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Day‘s Eye デイジーの花が開くとき
求婚
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うちの村では毎年秋になると収穫祭が行われる。村中の老若男女が集まって収穫を祝うのだ。その日は村の農作物で作ったごちそうを囲んで、みんなで飲み食い歌い騒ぐ日である。
村の人が集まるだけの祭りなのだが、今年はなぜかフォルクヴァルツ一家が沢山のお土産を掲げてやって来た。
「うちの特産品ですのよ。ぜひお祭りのテーブルに並べてくださいな」
そう言って大盤振る舞いする母上。村の人が遠慮しないように、海産物の干物に加工肉、野菜、果物に穀物など庶民向けのものを選んできたみたいだ。
ずらーっと運び込まれたそれらに村の大人たちは驚いていたけど、厚意だからと素直に受け取って彼らの来訪をあたたかくお迎えしていた。
この国では土が合わずに育たない種類の甘い果物を目にした子どもが目を輝かせて指を咥えているのを見かねた母上が、特別だと言ってこっそり分け与えていた。子どもたちの喜ぶ顔を見た彼女は優しく微笑んでいて、月並みな言葉で聖母みたいだった。
母上は私にも切り分けたものを差し出してきたが、私はもう成人間近なので甘やかされるのは恥ずかしい。だけどそこで変に遠慮すると彼女はしょげた顔をするので、お礼を言って受け取った。
果肉を噛み潰すとじゅわりと果汁が口の中いっぱいに広がった。これはフォルクヴァルツ特産の果物で、独特な食感と他では味わえない甘酸っぱさがある。
「おいしいです」
飾らない感想ではあるが、素直に美味しい。そう言うと彼女は嬉しそうに笑う。お母さんが私に見せる笑顔と同じ優しい笑顔。
母上は私の子ども時代を見ていないせいか、こういう交流に飢えている感じはある。なんか無駄に子ども扱いされている感じがするが、彼女の世話焼きを強く拒否できないのはそういう事情があるからだったりする。
彼らが村にやって来たのは何も収穫祭にお邪魔するためだけではない。それはわかっていた。彼らがマック家の両親とテオとタルコット夫妻を呼び出して話し合いをしていたのを私は知っているから。
私は同席を許可されなかったので、何を話したのかはわからない。彼らからしたらテオは異種族の平民身分の村人。私にとってはいい人でも、フォルクヴァルツ一家がどう思うかはまた別の話。私は待っている間ソワソワしっぱなしだった。
彼らとの話合いが終わった後のテオは緊張が持続していたが、落ち込んだ様子はなかったので多分大丈夫だったのだろう。
彼らは認めてくれるとは思っていたけど、当初のことを考えるとものすごい変化である。
再会当初は私に貴族としての生き方を押し付けようとしていたフォルクヴァルツ一家だが、一緒に生活をしてもお互いの距離はなかなか埋まらなかった。きっとハルベリオンの来襲をきっかけに色々考えが変わったんだろう。
過去に囚われて時が止まっていた彼らの中で時間が動きはじめた。私も、自分の生まれのルーツを知り、その中で色々学び、色んな事に巻き込まれ、いろんな変化が起きた……そして今に至る。
数奇な運命の絡まった糸が解け、色んな人の力が加わった結果それがより強固なものに変わった。そんな気がしている。
多分テオがとんでもないろくでなしなら彼らも、私の気持ちを無視して断固反対したであろう。だけどそうじゃない。
彼らは私の意志を尊重して認めてくれた。
私がテオの手を掴むと、そっと握り返して彼はへにゃっと笑った。肩に無駄な力が入っていたのだろう。ゆっくりと肩の力を抜くとはぁーとため息を吐き出す。テオは私に抱きついて甘えてきた。
