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光のもとへ…⑥
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私の少し前を歩く森野さんが遠く感じて切なくなる。
じわりと涙が込み上げて来た時、人込みに押されて森野さんからはぐれそうになってしまった。
必死に森野さんの背中を追い掛けようとした時、森野さんが振り向いた。
もみくちゃになっている私を見て、森野さんは私の腕を掴んで引き寄せる。
「ちびっこは大変だな~」
嫌味では無く、恐らく本心から出たであろう言葉に
「ち…ちびっこって!これでも157㎝はありますよ!」
反論した私の手を森野さんが握る。
「嫌かもしれないけど、場所に着くまで我慢しろ」
そう言って歩き出した。
私の手を、森野さんの大きな手が握っている。
森野さんの温もりに、心臓が破裂するほどにドキドキと鳴り響く。
すれ違う女性の視線が森野さんの次に私に注がれ、羨望の眼差しに胸が痛む。
時間にしたら5分位だと思う。
やっと集合場所に近付いた時、ゆっくりと森野さんの手が私の手から離れた。
急に自由になった右手が寂しく感じてしまう。
「おお!やっと来た。柊さん、森野君。こっちこっち」
山崎さんと店長が手を振る。
かなり上り坂を上ったと思っていたが、山の中腹に広い庭園を見渡せる広間があった。
そこから見える桜並木は圧巻だった。
「凄い…。」
思わず呟いた私に
「ね、綺麗でしょう?」
木月さんが微笑んで、隣に座るように私を手招きしている。
木月さんに促されて座った場所からは、山の高さごとに咲き乱れる桜の花が一望出来た。
ソメイヨシノだけでは無いらしく、ピンクの濃い桜や桃の花も咲いている。
様々な花々に心が奪われていると
「良く、こんな良い場所が取れましたね」
って、森野さんが驚いた顔で山崎さんに話している。
「なにせ、特別隊を派遣してたからね!」
とふんぞり返る山崎さんに
「何言ってるのよ!木月さんのお子さんが昼間に此処で花見してて、そのまま譲ってもらったんでしょう!」
と、杉野チーフの突っ込みが入った。
「毎年、ありがとうございます」
森野さんは小さく微笑むと、木月さんに軽く頭を下げる。
「お礼なんていらないわよ!私も毎年、みんなと此処で桜を見るのが楽しみなんだから」
木月さんはそう言いながらお弁当を広げた。
「わぁ!美味しそう。木月さん。毎年、ありがとうございます」
山崎さんや他の売り場の菊池さんが笑顔でお礼を言っている。
「今年は、杉野チーフと柊さんも作ってくれたから、豪華よ~」
木月さんの言葉に、木月さんと杉野チーフ以外が一斉に私を見た。
「え?柊さんって、料理出来るの?」
「お前、お弁当に詰めてただけだろ?」
「柊ちゃん、えぇお嫁さんになれるなぁ~」
「え?柊さん、どれ作ったの?」
森野さんの発言は無視して、私は自分の作った人参とアスパラの肉巻きと筍ご飯のおにぎりを勧めた。
みんな「美味しい」って食べてくれて、作って良かったって嬉しくなる。
「これ…、本当にお前が作ったのか?木月さんが下処理したのを、お前が焼いただけとかじゃね~の?」
相変わらず失礼な森野さんに
「じゃあ、食べなくて良いです!」
って言いながら、森野さんの持ってるおにぎりを奪おうと手を伸ばす。
「食べ物は粗末にしちゃダメだからな。仕方ないから食ってやる」
「仕方ないなら、食べなくて良いです!」
怒っておにぎりの奪い合いをしていると
「暑いなぁ~。なんや、どこぞの売り場の2人がイチャイチャしとるなぁ~」
店長の言葉に、私と森野さんが固まる。
そして周りを見ると、興味津々な顔をして見ていた他の人達が白々しく視線を逸らす。
その様子に森野さんは溜息を吐いて
「ちょっと一服して来ます」
って、席を立った。
「照れてる、照れてる…」
クスクス笑っている人達を睨みつけると、森野さんは歩いて行ってしまう。
私がハラハラしていると
「気にせんでええよ。森野君、いつもあんな感じやし」
と、店長が呟く。
すると、他の人達も気にしない感じで流してる。
さすが皆様、森野さんの扱いに慣れていらっしゃる。
「それよりほら、桜を楽しみましょう」
木月さんの一言で、みんなの視線が桜へと移る。ライトアップされた桜を見ながら、「日本人で良かったよな~」なんて、みんなで口々に言いながら桜を見ていた。
しばらくして戻って来た森野さんも、普段は無表情だけどなにやら楽しそうにしている。
日が暮れるにつれ、運転担当の森野さんと山崎さん以外はアルコールが進んで来て凄い盛り上がっている。
私はアルコールを飲まず、みんなの酔っ払いぶりに唖然としていた。
店長に至っては、運転手の2人にもお酒を勧めようとするから、私と杉野チーフで阻止していた。
ただ…さすがに4月とは言え、夜になると冷え込んでくる。
私は上着を着ていたけど、下からの冷え込みにトイレに行きたくなった。
「すみません、ちょっとトイレに行ってきますね」
木月さんにこっそり告げて、私は山を登り切った所にあるお手洗いへと向かう。
公園のトイレだからと心配していたけれど、きちんと整備されていて、清潔でホッとする。お手洗いから出ると、女の子の泣き声が聞こえて来た。私がキョロキョロと辺りを見回すと、どうやら迷子になったらしい兄妹が、桜をライトアップしている照明の下に立っている。
