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Day‘s Eye 花嫁になったデイジー
過去の自分にこんにちは
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「嘘じゃない! 俺は魔法が使えるんだ!」
「じゃあなんで魔法省から声かかんないんだよ」
「夢見るのも大概にしろよ」
その言い争いはいつも薬を配達に行っている町の裏通りで行われていた。初等学校高学年くらいの少年たちが集まってなにかしていると思ったら、その中心にいた少年の周囲で元素たちがうごめく気配がした。
嫌な予感がする。
最初は魔術師に憧れた子どものホラ吹きかと思ったけど、もしかしたら少年の言っていることは本当のことかも……私が仲裁しようと間に割って入ろうとした時、それは起きてしまった。
バァーンと破裂音を放ち、その力の渦は少年から弾け飛んだ。──まずい、彼は魔力の暴走を起こしている。魔力持ちの子供は癇癪を起こして魔力を暴発させてしまうこともあるのだ。
暴走したそれは反動でこちらへと吹っ飛んできて、私の隣にいたテオにぶつかりそうになる。私はとっさにテオを抱き込んで庇った。力強い魔力の波動を背中に受けた私の視界はぐにゃんと歪む。あ、やばい死ぬかも。
「…デイジー!」
テオの悲鳴が聞こえたはずなのに、私が次に気づいたときには見慣れた村にひとり佇んでいた。目立った怪我もなく、先程までいた町から飛ばされた私ははじめ転送術のたぐいを受けたのかと思っていた。
だけど周りを眺めていると違和感に襲われた。何かが違うと。
【若い娘が連れさらわれる事件が多発しています】
村の中央にある掲示板にはそう書かれていた。この辺で何者かによる誘拐拉致が多発しているらしい。あの成金のガマガエルみたいなのが出没してるのか…と思って、掲示物を隅から隅まで読んでいると、とある部分で私の目は止まった。
その掲示物の発行日が10年前だったのだ。
……えっ?
「あの、この村に何か御用ですか?」
衝撃で頭が働かなくなっていた私はしばし掲示板前で固まっていた。そのため、背後から掛けられた声に私はぎくりとする。
まさか、そんな……。嫌な予感をひしひしと感じながら振り返った先にいたのは、黒髪に紫の瞳の幼い少女の姿。
──私は、過去の自分と出会ってしまったのである。
■□■
私はアステリアと名乗った。
村の人は突然現れた見知らぬ魔術師に不審な目を向けてきたが、仕方ないだろう。私だって新しくやってきた人にはそんな目を向けてしまうかもしれないし。田舎村ってのはそんなもんだ。
私はあえて姿を変えなかったが、過去の自分との共通点を見つけ出されそうな気がしたので、私を見ても印象に残らないように呪文を掛けておいた。ついでにニオイ消しの香水もつけている。
これは過去を変えない対策である。何がどうなって過去に飛んできてしまったかはわからないが、未来の私は完全なる異物である。そのうちもとに戻るであろう。
私は近くの町に滞在した。お金は持っていたのでしばらくは大丈夫だと思う。薬を作って売っても良かったけど、何かを変えてしまう恐れがありそうなのでそれはやめておいた。
「私が面白いと思ったのは…この本と、この本…」
村に突然現れた魔術師に興味が湧いたらしい過去の私は目をキラキラさせて私を慕ってきた。間違いなく過去の自分なんだが、なんか可愛いと思ってしまったのはここだけの話である。
「…あんた一体どんな目的であの子に近づいたんだ?」
町の図書館で面白い本を紹介したり、勉強を教えたりして過去の自分と交流する。こんな風に私が過去の私と交流することに不信感を抱くマック一家から遠回しに警戒していることを告げられた。家族からそんな事言われたら複雑なんだけど、幼い私の家族は私を守るのに必死だったからその心配は仕方ないなと苦笑いした。
