国はもっと飛躍的な進歩を遂げていたと思うのに。
まぁ、そんな希少なものを研究なんてものに回せるわけないか……。
「ただ、聖翔石だけは今も王家が管理してるぜ。と言っても、あれは魔石ともまた微妙に違うからなぁ」
「そういえばあれってどういうことに使うものなの? 昔に見た本では無から有を生み出すみたいなことがあったけど、さすがに嘘でしょう?」
これはゲームシステム的な解釈をどうするかで変わってくる。とにかく、あの石はガチャというものを回すためのもので、その結果、色んなアイテムを輩出してくれるけど、さすがにそのままってわけじゃないでしょうし。
「正直、わからん」
でしょうね。
「いや本当にわからん。俺も使ったことはねぇし、それこそまた聞きの、また聞きレベルだ。あれも、何かに使えば消える。だが、その結果、何が起きてるのかさっぱりなんだ。人の願いに反応しているというが、じゃあ大金を願った奴のもとに大金がころがりこんでくるなんて話は聞いたことがねぇ。もしそうなら、うちの国はもっと栄えてる。最強の軍人を願えばそれが出てくるわけだからな」
まぁ、そうねぇ。そこまでいくと多分、別のゲームになるけど。
でも、実際はそうじゃなかったと。
「ただの偶然と言えばそれまでだろうが、過去の王家にゃそういうので、今のプリンセスみたいに上り詰めた奴もいるってぐらいだし、なぜか急に最高級のドレスが届いたって話も、伝説としては残っている」
願いに反応ねぇ……具体性がなさすぎるわね。
ほんと、ファンタジーはよくわかんないわ。
地に足を付けた科学技術の推進を狙う方がいいわね、やっぱり。
その日のお昼。見舞いにやってきたアベルにそのことを説明すると、やはり存在はしているらしい。
でも、この世界にはそれなりに長く生活してきているけど、見たことがない気がする。
「あー、なんだったかなぁ、もともと数が少なかったんだろうなぁ。何百年も前に掘り尽くされたって話だ。それに、そう簡単に手に入るもんじゃないしな。あと、魔石は言ってしまえば魔力の結晶。使えば消える。氷のようにな」
「消えちゃうの?」
「あぁ、なんだ知らなかったのか?」
「使ったことないもの」
マヘリアとしての記憶をたどっても、彼女が魔石を使ったことは一度もないはず。
一応、儀礼とかの関係で王族が使っているのを見たことはあるらしいけど、それだけじゃねぇ。
「ま、そりゃそうだな。魔石はそれ一つで魔法の代わりみたいなことができるが、一度でも使えば消滅する。昔はそれを利用してあれこれ好き勝手やってたようだが、数が少なかった。それに、火とかは出せても出し続けることは出来ないんだよ。せいぜい、数分程度が? 一瞬の攻撃に使うならまだしも、なぁ? 今の時代、知ってる奴の方が少ないんじゃないか?」
なんというか、出鼻を挫かれた感じはしないわね。
言ってしまえば石炭とかも使い切ってしまえば殆ど残らないし。
もともと、蒸気機関をメインとする予定で魔法機関はその代替品のつもりだったし。
しかし、まさか使ったらそのまま消えるだなんて……そういえば先輩、「石が溶けるぅ~」とか変なイントネーションでしゃべっていたわね。
あれ、そういうことなんだ……本当に、溶けてるんだ……怖いわね。そんなのにあの人、数万円も使ってたのかしら。
「俺もこれはガキの頃の家庭教師に聞いた程度の話だが、魔石ってのは土地の魔力が結晶化したものだ。だが、それが使えるレベルにまで大きくなるにはそれこそ気の遠くなる年月が必要だって話だぜ? しかも、できるかどうかもわからない、できたとしても広大な土地に一つ、二つ……てなぐらいらしい」
「ふぅん、形はどうあれ、鉱物資源と同じだってことに変わりはないわね。でも化学変化は起こせそうにないわね……本当に、結果だけを出すものなのかしら」
