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第二部 第三章 異界の客人神

新規登録

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 専用兵装はお互いの魔石情報を登録し合った者にしか正しく装着は出来ない。もし仮に魔石情報を登録していない者が装着したところで、百パーセントの力は発揮できない仕様となっている。

 それに加え、新規登録を行いたい場合は現登録者の魔石情報を削除しなければならないのだが……それは現登録者と同期して行わなければならない。現在登録されているのはノヒンやレイラの魔石情報ということになるため、実質登録情報の削除は不可能となっていた。

(いや……やり方はあるかもしんねぇ)
「なんだと?」
(俺は馬鹿だから説明が難しいけどよ、今の俺らの魔石はの魔石情報があんだよな? だからよ……)

 「そう……そうか!!」と、ヴァンガルムがアランの言葉を最後まで聞かずに叫ぶ。

「貴様の魔石情報と新たな装着者の魔石情報を登録すれば……」

 そう言ってヴァンガルムがマリルを見ると、マリルが自分の後ろを確認する。もちろんマリルの後ろには誰もいない。

「え……? 私……?」
「他に誰がおるのだ?」
「ええ!? 無理だよ無理!! 絶対無理!」
「やってみなければ分からんだろう? そもそもこの場には貴様しかおらん」
「えぇ……でも……」

 マリルが恥ずかしそうにモジモジする。

「何か問題があるのか?」
「……ヴァ、ヴァンちゃんの中にアランさんがいるんだよね……? そうなると……ヴァンちゃんを装着したらアランさんに抱かれてる……みたいにならない? 胸のサイズとか……お尻の形とかも知られちゃうし……ノヒンさん以外とそういうことはちょっと……」

 ヴァンガルムの表情が感情のないものへと変わる。愛玩モード時にマリルと色々とあったこともあり、ヴァンガルムはマリルに対して好意を抱いている。だがさすがに「何を言ってるんだこいつは」という思いが表情に出てしまっていた。

「ちっ……アランならば気にするな。主導権を持った側にしか感覚はないのでな。視覚や聴覚は共有しておるが、触覚などは共有されん」
「そ、それなら……でも……ゴツいのは嫌い……だよ? 出来れば可愛い服がいい……かな?」

 再びヴァンガルムが無表情になる。モジモジしているマリルはたまらなく可愛いが……

 ノヒンが言っていたように、マリルには危機感というものが足りない気がしてならない。

「鎧の形状であればそれなりに調整は出来る。レイラは動きやすさ重視で普段とほぼ変わらん形状を好んでおったな」
「へー! じゃあ可愛いの考えとく!」

 そう言って嬉しそうに考え込むマリルを見て、ヴァンガルムが大きめのため息をいた。

「……とりあえずはアランと協力して、魂喰いソウルイーターを使用した新しい力を構築する。少し待っておれ」

 そう言ってヴァンガルムが目を閉じ、集中する。


---


 ──数分後

「ふぅ……終わったぞマリ……」

 魂喰いソウルイーターを使用した新しい力を構築する作業を終え、ヴァンガルムが目を開ける。すると目の前では──

 マリルが服をはだけさせ、体を拭いていた。急にヴァンガルムに声をかけられたマリルが「ひあっ!」と声を上げ、恥ずかしそうにはだけた服を直す。

「何をしておったのだ?」
「こ、これからヴァンちゃんを着ることになるから……汗臭かったらやだなって……」
「本当に貴様は緊張感が足りないな。まあだが、だからこそノヒンは貴様を娘のように思っていたのだろうな」
「もう! 娘じゃないよ! いつか……いつかノヒンさんに……」

 「振り向いて貰うんだから」と言おうとして、マリルがぼろぼろと涙をこぼす。好きだった、愛していたノヒンはもういない。振り向いて貰うことなど二度と出来ない。

「ご、ごめんごめん! こんなんじゃダメだよね! 天国のノヒンさん安心させなきゃだね!」

 そう言ってマリルが自分の頬をぱんっと叩き、ヴァンガルムをしっかりと見据える。

「よし! じゃあヴァンちゃんの装着の仕方を教えて!」
「くく……いい目をしておるな。まずはアランの魔石情報と貴様の魔石情報を相互登録する。とりあえず我に触れろ」

 「うん!」と返事をしながら、マリルがヴァンガルムに触れる。

「ではいくぞ? 『アクセプト登録』」
 
 ヴァンガルムの目の前に、『/convertコンバート registerレジスター Arenアレン andアンド Mariluマリル』と白く輝く文字が現れ、ヴァンガルムとマリルを黒い霧が繋ぐ。

「……胸が……胸が熱いよヴァンちゃん……」
「我慢しろ。データの書き込みで多少なりとも熱が発生しておるだけで、すぐに終わる」

 ヴァンガルムの言葉通り、魔石の熱はすぐに収まった。

「うぅ……なんだか変な感じだったな。でもこれで終わり?」
「ああ。あとは我を装着するイメージでアクセプトと唱えればよい。貴様のイメージ通りとはいかんが、それなりに鎧の形状は変えられる」
「あれ? でも『アクセプト』って導術じゃないの?」
「それは少し違う。アクセプトとはという意味だ。導術の場合のアクセプトは、脳内イメージを自動変換することを承認するという意味合いの言葉だ。これは導術を使用出来る者が唱えることで起動する。それに対して専用兵装装着時のアクセプトは、専用兵装が装着者の脳内イメージを変換することを了承するための……と、聞いておるのかマリル?」

 途中からマリルがキョトンとした目でヴァンガルムを見つめていた。

「う、うん! なんとなく分かったよ!」
「ちっ……ノヒンを思い出してしまうではないか。まあよい。まずはアクセプトと唱えて我を装着しろ。厳密に言えばアレンということになるのだが……その辺りの話をしても無駄そうなのでな」
「ば、馬鹿にしないでよ! 私だってやる時はやるんだから!」

 そう言ってマリルが右手を天高く掲げた。このポーズは……
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