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第二部(スピンオフ)【レオンくんのしっぽ】
15.※言うこと聞かないネコちゃんだから①
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◇
若い頃は思い出すのも恥ずかしい失敗もあったけど、この年にもなれば自分の酒量は把握している。
その上で言うけど、俺は完全に飲みすぎていた。
朦朧と目を開くと、薄暗い暖色の灯りの中に見覚えのない天井がある。時々それが揺れて、俺は自分がひどく酔っていると自覚した。
もうどうでもいいやと思うほどに、意識を強く後頭部の奥に引っ張られるような感覚を覚えながらも、俺はさっきまで抱いてやると息巻いていた天使の姿を探してその名を呼んだ。
「レオン……レオンくん? どこ?」
天井と俺の間にレオンが顔を覗かせる。
まともな語彙を失って、「超可愛い」と俺は多分口に出していた。
「慎さん、いるよ、だいじょぶ?」
「レオンくん、おいで、ギュッてしてあげるから、可愛いレオン」
ぐでぐでになりながら俺はレオンのシャツの裾を掴んで引き寄せた。
「慎さん、酔っ払うと呼び捨てなの? かわいっ」
そう言って俺の頬に口付けたレオンに、可愛いのはお前だと、俺は心の中でため息をついた。その言葉を口に出さなかったのは、引き寄せたレオンの髪からやたらといい匂いがして、吸い込んだ空気を逃したくないという変態めいた理由だ。
「んー、ここどこ? レオンくんち?」
「違うよ、慎さんがホテル行こって言ったでしょ?」
あー、つまりここはホテルか。
俺はうっすらと思い出した。
家まで我慢できないから、ホテル行こうと年甲斐もなく情熱的にレオンの手を引いたのは俺だ。
「ごめんね、慎さん。SM部屋っていうの、空いてなかった」
俺はレオンの言葉に吹き出すように笑った。
そう言えば、さっきなんかヤケクソでそんなことを口走った気がする。
『レオンくんは言うこと聞かないネコちゃんだから、俺がお仕置きしなきゃねっ』なんて、下手したら警察に捕まりそうな変態発言だ。
しかもそれ、けっこう本気だった。
綺麗な生き物を縛り上げてよがらせるなんてちょっと人には言えない加虐的な願望を、俺は酔いに任せてレオンに曝け出したということだ。
だけど、それよりなによりレオンに嫌われたくない俺は、ほとんど回らない頭で必死に取り繕う言葉を探した。
「レオン、おいで、俺が気持ちよくしてあげるから」
そう言いながらレオンの首に腕を回して必死に体を起こそうとしたけど、ぐるぐると視界が回って結局俺はまたベッドに沈んだ。
レオンが衝撃を和らげようとしているのか、俺の背中に手を回して抱き留めてくれた。
「うん、慎さん、気持ちよくして? キスしていい?」
「可愛いなっ、おいで、いっぱいしよ」
俺はレオンの後頭部に手のひらを滑らせて、指の間に柔らかな髪を集めた。引き寄せると、ゆっくりとレオンの唇が重なって、その後で舌が入り込んでくる。その舌裏を舐めながら啄む様に唇で喰む。わざとらしく音を鳴らすと、それが鳩尾のあたりをむず痒く昂らせた。
俺はレオンの背中に回した手を徐々に腰のあたりに滑らせた。
レオンの手が、それを真似るように俺の腰の皮膚を撫でて、俺はびくりと体を震わせた。
そこで俺はやっと下半身の衣服が引き下ろされていて、ほうぼうが露出していると気が付いたのだ。それと同時に、レオンの指が俺の孔を撫でた。
「んっ……あっ」
ぐちゅりと音が鳴って、俺の孔は最も簡単にレオンの指を受け入れた。熱くて擦る様な感覚に、俺は狼狽えてレオンの衣服を握った。
「いっぱいしたから、だいぶ柔らかくなったよ? 挿入れていい?」
「あっ……ま、まって」
ゆらゆら揺れる視界の中、俺はかろうじて状況を理解した。