これで、本来身分違いだったはずの私達の結婚が3つの家で認められたということだ。私はフォルクヴァルツの姓を捨てて、テオと同じ名字になる。彼の奥さんになるのだ。
いじめっ子なくせに私を命がけで守る幼馴染だったテオと一緒になる。
結婚に夢を持っていなかった私にどんな心境の変化が起きたのだろう。
彼との未来を思い描くと、たくさんの子ども達に囲まれて、そのお世話にテオが目を回している姿が思い浮かぶのだ。
■□■
村の祭りは夕方からの開催だ。村の広場の中央はダンスができるように大きく開かれ、その周りにはたくさんの長テーブルが配置されている。その上には収穫物で作った料理、お土産として持ち込まれたものが並んでいた。
兄上が高級ワインを持ち込んでいたらしく、ワインの味にうるさい村の人達がグラスを持って貰いに行っている姿があった。ワインも元は収穫物だもんね…何も言わないよ。
すっかり日が落ちて辺りが真っ暗になった頃になると、収穫祭は盛り上がりを見せた。広場の中央ではいろんな年代が入り乱れでダンスをしている。みんな作法なんか無視して自由に踊っている。気取ったワルツなんて誰も踊ってない。
音楽ですらアレンジを加えてもうめちゃくちゃである。だけど皆楽しそうに笑っていた。誰も憂うことのない、幸せそうな光景だ。
──私はそれを見ているだけで幸せな気分になれた。
「ん」
テオが私に向かって手を差し出してきた。ダンスのお誘いであろう。
そういえば私はテオと踊ったことがない。…テオが踊っている姿を見たこともないのだが、踊れるのだろうか。
貴族令嬢教育で習った作法に則ってお辞儀をすると彼の手を取った。腕が回され、リードするようにステップを踏み始める。
「意外。…ワルツ、踊れるんだ?」
「婚活祭りのときにお前が踊ってるの見て覚えた」
「…見てたんだ」
「ていうかお前がひときわ目立ってた」
カンナと踊ったときだろうか。それとも兄上? テオにリードされるまま踊っているとぐるんぐるんと二回転ターンを決められた。そんなところまで真似せずとも。
テオはもともと運動神経いいし、動体視力が優れているのだろうが、こうもあっさり踊ってしまったら私がつまらない。
足運びも完璧、リードも上手。…これはダンスの先生なんていらないな、テオのくせに生意気である。
「デイジー、お前に話がある」
「踊りながら言うことなの?」
私の質問に答えず、テオはさっと地面に片膝をついた。
私が目を丸くして固まっていると、ダンスのために流れていた音楽が途切れた。それを合図に周りで踊っていた人たちがさぁーっと引けていた。
「!?」
私は何事かと辺りを見渡した。
皆こちらをじっと見つめていて異様だ。私が慌てているのもお構いなしに、テオは私の手を取って、縋るように恭しく唇を落とした。
そして熱く濡れた瞳で私を射抜くと、大声で叫んだのだ。
「はじめて顔を合わせた時からお前のことが好きだった!」
突然の告白に私は目を丸くして固まった。
えっ、それ今言うこと? ダンス中断して言うことなの? そう問いかけたかったが、テオの真剣さに口を挟めなかった。何を言われるか、理解できたからだ。
次飛び込んでくるであろう言葉を待ち構えていた。
「お前のそばにいると俺は幸せなんだ。その紫の瞳にずっと俺を映して欲しい。一生大事にする。きっとお前を幸せにする。俺の嫁さんになってくれ!」
正式に求婚されるだろうなとは思っていたけど、まさか村中の住民や家族に見守られながらの求婚とは思わず、私は息を止めていた。
熱烈な求婚はいいけど……なんというか……ため息が漏れ出すのは仕方ないと思う。私の口からため息が漏れると、テオの瞳が不安に揺れた。
「…あんたって急に気障なことするよね」