「……私はこの子を傷つけたりしませんよ」
だって私だもん。
「この子は身内以外の大人に腫れ物扱いをされている。だから私に構われて嬉しいんだと思います」
私がそう言うと、若かりし養両親がぐっと口ごもった。
寂しくて居心地の悪かった私の幼少期。今思えば村の大人たちも獣人迫害の歴史のこともあり、複雑ながら人間である私を受け入れようと少しずつ努力してくれていたのだろうなってわかるけど、子どもの私には伝わってなかった。
腫れ物を触るような、恐る恐るといった感じで接されることが多かったんだよね。子どもである私はそれを敏感に受け取って、私もなるべく相手の気分を害さぬよう目立たないように過ごすようにしていた。
色々あって現在では村の一員として受け入れてもらっているけど、それまでは異物のままだった。でもそれは仕方ないと今の私は理解しているのだ。
丘の上の樹の下で、私は世界地図を広げた。
外に興味を持つ過去の私に、今まで見てきた世界の話をしてあげると彼女は瞳を輝かせてもっともっととせがむのだ。
「ビルケンシュトックでは公害病が多発してて…原因の多くは水銀と言われてるの。その水銀は化粧品にも使われてて、それを使用した母親から子に伝わって、中毒を起こすってことも明らかになってるんだ」
確かこの時期ようやく情報が表に出てきたんだよね。町の図書館の新聞にも載り始めて、それが社会問題になったんだ。
それでようやく水銀を使用した化粧品などの販売禁止、工場近辺の農作物、魚の流通禁止になったんだよなぁ…
「水銀、知ってる。図書館の本に載ってた。神経毒があるんだよね」
「そう、治療法はあるんだけど、その薬は高価な上に作れる人が少ないから、治療を受けられず寝たきりになる人が多いんだ」
還らずの森に行かなくてはその毒草はみつからない。市場にもあまり流通してないのだ。そもそも材料が手に入りにくいのである。
「シュバルツは色んな所に出向いたかな。それとハルベリオンも。だけどグラナーダは行ったことないんだよね。知り合いはいるけど」
「えっハルベリオンに行ったの? すごい!」
村と近くの町が行動範囲である少女には眩しすぎる話なのだろう。無邪気な幼い自分の反応に私は苦笑いしてしまう。
「まぁ、ハルベリオンにはあんまりいい思い出はないけど…」
ハルベリオンの記憶は、今でも悪夢で見るくらい嫌な思い出だ。
危機に偶然居合わせたキッカが助けてくれた瞬間だけは、いい思い出になるのかもしれないけど…
「…ひどい国だったな。荒廃して、飢えや負の感情で溢れていた」
今はハルベリオンの王や幹部がいなくなったことで改革がされてるけど、ハルベリオンは元々人が住める場所ではない。
そしてハルベリオンの常識で生きてきた人間を難民として迎え入れるのも、犯罪の多発を懸念されて扱いに困ってるとか。罪人の入れ墨がなく、大きな犯罪をしてないもので希望者のみ保証人を立てて受け入れてるそうだ。もちろんしばらく監視がつけられる。
キッカのように、異国人のお母さんの本国の血縁者が保証人になって呼びもどしてくれるってケースは運がいい方なのだという。それに……傷つけられた人は未だに苦しんでいる。私は助けられなかった人たちを思い出して暗い表情を浮かべてしまった。
「アステリアさん…?」
「そうだ、還らずの森の奥にある活火山そばには沢山の魔獣がいるんだけど……」
幼い私が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。我に返った私は表情を取り繕って地図を見下ろした。話を変えるために別の話題を持っていくと、彼女は瞳を輝かせた。我ながら、幼い私は吸収するスピードが早い。そして恐るべき質問魔である。好奇心に満ちた瞳を見ながら、私は懐かしくなった。
何故過去に飛んでしまったのか。もしかしてこれはただの夢なのか。それはわからない。