だけど、抵抗の術がない。なんてったって体が上手く動かないのだ。
なんとか手をついて体を反転させてうつ伏せたけど、レオンの下から這い出す前におさえつけられてしまった。
「慎さん、気持ちよくして?」
「うん、んっ……レオンくん、気持ちよくしてあげるっ……から、一回退いて」
レオンがうつ伏せた俺の尻のあたりに下半身を押し付けた。
湿った皮膚の温度が、レオンの昂りを感じさせる。
天使が俺で興奮してるなんて最高な気分だけど、この体勢は上手くない。
レオンは先端を俺の孔に押し付けながら、頸に唇を這わせている。頭の横で手のひらをおさえる様に重ねられて、背中全体にレオンの体温を感じていた。まるで包み込まれているみたいで、びっくりするくらい心地いい。
だけどぐりぐりと腰を揺らされて、試すみたいにレオンがじわじわ挿入れてくるので俺は焦った。身を捩り、左のレオンの手を振り解いて、後ろ手に腰のあたりを強く押した。
「ぅっんっ……レオンくん、挿入れて良いって言ってないよ」
俺の抵抗はまるで寝言みたいだった。
体は昂っているのに、頭の中が体温で溶けてしまいそうだ。
「んー、でも、慎さん、入っちゃいそう」
「ぁっ……それはっ……んっ押し付けるからっあっぁぁ…!」
先端の窪みが孔を掻き分けたあたりで皮膚が揺れて、その後滑る様に俺の孔がレオンを受け入れた。
隙間なく埋め込まれ、俺は息苦しさと押し付けられる様な鈍い感覚でシーツを握りしめた。
「入っちゃった」
そう言ってレオンはうつ伏せた俺の顔を覗き込み、浅く呼吸する口元に音を鳴らして口付けた。
酔っているのが幸いしているのか、痛みはない。だけど強い違和感と受け入れたことのない熱量に、俺は怖気付いて言葉を失いかけていた。
「んっ……ぅっ…」
「慎さん、中、あっつい」
「んっ、あっ……ダメっ、動かないで、あっ」
レオンは俺の脇に手をつくと、ゆっくりとしたストロークで腰を動かした。中のものが内壁を大きく撫でるたびに、俺の腰もつられて前後に動いている。
若い頃は思い出すのも恥ずかしい失敗もあったけど、この年にもなれば自分の酒量は把握している。
その上で言うけど、俺は完全に飲みすぎていた。
朦朧と目を開くと、薄暗い暖色の灯りの中に見覚えのない天井がある。時々それが揺れて、俺は自分がひどく酔っていると自覚した。
もうどうでもいいやと思うほどに、意識を強く後頭部の奥に引っ張られるような感覚を覚えながらも、俺はさっきまで抱いてやると息巻いていた天使の姿を探してその名を呼んだ。
「レオン……レオンくん? どこ?」
天井と俺の間にレオンが顔を覗かせる。
まともな語彙を失って、「超可愛い」と俺は多分口に出していた。
「慎さん、いるよ、だいじょぶ?」
「レオンくん、おいで、ギュッてしてあげるから、可愛いレオン」
ぐでぐでになりながら俺はレオンのシャツの裾を掴んで引き寄せた。
「慎さん、酔っ払うと呼び捨てなの? かわいっ」
そう言って俺の頬に口付けたレオンに、可愛いのはお前だと、俺は心の中でため息をついた。その言葉を口に出さなかったのは、引き寄せたレオンの髪からやたらといい匂いがして、吸い込んだ空気を逃したくないという変態めいた理由だ。
「んー、ここどこ? レオンくんち?」
「違うよ、慎さんがホテル行こって言ったでしょ?」
あー、つまりここはホテルか。
俺はうっすらと思い出した。
家まで我慢できないから、ホテル行こうと年甲斐もなく情熱的にレオンの手を引いたのは俺だ。
「ごめんね、慎さん。SM部屋っていうの、空いてなかった」
俺はレオンの言葉に吹き出すように笑った。
そう言えば、さっきなんかヤケクソでそんなことを口走った気がする。
『レオンくんは言うこと聞かないネコちゃんだから、俺がお仕置きしなきゃねっ』なんて、下手したら警察に捕まりそうな変態発言だ。
