そして還るもの

ローダンセと次の夢

アップライトピアノ

　果南が作ってくれたカレーはとっておいしかった。いくつものカレールーをブレンドしているらしく、少しずつそれらを感じられる味付けになっていた。私もそこそこ料理はする方だけどこんなに美味しくカレーを作れるかと言われると自信は全くない。
　そのあと、一緒に歯磨きをして(歯磨きセットも既に用意されていた)、一緒にゲームを１時間半ほどやったあと、寝室に案内された。
「ここが私の寝室～！莉子も今日はここで一緒に寝るんだからね？」
「…うん」
　※  ※  ※
　その後、果南はお風呂を入りに行ってしまった。私はここで待っているように言われた。特にすることもなかったので、修正された部分の確認をすることにした。しばらくそうしていたもののリビングに移動して「ローダンセ」をピアノで演奏していた。修正してさらにいいものになったと思う。いい意味でいい化学反応を起こせていると思う。
　それにしても、どうして果南の家にはアップライトピアノがあるのだろう。本人は弾かないって言っていたけど…
しかもちゃんと背面に遮音材が貼ってあって、床にはちゃんと防振材と遮音材が敷いてある。あらかじめアップライトピアノを用意してくれていたということ？でも、アップライトピアノは中古でも数十万するのに…？
果南ってもしかしてかなり稼いでる？
　そんなことを頭の隅で考えつつ、自分で書いた歌詞を歌いながら演奏していると、いつの間にか背後に果南がいて私の鍵盤を弾く手を見ていた。私が果南に気づいたのは6回目の演奏が終わった後。かなりかかったことになる。
「いつのまにお風呂から帰ってきてたの？」
「う～ん、15分くらい？って、どうしてここにいるの～！寝室にいてって言ったじゃんか～」
「ごめんね、弾きたくなったから…」
「まあ、いいものが聞けたからいいけどさ。じゃあ、違うのも弾いてよ」
「いいよ。う～ん、えっと…」

　何を弾こうか少し考えた後交響曲第9番《新世界より》 第2楽章～家路(冒頭部分)と、3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調を続けて弾き始めた。