両親たちからの求婚許可を頂いたから、村中の人が集まるこの場で求婚すると決めたんだろう。お披露目にもなるし、テオとしては牽制のつもりなんだろうけど……
私は身をかがめて、膝をついているテオのおでこにキスを落とした。ゆっくり離れると、テオはぽかんと間抜けな顔を晒している。
それがおかしくて、同時に照れくさくて、私はハニカミ笑いを浮かべた。
あんた以外に、誰が私を幸せにしてくれるっていうのよ。
「約束だよ、一生大事にしてね」
こういう時は可愛く喜んだり、泣いたりするのが普通なんだろうけど、あいにく私には生意気なことしか言えない。
だけどテオにはもう分かるだろう。照れ隠しで言ってるってことくらい。
「約束する! 絶対に絶対に大事にする!」
素早く立ち上がったテオは私を掻き抱いて、唇を奪ってきた。…全く人前なのに恥ずかしい奴だな…。
わぁっと周りで囃し立てる声と拍手の音が聞こえてくる。
「めでたい! テオの求婚成功を祝って祝い酒だ!」
そう声を上げたのはリック兄さんである。テオに対して結構厳しめな態度をとっていたが、彼が一番にお祝いを投げかけてきた。それは嬉しいのだが、兄さんが手に持っているのは高級ワイン……また酒に飲まれなきゃいいけど…
「おめでとう」
「ようやくだな!」
「どうなることかと思っていたけど、報われたわね!」
色んな人にお祝いの言葉を投げかけられ、いつになく注目されて私は落ち着かなかったが、テオは誇らしそうに笑っていた。私を絶対に手放さないぞと言わんばかりにぴったりくっついている。
「それで? 挙式はいつだね?」
さり気なく私達の応援をしてくれていた村の最年長の婆様の言葉に私ははっとする。そうだ。お披露目として式をあげるんだったな……その辺何も考えてなかった。
「まずは新居建てねぇと。出来上がってからの話だな」
テオのその言葉に現実味が帯びてきた。獣人社会では求婚した男側が家を建ててお嫁さんを迎える風習だ。その後結婚して名実ともに夫婦となる。
私はとうとうテオと結婚するんだなと面映い気持ちでいっぱいだった。表には出さないが、自分の心がはしゃいでぴょんぴょんしているのがわかった。
村の人が集まるだけの祭りなのだが、今年はなぜかフォルクヴァルツ一家が沢山のお土産を掲げてやって来た。
「うちの特産品ですのよ。ぜひお祭りのテーブルに並べてくださいな」
そう言って大盤振る舞いする母上。村の人が遠慮しないように、海産物の干物に加工肉、野菜、果物に穀物など庶民向けのものを選んできたみたいだ。
ずらーっと運び込まれたそれらに村の大人たちは驚いていたけど、厚意だからと素直に受け取って彼らの来訪をあたたかくお迎えしていた。
この国では土が合わずに育たない種類の甘い果物を目にした子どもが目を輝かせて指を咥えているのを見かねた母上が、特別だと言ってこっそり分け与えていた。子どもたちの喜ぶ顔を見た彼女は優しく微笑んでいて、月並みな言葉で聖母みたいだった。
母上は私にも切り分けたものを差し出してきたが、私はもう成人間近なので甘やかされるのは恥ずかしい。だけどそこで変に遠慮すると彼女はしょげた顔をするので、お礼を言って受け取った。
果肉を噛み潰すとじゅわりと果汁が口の中いっぱいに広がった。これはフォルクヴァルツ特産の果物で、独特な食感と他では味わえない甘酸っぱさがある。
「おいしいです」
飾らない感想ではあるが、素直に美味しい。そう言うと彼女は嬉しそうに笑う。お母さんが私に見せる笑顔と同じ優しい笑顔。
母上は私の子ども時代を見ていないせいか、こういう交流に飢えている感じはある。なんか無駄に子ども扱いされている感じがするが、彼女の世話焼きを強く拒否できないのはそういう事情があるからだったりする。
彼らが村にやって来たのは何も収穫祭にお邪魔するためだけではない。それはわかっていた。彼らがマック家の両親とテオとタルコット夫妻を呼び出して話し合いをしていたのを私は知っているから。