しかもそれ、けっこう本気だった。
綺麗な生き物を縛り上げてよがらせるなんてちょっと人には言えない加虐的な願望を、俺は酔いに任せてレオンに曝け出したということだ。
だけど、それよりなによりレオンに嫌われたくない俺は、ほとんど回らない頭で必死に取り繕う言葉を探した。
「レオン、おいで、俺が気持ちよくしてあげるから」
そう言いながらレオンの首に腕を回して必死に体を起こそうとしたけど、ぐるぐると視界が回って結局俺はまたベッドに沈んだ。
レオンが衝撃を和らげようとしているのか、俺の背中に手を回して抱き留めてくれた。
「うん、慎さん、気持ちよくして? キスしていい?」
「可愛いなっ、おいで、いっぱいしよ」
俺はレオンの後頭部に手のひらを滑らせて、指の間に柔らかな髪を集めた。引き寄せると、ゆっくりとレオンの唇が重なって、その後で舌が入り込んでくる。その舌裏を舐めながら啄む様に唇で喰む。わざとらしく音を鳴らすと、それが鳩尾のあたりをむず痒く昂らせた。
俺はレオンの背中に回した手を徐々に腰のあたりに滑らせた。
レオンの手が、それを真似るように俺の腰の皮膚を撫でて、俺はびくりと体を震わせた。
そこで俺はやっと下半身の衣服が引き下ろされていて、ほうぼうが露出していると気が付いたのだ。それと同時に、レオンの指が俺の孔を撫でた。
「んっ……あっ」
ぐちゅりと音が鳴って、俺の孔は最も簡単にレオンの指を受け入れた。熱くて擦る様な感覚に、俺は狼狽えてレオンの衣服を握った。
「いっぱいしたから、だいぶ柔らかくなったよ? 挿入れていい?」
「あっ……ま、まって」
ゆらゆら揺れる視界の中、俺はかろうじて状況を理解した。
だけど、抵抗の術がない。なんてったって体が上手く動かないのだ。
なんとか手をついて体を反転させてうつ伏せたけど、レオンの下から這い出す前におさえつけられてしまった。
「慎さん、気持ちよくして?」
「うん、んっ……レオンくん、気持ちよくしてあげるっ……から、一回退いて」
レオンがうつ伏せた俺の尻のあたりに下半身を押し付けた。
湿った皮膚の温度が、レオンの昂りを感じさせる。
天使が俺で興奮してるなんて最高な気分だけど、この体勢は上手くない。
レオンは先端を俺の孔に押し付けながら、頸に唇を這わせている。頭の横で手のひらをおさえる様に重ねられて、背中全体にレオンの体温を感じていた。まるで包み込まれているみたいで、びっくりするくらい心地いい。
だけどぐりぐりと腰を揺らされて、試すみたいにレオンがじわじわ挿入れてくるので俺は焦った。身を捩り、左のレオンの手を振り解いて、後ろ手に腰のあたりを強く押した。
「ぅっんっ……レオンくん、挿入れて良いって言ってないよ」
俺の抵抗はまるで寝言みたいだった。
体は昂っているのに、頭の中が体温で溶けてしまいそうだ。
「んー、でも、慎さん、入っちゃいそう」
「ぁっ……それはっ……んっ押し付けるからっあっぁぁ…!」
先端の窪みが孔を掻き分けたあたりで皮膚が揺れて、その後滑る様に俺の孔がレオンを受け入れた。
隙間なく埋め込まれ、俺は息苦しさと押し付けられる様な鈍い感覚でシーツを握りしめた。
「入っちゃった」
そう言ってレオンはうつ伏せた俺の顔を覗き込み、浅く呼吸する口元に音を鳴らして口付けた。
酔っているのが幸いしているのか、痛みはない。だけど強い違和感と受け入れたことのない熱量に、俺は怖気付いて言葉を失いかけていた。
「んっ……ぅっ…」
「慎さん、中、あっつい」
「んっ、あっ……ダメっ、動かないで、あっ」
レオンは俺の脇に手をつくと、ゆっくりとしたストロークで腰を動かした。中のものが内壁を大きく撫でるたびに、俺の腰もつられて前後に動いている。
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