じわりと涙が込み上げて来た時、人込みに押されて森野さんからはぐれそうになってしまった。
必死に森野さんの背中を追い掛けようとした時、森野さんが振り向いた。
もみくちゃになっている私を見て、森野さんは私の腕を掴んで引き寄せる。
「ちびっこは大変だな~」
嫌味では無く、恐らく本心から出たであろう言葉に
「ち…ちびっこって!これでも157㎝はありますよ!」
反論した私の手を森野さんが握る。
「嫌かもしれないけど、場所に着くまで我慢しろ」
そう言って歩き出した。
私の手を、森野さんの大きな手が握っている。
森野さんの温もりに、心臓が破裂するほどにドキドキと鳴り響く。
すれ違う女性の視線が森野さんの次に私に注がれ、羨望の眼差しに胸が痛む。
時間にしたら5分位だと思う。
やっと集合場所に近付いた時、ゆっくりと森野さんの手が私の手から離れた。
急に自由になった右手が寂しく感じてしまう。
「おお!やっと来た。柊さん、森野君。こっちこっち」
山崎さんと店長が手を振る。
かなり上り坂を上ったと思っていたが、山の中腹に広い庭園を見渡せる広間があった。
そこから見える桜並木は圧巻だった。
「凄い…。」
思わず呟いた私に
「ね、綺麗でしょう?」
木月さんが微笑んで、隣に座るように私を手招きしている。
木月さんに促されて座った場所からは、山の高さごとに咲き乱れる桜の花が一望出来た。
ソメイヨシノだけでは無いらしく、ピンクの濃い桜や桃の花も咲いている。
様々な花々に心が奪われていると
「良く、こんな良い場所が取れましたね」
って、森野さんが驚いた顔で山崎さんに話している。
「なにせ、特別隊を派遣してたからね!」
とふんぞり返る山崎さんに
「何言ってるのよ!木月さんのお子さんが昼間に此処で花見してて、そのまま譲ってもらったんでしょう!」
と、杉野チーフの突っ込みが入った。
「毎年、ありがとうございます」
森野さんは小さく微笑むと、木月さんに軽く頭を下げる。
「お礼なんていらないわよ!私も毎年、みんなと此処で桜を見るのが楽しみなんだから」
木月さんはそう言いながらお弁当を広げた。
「わぁ!美味しそう。木月さん。毎年、ありがとうございます」
山崎さんや他の売り場の菊池さんが笑顔でお礼を言っている。
「今年は、杉野チーフと柊さんも作ってくれたから、豪華よ~」
木月さんの言葉に、木月さんと杉野チーフ以外が一斉に私を見た。
「え?柊さんって、料理出来るの?」
「お前、お弁当に詰めてただけだろ?」
「柊ちゃん、えぇお嫁さんになれるなぁ~」
「え?柊さん、どれ作ったの?」
森野さんの発言は無視して、私は自分の作った人参とアスパラの肉巻きと筍ご飯のおにぎりを勧めた。
みんな「美味しい」って食べてくれて、作って良かったって嬉しくなる。
「これ…、本当にお前が作ったのか?木月さんが下処理したのを、お前が焼いただけとかじゃね~の?」
相変わらず失礼な森野さんに
「じゃあ、食べなくて良いです!」
って言いながら、森野さんの持ってるおにぎりを奪おうと手を伸ばす。
「食べ物は粗末にしちゃダメだからな。仕方ないから食ってやる」
「仕方ないなら、食べなくて良いです!」
怒っておにぎりの奪い合いをしていると
「暑いなぁ~。なんや、どこぞの売り場の2人がイチャイチャしとるなぁ~」
店長の言葉に、私と森野さんが固まる。
そして周りを見ると、興味津々な顔をして見ていた他の人達が白々しく視線を逸らす。
その様子に森野さんは溜息を吐いて
「ちょっと一服して来ます」
って、席を立った。
「照れてる、照れてる…」
クスクス笑っている人達を睨みつけると、森野さんは歩いて行ってしまう。
私がハラハラしていると
「気にせんでええよ。森野君、いつもあんな感じやし」
と、店長が呟く。
すると、他の人達も気にしない感じで流してる。
さすが皆様、森野さんの扱いに慣れていらっしゃる。
「それよりほら、桜を楽しみましょう」
木月さんの一言で、みんなの視線が桜へと移る。ライトアップされた桜を見ながら、「日本人で良かったよな~」なんて、みんなで口々に言いながら桜を見ていた。
しばらくして戻って来た森野さんも、普段は無表情だけどなにやら楽しそうにしている。
日が暮れるにつれ、運転担当の森野さんと山崎さん以外はアルコールが進んで来て凄い盛り上がっている。
私はアルコールを飲まず、みんなの酔っ払いぶりに唖然としていた。
店長に至っては、運転手の2人にもお酒を勧めようとするから、私と杉野チーフで阻止していた。
ただ…さすがに4月とは言え、夜になると冷え込んでくる。
私は上着を着ていたけど、下からの冷え込みにトイレに行きたくなった。
「すみません、ちょっとトイレに行ってきますね」
木月さんにこっそり告げて、私は山を登り切った所にあるお手洗いへと向かう。
公園のトイレだからと心配していたけれど、きちんと整備されていて、清潔でホッとする。お手洗いから出ると、女の子の泣き声が聞こえて来た。私がキョロキョロと辺りを見回すと、どうやら迷子になったらしい兄妹が、桜をライトアップしている照明の下に立っている。
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