私は同席を許可されなかったので、何を話したのかはわからない。彼らからしたらテオは異種族の平民身分の村人。私にとってはいい人でも、フォルクヴァルツ一家がどう思うかはまた別の話。私は待っている間ソワソワしっぱなしだった。
彼らとの話合いが終わった後のテオは緊張が持続していたが、落ち込んだ様子はなかったので多分大丈夫だったのだろう。
彼らは認めてくれるとは思っていたけど、当初のことを考えるとものすごい変化である。
再会当初は私に貴族としての生き方を押し付けようとしていたフォルクヴァルツ一家だが、一緒に生活をしてもお互いの距離はなかなか埋まらなかった。きっとハルベリオンの来襲をきっかけに色々考えが変わったんだろう。
過去に囚われて時が止まっていた彼らの中で時間が動きはじめた。私も、自分の生まれのルーツを知り、その中で色々学び、色んな事に巻き込まれ、いろんな変化が起きた……そして今に至る。
数奇な運命の絡まった糸が解け、色んな人の力が加わった結果それがより強固なものに変わった。そんな気がしている。
多分テオがとんでもないろくでなしなら彼らも、私の気持ちを無視して断固反対したであろう。だけどそうじゃない。
彼らは私の意志を尊重して認めてくれた。
私がテオの手を掴むと、そっと握り返して彼はへにゃっと笑った。肩に無駄な力が入っていたのだろう。ゆっくりと肩の力を抜くとはぁーとため息を吐き出す。テオは私に抱きついて甘えてきた。
これで、本来身分違いだったはずの私達の結婚が3つの家で認められたということだ。私はフォルクヴァルツの姓を捨てて、テオと同じ名字になる。彼の奥さんになるのだ。
いじめっ子なくせに私を命がけで守る幼馴染だったテオと一緒になる。
結婚に夢を持っていなかった私にどんな心境の変化が起きたのだろう。
彼との未来を思い描くと、たくさんの子ども達に囲まれて、そのお世話にテオが目を回している姿が思い浮かぶのだ。
■□■
村の祭りは夕方からの開催だ。村の広場の中央はダンスができるように大きく開かれ、その周りにはたくさんの長テーブルが配置されている。その上には収穫物で作った料理、お土産として持ち込まれたものが並んでいた。
兄上が高級ワインを持ち込んでいたらしく、ワインの味にうるさい村の人達がグラスを持って貰いに行っている姿があった。ワインも元は収穫物だもんね…何も言わないよ。
すっかり日が落ちて辺りが真っ暗になった頃になると、収穫祭は盛り上がりを見せた。広場の中央ではいろんな年代が入り乱れでダンスをしている。みんな作法なんか無視して自由に踊っている。気取ったワルツなんて誰も踊ってない。
音楽ですらアレンジを加えてもうめちゃくちゃである。だけど皆楽しそうに笑っていた。誰も憂うことのない、幸せそうな光景だ。
──私はそれを見ているだけで幸せな気分になれた。
「ん」
テオが私に向かって手を差し出してきた。ダンスのお誘いであろう。
そういえば私はテオと踊ったことがない。…テオが踊っている姿を見たこともないのだが、踊れるのだろうか。
貴族令嬢教育で習った作法に則ってお辞儀をすると彼の手を取った。腕が回され、リードするようにステップを踏み始める。
「意外。…ワルツ、踊れるんだ?」
「婚活祭りのときにお前が踊ってるの見て覚えた」
「…見てたんだ」
「ていうかお前がひときわ目立ってた」
カンナと踊ったときだろうか。それとも兄上? テオにリードされるまま踊っているとぐるんぐるんと二回転ターンを決められた。そんなところまで真似せずとも。
テオはもともと運動神経いいし、動体視力が優れているのだろうが、こうもあっさり踊ってしまったら私がつまらない。