ただ過去の自分を放っておけなくて、私は答えられることであれば何でも答えた。自分なのにまるで妹ができたような気持ちになれた。
夕暮れ時になったので、幼い自分を家まで送り届けて町の宿に戻ろうとしたら、目の前を小さな影が通せんぼした。
夕焼け色に染まった白銀色。なつかしい、いじめっ子の姿である。彼は耳と尻尾を警戒したようにピンと立てると、私を疑惑に満ちた目で睨みつけてきた。
「おいお前、あいつに近づいてどういうつもりだ」
「…それは年上の人に対する口の聞き方じゃないね。とりあえずお前って呼び方やめようか」
ちっちゃいテオの生意気加減にちょっとイラッとしつつ、今はこっちが倍近く年上なのでぐっと堪えてやる。
「あいつに何を吹き込んでる、今日なんか外の話なんかして…なにか目的でもあるのか!」
「……私がデイジーに外の話をすることと、君になにか関係あるかな?」
幼い私に意地悪を言ういじめっ子。大人になってからそれがようやく好きな子に振り向いてほしい、構ってほしいという理由からくる行動だって理解したけど、された方はそうは思わないんだぞ。
私が無表情になって聞き返すと、幼いテオは歯を食いしばってこちらを睨みつけた。
「あいつは! この村の人間なんだぞ! …何もわかってないあいつを誘惑すんな!」
その言葉に私は目を細める。
「……いつもよそ者、ってバカにするのに、自分の発言が矛盾しているとは思わないの?」
私の指摘に幼いテオはぎくりとして、何故それを知っていると言わんばかりの表情を浮かべていた。
いくら子どもでも、言っていいことと悪いことがある。それを指摘してやるのは大人のつとめだ思う。
「このままじゃ、デイジーはこの村を出ていく。だって居場所がないんだもの」
旦那の子ども時代だとはわかっているけど、ちょっと見逃せないな。
「デイジーが何を言われても傷つかないと思ったら大間違いだからね?」
私がにっこり笑ってあげると、幼いテオは何故か耳をぺたんと倒してしっぽをくるんと丸めて怯えた表情を浮かべていたので、私は溜飲を下げたのである。
子どもだからって私は手加減しないぞ。子ども好きのカンナじゃあるまいし。生意気な子には生意気をお返ししてやる。
「じゃあなんで魔法省から声かかんないんだよ」
「夢見るのも大概にしろよ」
その言い争いはいつも薬を配達に行っている町の裏通りで行われていた。初等学校高学年くらいの少年たちが集まってなにかしていると思ったら、その中心にいた少年の周囲で元素たちがうごめく気配がした。
嫌な予感がする。
最初は魔術師に憧れた子どものホラ吹きかと思ったけど、もしかしたら少年の言っていることは本当のことかも……私が仲裁しようと間に割って入ろうとした時、それは起きてしまった。
バァーンと破裂音を放ち、その力の渦は少年から弾け飛んだ。──まずい、彼は魔力の暴走を起こしている。魔力持ちの子供は癇癪を起こして魔力を暴発させてしまうこともあるのだ。
暴走したそれは反動でこちらへと吹っ飛んできて、私の隣にいたテオにぶつかりそうになる。私はとっさにテオを抱き込んで庇った。力強い魔力の波動を背中に受けた私の視界はぐにゃんと歪む。あ、やばい死ぬかも。
「…デイジー!」
テオの悲鳴が聞こえたはずなのに、私が次に気づいたときには見慣れた村にひとり佇んでいた。目立った怪我もなく、先程までいた町から飛ばされた私ははじめ転送術のたぐいを受けたのかと思っていた。
だけど周りを眺めていると違和感に襲われた。何かが違うと。
【若い娘が連れさらわれる事件が多発しています】
村の中央にある掲示板にはそう書かれていた。この辺で何者かによる誘拐拉致が多発しているらしい。あの成金のガマガエルみたいなのが出没してるのか…と思って、掲示物を隅から隅まで読んでいると、とある部分で私の目は止まった。
その掲示物の発行日が10年前だったのだ。
……えっ?
