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EP20【魔獣退治のお仕事】(中編)

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 こうなったら、投げ渡されたそれに全部を賭けてやる。ギャンブルで有り金を溶かすこよりも、新しくできた友達を信じる方が数段マシだ。

〈S200・FD専用・対魔装甲炸裂鉄鋼パイルバンカー。アンタの新しい右腕よ、スパナ!〉

〈なるほどな……ネジが依頼していた部品ってのはコレのことか!〉

 それは〈ドール〉の腕にしてはやや重く、サイズも一回り大きかった。

 亥の一番に目を惹くのは前腕部に収められたリボルバーのような機構と、そこに装填された三本の鉄杭であろう。未完成であるがゆえに露出したままのチューブたちは、俺の中枢から魔力を鉄杭へと充填されるためのものだ。

 以上の外観から、俺はこの右腕の特性を理解する。〈アウトバースト・マジック〉の威力で鉄杭を撃ち出し、敵を内側から破壊する突貫兵器。────それこそ、この俺スパナ様専用・大魔装甲炸裂鉄鋼パイルバンカーの真骨頂だ!

「行くぜッ!」

 俺は簡易腕を取り外し、クルスくんに託された秘密兵器を装着した。すると鉄杭の先に照準を定めるための魔法陣が出現する。

 この十字のド真ん中に標的を置けばいいのだろう。

〈現在の魔力充填率は六割程度か……ネジ! お前の分の魔力も合わさなきゃ、この腕動かねぇぞ!〉

 この右腕はネジと俺が協力することが前提の代物だった。俺がお袋から受け継いだ膨大な魔力と、ネジの魔女としての魔力。その二つがあってようやく真価を発揮するようになっている。

 ネクロ・ドラゴンもいい加減囚われっぱなしではいられないようだ。木々を引きちぎり、俺の方へと突っ込んできた。

〈外したら、ぺちゃんこスパナ・ヘッドバーンね〉

〈ハッ。誰が外すかよ。俺は天下のスパナ様だ」

 左腕を添えながら俺は照準を定めた。頭蓋を砕いて、一撃で葬らせて貰おうじゃないか。

 俺たちは呼吸を合わせて、鉄杭へと魔力を充填する────

「「〈アウトバースト・マジック〉+突貫非魔法〈パイルバンカー〉ァァァァ!!!」」

 目が眩むような閃光に、耳をつんざく轟音。そして凄まじい魔力を注ぎ込まれた鉄杭は竜骨の中を砕き、突き進んだ。

「へっ! ……派手に飛べ」

 撃ち込まれた鉄杭はやがて、俺たちの魔力の量に耐えきれず臨界を越える。その瞬間に合わせて暴発魔法が作動。標的を内部から破壊した。

 この賭けは俺たちが勝たせてもらったぜ。フッ……たまにはこんな感じで勝利の余韻に浸るのも悪くないだろう。

 ……けど、なんかだか焦げ臭いような。それに俺の内部に仕込まれた熱探知機がさっきから俺の右腕を指して、うるさくアラートを鳴らしている。

「スパナ!! 腕! 腕ぇ!!」

「火! 火が出てます!!」

 二人が冷や汗をかいていた。

 なるほど……未完成というのはこういうことか。

 放熱機構、さらには溢れ出す魔力を抑えるだけの強度が完成していなかったのだろう……って分析してる場合じゃねぇ!
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