足運びも完璧、リードも上手。…これはダンスの先生なんていらないな、テオのくせに生意気である。
「デイジー、お前に話がある」
「踊りながら言うことなの?」
私の質問に答えず、テオはさっと地面に片膝をついた。
私が目を丸くして固まっていると、ダンスのために流れていた音楽が途切れた。それを合図に周りで踊っていた人たちがさぁーっと引けていた。
「!?」
私は何事かと辺りを見渡した。
皆こちらをじっと見つめていて異様だ。私が慌てているのもお構いなしに、テオは私の手を取って、縋るように恭しく唇を落とした。
そして熱く濡れた瞳で私を射抜くと、大声で叫んだのだ。
「はじめて顔を合わせた時からお前のことが好きだった!」
突然の告白に私は目を丸くして固まった。
えっ、それ今言うこと? ダンス中断して言うことなの? そう問いかけたかったが、テオの真剣さに口を挟めなかった。何を言われるか、理解できたからだ。
次飛び込んでくるであろう言葉を待ち構えていた。
「お前のそばにいると俺は幸せなんだ。その紫の瞳にずっと俺を映して欲しい。一生大事にする。きっとお前を幸せにする。俺の嫁さんになってくれ!」
正式に求婚されるだろうなとは思っていたけど、まさか村中の住民や家族に見守られながらの求婚とは思わず、私は息を止めていた。
熱烈な求婚はいいけど……なんというか……ため息が漏れ出すのは仕方ないと思う。私の口からため息が漏れると、テオの瞳が不安に揺れた。
「…あんたって急に気障なことするよね」
両親たちからの求婚許可を頂いたから、村中の人が集まるこの場で求婚すると決めたんだろう。お披露目にもなるし、テオとしては牽制のつもりなんだろうけど……
私は身をかがめて、膝をついているテオのおでこにキスを落とした。ゆっくり離れると、テオはぽかんと間抜けな顔を晒している。
それがおかしくて、同時に照れくさくて、私はハニカミ笑いを浮かべた。
あんた以外に、誰が私を幸せにしてくれるっていうのよ。
「約束だよ、一生大事にしてね」
こういう時は可愛く喜んだり、泣いたりするのが普通なんだろうけど、あいにく私には生意気なことしか言えない。
だけどテオにはもう分かるだろう。照れ隠しで言ってるってことくらい。
「約束する! 絶対に絶対に大事にする!」
素早く立ち上がったテオは私を掻き抱いて、唇を奪ってきた。…全く人前なのに恥ずかしい奴だな…。
わぁっと周りで囃し立てる声と拍手の音が聞こえてくる。
「めでたい! テオの求婚成功を祝って祝い酒だ!」
そう声を上げたのはリック兄さんである。テオに対して結構厳しめな態度をとっていたが、彼が一番にお祝いを投げかけてきた。それは嬉しいのだが、兄さんが手に持っているのは高級ワイン……また酒に飲まれなきゃいいけど…
「おめでとう」
「ようやくだな!」
「どうなることかと思っていたけど、報われたわね!」
色んな人にお祝いの言葉を投げかけられ、いつになく注目されて私は落ち着かなかったが、テオは誇らしそうに笑っていた。私を絶対に手放さないぞと言わんばかりにぴったりくっついている。
「それで? 挙式はいつだね?」
さり気なく私達の応援をしてくれていた村の最年長の婆様の言葉に私ははっとする。そうだ。お披露目として式をあげるんだったな……その辺何も考えてなかった。
「まずは新居建てねぇと。出来上がってからの話だな」
テオのその言葉に現実味が帯びてきた。獣人社会では求婚した男側が家を建ててお嫁さんを迎える風習だ。その後結婚して名実ともに夫婦となる。
私はとうとうテオと結婚するんだなと面映い気持ちでいっぱいだった。表には出さないが、自分の心がはしゃいでぴょんぴょんしているのがわかった。
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