「あの、この村に何か御用ですか?」
衝撃で頭が働かなくなっていた私はしばし掲示板前で固まっていた。そのため、背後から掛けられた声に私はぎくりとする。
まさか、そんな……。嫌な予感をひしひしと感じながら振り返った先にいたのは、黒髪に紫の瞳の幼い少女の姿。
──私は、過去の自分と出会ってしまったのである。
■□■
私はアステリアと名乗った。
村の人は突然現れた見知らぬ魔術師に不審な目を向けてきたが、仕方ないだろう。私だって新しくやってきた人にはそんな目を向けてしまうかもしれないし。田舎村ってのはそんなもんだ。
私はあえて姿を変えなかったが、過去の自分との共通点を見つけ出されそうな気がしたので、私を見ても印象に残らないように呪文を掛けておいた。ついでにニオイ消しの香水もつけている。
これは過去を変えない対策である。何がどうなって過去に飛んできてしまったかはわからないが、未来の私は完全なる異物である。そのうちもとに戻るであろう。
私は近くの町に滞在した。お金は持っていたのでしばらくは大丈夫だと思う。薬を作って売っても良かったけど、何かを変えてしまう恐れがありそうなのでそれはやめておいた。
「私が面白いと思ったのは…この本と、この本…」
村に突然現れた魔術師に興味が湧いたらしい過去の私は目をキラキラさせて私を慕ってきた。間違いなく過去の自分なんだが、なんか可愛いと思ってしまったのはここだけの話である。
「…あんた一体どんな目的であの子に近づいたんだ?」
町の図書館で面白い本を紹介したり、勉強を教えたりして過去の自分と交流する。こんな風に私が過去の私と交流することに不信感を抱くマック一家から遠回しに警戒していることを告げられた。家族からそんな事言われたら複雑なんだけど、幼い私の家族は私を守るのに必死だったからその心配は仕方ないなと苦笑いした。
「……私はこの子を傷つけたりしませんよ」
だって私だもん。
「この子は身内以外の大人に腫れ物扱いをされている。だから私に構われて嬉しいんだと思います」
私がそう言うと、若かりし養両親がぐっと口ごもった。
寂しくて居心地の悪かった私の幼少期。今思えば村の大人たちも獣人迫害の歴史のこともあり、複雑ながら人間である私を受け入れようと少しずつ努力してくれていたのだろうなってわかるけど、子どもの私には伝わってなかった。
腫れ物を触るような、恐る恐るといった感じで接されることが多かったんだよね。子どもである私はそれを敏感に受け取って、私もなるべく相手の気分を害さぬよう目立たないように過ごすようにしていた。
色々あって現在では村の一員として受け入れてもらっているけど、それまでは異物のままだった。でもそれは仕方ないと今の私は理解しているのだ。
丘の上の樹の下で、私は世界地図を広げた。
外に興味を持つ過去の私に、今まで見てきた世界の話をしてあげると彼女は瞳を輝かせてもっともっととせがむのだ。
「ビルケンシュトックでは公害病が多発してて…原因の多くは水銀と言われてるの。その水銀は化粧品にも使われてて、それを使用した母親から子に伝わって、中毒を起こすってことも明らかになってるんだ」
確かこの時期ようやく情報が表に出てきたんだよね。町の図書館の新聞にも載り始めて、それが社会問題になったんだ。
それでようやく水銀を使用した化粧品などの販売禁止、工場近辺の農作物、魚の流通禁止になったんだよなぁ…
「水銀、知ってる。図書館の本に載ってた。神経毒があるんだよね」
「そう、治療法はあるんだけど、その薬は高価な上に作れる人が少ないから、治療を受けられず寝たきりになる人が多いんだ」
還らずの森に行かなくてはその毒草はみつからない。市場にもあまり流通してないのだ。そもそも材料が手に入りにくいのである。
「シュバルツは色んな所に出向いたかな。それとハルベリオンも。だけどグラナーダは行ったことないんだよね。知り合いはいるけど」
「えっハルベリオンに行ったの? すごい!」
村と近くの町が行動範囲である少女には眩しすぎる話なのだろう。無邪気な幼い自分の反応に私は苦笑いしてしまう。