火の魔石は火を熾せる。それだけでも十分使い道はあるけど、石炭たちの代わりにはなりえない。不純物が出ないかもしれないのは良いけど、製鉄に関しては本来抽出されるべき物質がないのはかなり痛手だ。
でも別の側面を見れば何の不純物もなく高温を発せられて、鉱石を溶かせれると考えるとむしろ欲しくなるわね……利用方法はいくらでもある……でも燃焼し続けれないってなると結局他の素材を使ったほうが効率はいいし……。
ただし、アベルの話を聞けば私たちが利用できる鉱物資源に比べると産出量が少ないのね。大規模の利用は不可能ってことかしら。
「なるほどねぇ、この世界が、異様な部分で発達しているのになんで未だにもたついているか、ちょっとわかったかも」
やはりというか原因は魔法という存在だ。
便利すぎるがゆえに、それを使いすぎた。その結果として、成長を遂げた技術もあるけれど、今度はそれだけで終わってしまうから、長続きしないんだ。
まぁ、これは石炭燃料機関も同じだけど、そのころには電気当たりが実用化されていると考えましょう。まだ石油も残っているはず。
そして魔石の存在も大きい。火を熾す、水を出す、風を吹かせる。これはつまりはエネルギーとして利用できるけど、産出量が少なく、使えばそれでおしまい。石炭も木炭も究極を言えば使ってしまえばおしまいだけど、これらは量でカバーができる。そのほかの利用方法もある。
魔石にはそれがなさすぎるのだろう。
「あぁ、あとあれだな事故が多い」
「事故?」
「魔石は魔力に反応をするんだ。しかも不安定なものほど、やばい。別に山で魔法を使ったら即座に魔石が暴走するってわけじゃないが、仮に、魔法を使って山を掘り続けてりゃ、ボンッだ。だから、炭鉱夫の仕事は底辺に落ちたのさ。貴族が、魔法使いが危険にさらされる仕事だってことでな」
そういうカラクリもあったわけ?
うぅん、でもちょっと残念ねぇ。数は少なくても研究をするぐらいはしていれば、この国はもっと飛躍的な進歩を遂げていたと思うのに。
まぁ、そんな希少なものを研究なんてものに回せるわけないか……。
「ただ、聖翔石だけは今も王家が管理してるぜ。と言っても、あれは魔石ともまた微妙に違うからなぁ」
「そういえばあれってどういうことに使うものなの? 昔に見た本では無から有を生み出すみたいなことがあったけど、さすがに嘘でしょう?」
これはゲームシステム的な解釈をどうするかで変わってくる。とにかく、あの石はガチャというものを回すためのもので、その結果、色んなアイテムを輩出してくれるけど、さすがにそのままってわけじゃないでしょうし。
「正直、わからん」
でしょうね。
「いや本当にわからん。俺も使ったことはねぇし、それこそまた聞きの、また聞きレベルだ。あれも、何かに使えば消える。だが、その結果、何が起きてるのかさっぱりなんだ。人の願いに反応しているというが、じゃあ大金を願った奴のもとに大金がころがりこんでくるなんて話は聞いたことがねぇ。もしそうなら、うちの国はもっと栄えてる。最強の軍人を願えばそれが出てくるわけだからな」
まぁ、そうねぇ。そこまでいくと多分、別のゲームになるけど。
でも、実際はそうじゃなかったと。
「ただの偶然と言えばそれまでだろうが、過去の王家にゃそういうので、今のプリンセスみたいに上り詰めた奴もいるってぐらいだし、なぜか急に最高級のドレスが届いたって話も、伝説としては残っている」
願いに反応ねぇ……具体性がなさすぎるわね。
ほんと、ファンタジーはよくわかんないわ。
地に足を付けた科学技術の推進を狙う方がいいわね、やっぱり。
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