「まぁ、ハルベリオンにはあんまりいい思い出はないけど…」
ハルベリオンの記憶は、今でも悪夢で見るくらい嫌な思い出だ。
危機に偶然居合わせたキッカが助けてくれた瞬間だけは、いい思い出になるのかもしれないけど…
「…ひどい国だったな。荒廃して、飢えや負の感情で溢れていた」
今はハルベリオンの王や幹部がいなくなったことで改革がされてるけど、ハルベリオンは元々人が住める場所ではない。
そしてハルベリオンの常識で生きてきた人間を難民として迎え入れるのも、犯罪の多発を懸念されて扱いに困ってるとか。罪人の入れ墨がなく、大きな犯罪をしてないもので希望者のみ保証人を立てて受け入れてるそうだ。もちろんしばらく監視がつけられる。
キッカのように、異国人のお母さんの本国の血縁者が保証人になって呼びもどしてくれるってケースは運がいい方なのだという。それに……傷つけられた人は未だに苦しんでいる。私は助けられなかった人たちを思い出して暗い表情を浮かべてしまった。
「アステリアさん…?」
「そうだ、還らずの森の奥にある活火山そばには沢山の魔獣がいるんだけど……」
幼い私が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。我に返った私は表情を取り繕って地図を見下ろした。話を変えるために別の話題を持っていくと、彼女は瞳を輝かせた。我ながら、幼い私は吸収するスピードが早い。そして恐るべき質問魔である。好奇心に満ちた瞳を見ながら、私は懐かしくなった。
何故過去に飛んでしまったのか。もしかしてこれはただの夢なのか。それはわからない。
ただ過去の自分を放っておけなくて、私は答えられることであれば何でも答えた。自分なのにまるで妹ができたような気持ちになれた。
夕暮れ時になったので、幼い自分を家まで送り届けて町の宿に戻ろうとしたら、目の前を小さな影が通せんぼした。
夕焼け色に染まった白銀色。なつかしい、いじめっ子の姿である。彼は耳と尻尾を警戒したようにピンと立てると、私を疑惑に満ちた目で睨みつけてきた。
「おいお前、あいつに近づいてどういうつもりだ」
「…それは年上の人に対する口の聞き方じゃないね。とりあえずお前って呼び方やめようか」
ちっちゃいテオの生意気加減にちょっとイラッとしつつ、今はこっちが倍近く年上なのでぐっと堪えてやる。
「あいつに何を吹き込んでる、今日なんか外の話なんかして…なにか目的でもあるのか!」
「……私がデイジーに外の話をすることと、君になにか関係あるかな?」
幼い私に意地悪を言ういじめっ子。大人になってからそれがようやく好きな子に振り向いてほしい、構ってほしいという理由からくる行動だって理解したけど、された方はそうは思わないんだぞ。
私が無表情になって聞き返すと、幼いテオは歯を食いしばってこちらを睨みつけた。
「あいつは! この村の人間なんだぞ! …何もわかってないあいつを誘惑すんな!」
その言葉に私は目を細める。
「……いつもよそ者、ってバカにするのに、自分の発言が矛盾しているとは思わないの?」
私の指摘に幼いテオはぎくりとして、何故それを知っていると言わんばかりの表情を浮かべていた。
いくら子どもでも、言っていいことと悪いことがある。それを指摘してやるのは大人のつとめだ思う。
「このままじゃ、デイジーはこの村を出ていく。だって居場所がないんだもの」
旦那の子ども時代だとはわかっているけど、ちょっと見逃せないな。
「デイジーが何を言われても傷つかないと思ったら大間違いだからね?」
私がにっこり笑ってあげると、幼いテオは何故か耳をぺたんと倒してしっぽをくるんと丸めて怯えた表情を浮かべていたので、私は溜飲を下げたのである。
子どもだからって私は手加減しないぞ。子ども好きのカンナじゃあるまいし。生意気な子には生意気をお返ししてやる。
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